コンクリート
アイアンハイド「引きづり降ろして細切れにしてやる!」
ちょっと恐い描写かも・・・
安全地帯から北東の4㎞程にある場所・・・
その言葉通り新しい仲間を加えた正芳達はそこへ向かった。
道中、狂人を含め、マリとアリスを襲った同じゾンビが出て来たが、弱点は頭と知っており、出来るだけ音を立てないよう近接武器で倒した。
銃等で撃てば楽なようだが、生憎と消音器は安全地帯では入手できて居らず、それに弾薬も無駄に出来ない。
出来る限り鈍器や刃物などの人の頭、脳に達するまでの威力を持つ武器などで排除しつつ、数十分後には目的の場所へと辿り着いた。
「こ、ここは・・・!?」
「辺り一面コンクリートだらけだ・・・」
目的の場所にたどり着いた一行を驚かせたのは、周囲に広がる一面コンクリートの世界であった。
木などの植物は一切見当たらず、コンクリートで出来ている。コンクリート以外にあるとすれば鉄筋くらいであろう。奇妙と言うべき光景なのか、一面コンクリートな光景を見た一行の口からは他の言葉すら出ない。
アイラが出入り口周辺で探査を諦めたのが納得できる程だ。更には何かから逃げようとするコンクリートで出来た人形もある。これを見れば、直ぐにでもこの場から離れたいと思うだろう。
「こんな所に手掛かりがあんのかよ・・・」
ワン・インが呟けば、大半の者達がその言葉に納得する。
「まぁ、こういう所が一番手掛かりが見付けやすい場所だからな。手分けして探してみるか」
「それもそうだな。そんじゃあ、死亡フラグっぽが、この人数だし、二手に別れて探せば大丈夫だろう」
ヨンが言えば、リーダーである貞雄は二手に別れて手掛かりを探す事にした。
東の方を当たるのは、リーダーの貞雄に澄子、エレン、エリナ、アドルフィーネ、シュタイナー、クモン、フリム、カリスト、カレン。
何故女性や子供が多いのかは、頼りになる男が二人ほど居るからだろう。
西の方は正芳