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怨念の根源

前回のあらすじ 焼け野原ひろし再登場

「見ない顔も居るな。そこに居る嬢ちゃんは、関係なさそうだが」


 シャドウに救われた正芳一行であったが、彼のその態度は、感謝の意を削ぐ物であった。

 一人が殴りに行こうにも、自分の意にそぐわない者を射殺するような男なので、下手に手を出すことは出来ない。


「礼を言わずに俺を殴りにいこうとはな…おっ、死にかけ一人と足手纏いが一人か…」


 苛立つ一行を見て、挑発するように吐いた後、瀕死の重傷を負った百合奈と、足を負傷してマイジンガーに抱えられているシュタイナーに目を付けた。

 貞雄とダレン、ヨンはシャドウが何かをしでかすと思い、即座に拳銃類の銃口を長髪の男に向ける。


「なんだ? 俺を()るつもりか?」


 銃口を向ける三人に対し、シャドウは鼻で笑ってから、自分の銃を懐にしまう。


「冗談だよ…ホントにやっちまったらお前等が俺を蜂の巣にするだろ…」


 手を広げて自分が敵でないことをアピールすれば、下ろされたシュタイナーの方へ視線を向け、指差した。


「大和撫子は、女兵士共に預ければ助かるとして…そのコートの護衛は駄目だな。連中は男は救わないレズの集まりだ、それに感染症に罹ってる。諦めるこったな」


「そ、そんな!」


 シュタイナーが助からないことを告げられたアドルフィーネは、絶望に満ちた表情を浮かべた。


「なにもそんな言い方で…」


「あぁん? お前、この致命傷で助かると思ってんのか? ここに病院はねぇんだ、黙ってろや」


 シャドウの告げ方が悪かったので正芳がそれを注意しようと声を掛けたが、非情で冷徹な男は、威圧感で満ちた眼光で黙らせる。


「ひっ! す、済みません!」


 その眼光で睨まれた正芳は震え上がり、先程の注意を撤回した。

 これに一行はシャドウの態度に腹を立てたが、何かしらの情報を持っているかもしれないので、迂闊に殺すことが出来ない。


「まぁ、そんな事だ。せめてもの情けだ、お前の手で楽にしてやりな。んじゃ、俺は山に行く。そこにこの島の主が居るかもな…」


 アドルフィーネにシュタイナーの命運を授けた後、謎の言葉を残して去っていった。

 何が何だか理解できないで居るルリも、この場から立ち去ろうとする。


「じゃ、じゃあ私も…」


「待て! 嬢ちゃんを見付ければ、この島から脱出できるって魔女さんが言ってた。嬢ちゃん、知ってるのか?」


 立ち去ろうとしたルリに対し、貞雄は呼び止めて、この島からの脱出手段を問う。


「えーと…」


 強くと割れたその容姿には似合わない武器を持つ少女は、暫し悩んだ後、山のある方向を指差す。


「そこに…何がある?」


「この島で一番強い人かな…? その人が知ってるぽい…」


「そうか、ありがとな。嬢ちゃん」


 手掛かりがあるとされる場所を聞き出した貞雄は、ルリの頭をお礼代わりとして撫でた。

 それから地図を持っている正芳に、山の一を特定するよう顎で命ずる。

 数秒後、正芳は女呪島で山と言える場所が何処かを特定した。実に簡単な事だった。この島には一つしかない。目標は、シャドウが向かうと言っていた山だ。

 山に女呪島の主が居ると去り際に言っていたので、そこに脱出する手段があるかもしれない。

 一行は、そこらに落ちている銃や弾薬で装備を調えた後、ルリに礼を言ってから山に向けて出発した。

 尚、シュタイナーの生殺与奪を与えられたアドルフィーネであったが、良心が痛むために彼を殺すことを断念し、護衛に杖を与えて山まで同行させた。

 その足取りは、護衛という職の前に付いていた"前職"の御陰だったのか、杖というハンデを抱えておりながらも常人並みであった。




 一方、正芳達が山を目指す中、一人別行動を取るルリは、自分を探しているマリ不在の大隊と合流していた。


「お、おい! あの少女は…!?」


「間違いない! 大隊長が見つけ出せって言っていた少女だ!!」


 たこつぼで歩哨をしていた若い兵士二人は、こちらに向かってくるルリを見て叫んだ。

 大隊の目的の人物を発見した。これで後は他の大隊の将兵等を待つだけである。

 この報告は直ぐさま大隊副隊長と、第1中隊中隊長であるミホに知らされた。


「見付かった! 何処に居るの?」


「直ぐそこです。歩哨二名が向かってくる少女を確認しました」


「そう、これでこんな地獄から脱出できるわね」


「はい、後は第2中隊と大隊長を待つだけです」


 伝令からの報告に、副官はホッとしてミホは大隊傘下の部隊と、大隊長であるマリが早く集結することを願う。

 彼女等がここに来てくれさえすれば、この地獄から脱出できるのだから。

 そんな願いを抱きつつ、ミホは伝令にルリを本部まで連れてくるように命じた。


「その娘、連れてきて貰えます?」


「はい! ただいま!」


 まだ二十歳にも達してない二十代の伝令は、自分より遙かに立場が上なミホに敬礼してから、直ぐにルリを本部に連れてくるために出て行った。

 数秒もすれば、伝令が毛布で身を包んだルリを連れてくる。


「連れてきました!」


「ご苦労様です。後は休んでいて良いですよ」


「了解! では、失礼させていただきます!」


 伝令が本部にルリを連れてきたのを確認すれば、ミホは笑みを浮かべて礼を告げ、彼を本部より退出させた。

 自分より位の高い人間を目の前にしたルリは、その小さな手で敬礼する。それに少し恥ずかしくなったのか、ミホはルリに敬礼を止めるように告げる。


「敬礼は良いよ。それより、貴女の原隊はどうなったか知りたいの」


「私の部隊がどうなったかですか?」


「うん、それが聞きたいの」


 ルリが属していた師団がどうなったかを知りたいミホは、彼女にどうなったのかを問うた。

 これにルリは、少し顔を暗くした後、ありのまま起こったことを話す。


 初めはただ調査部隊の護衛任務であった。

 自分の部隊は一応ながら、師団規模の戦闘部隊であっても、二級線部隊であり、ルリの存在は部隊のマスコット以下であり、殆どの情報は知らない。

 調査開始の日が経つにつれて、師団の将兵等が原因不明の病を引き起こすか、精神異常を起こして銃乱射まで起こる程。

 自分達の上官である師団長は、これ以上の調査は危険と判断して調査部隊の隊長に中止を求めたが、無視され、任務に従事するように強要される。

 その無理がたたった所為で、ルリが属する師団ごと調査部隊は壊滅した。原因は同じ味方同士が殺し合ってしまった所為である。それが分かっていたのに、調査部隊の隊長は島の調査に固執し、それを無視したからだ。

 尤もその隊長も、この島の狂気に囚われ、自ら命を絶ってしまったようだが。

 これはルリが他の残存兵から聞いたことであるが、知らされた者達が絶句する程である。


「そ、そんな事が…」


 それを知ったミホは顔を真っ青にし、早く女呪島から脱出したいと願うのであった。




 その間に目的地である山へたどり着いた一行は、ふもとで様子を確かめていた。


「マジか…ドラゴンまで居るのかよ…」


 様子を確かめていた貞雄は、双眼鏡に映るあり得ない存在に驚愕していた。

 それは、安全地帯に先に向かった集団を全滅させたドラゴンであった。遠くからでも微かに見えるので、その影を見た澄子は震え上がる。おまけにハーピーまで居た。


「畜生、あんな化け物まで居るのか! あんなのに襲われたら一溜まりもねぇぜ!!」


 クモンは遠くから見える山にいると思われる生存者を焼き殺すドラゴンを見て、何の対抗策もない事に悔しがる。


「携帯式対空ミサイルでもあれば撃ち落とせるだけどな。今はそんな便利な物が無い」


 ダレンが空の敵に対して有効な手段である携帯式対空ミサイルが無い事を残念がる。

 それさえあればドラゴンを撃ち落とせるのだが、一行の装備は水平二連式散弾銃に猟銃、AK47突撃銃しかなく、唯一強力な物と言えば、ヨンが道中で手に入れたPK軽機関銃くらいだ。


「探しに行くか?」


「そう簡単に見付かるのか? そんな便利な物」


 貞雄が携帯式対空ミサイルを探しに行くのかと言えば、ヨンがそう簡単に見付かる物ではないと告げる。

 一行が山へ登ることを躊躇っている最中に、カレンが抱き抱えていた百合奈が声を上げて苦しみだした。


「ちょっと、なんかやばそう…!」


「北条はここまでのようだな。楽にしてやるか?」


「連れて行ってください」


 呻き声を上げる百合奈に対し、ヨンが懐から拳銃を取り出して問えば、正芳がカレンに連れて行くよう頼む。それにカレンは申し訳ない気持ちになる。これに澄子は反対しようとするが、今言えば睨まれるかもしれないので止めておく。


「べ、別に良いけど…私が居なくなっても良いの?」


「えぇ。少しでも死者が抑えられるなら…」


「じゃあ、私も…」


 澄子もそれに続こうとしたが、貞雄に肩を掴まれ、止められる。


「それじゃ行くよ…ごめんねみんな…」


 申し訳なさそうに、カレンは百合奈を抱えながら戦線を離脱した。

 無事に彼女等が立ち去ったのを確認すれば、正芳は左手に杖を付けながら立っているシュタイナーの方へ視線を向ける。


「貴方も…」


「いや、私は訓練されている。心配は無用だ。この程度は造作もない」


「そうか…んじゃ行くか!」


 シュタイナーが心配が無用と言えば、貞雄の掛け声と共に脱出手段があるとされる頂上を目指して山を登り始めた。

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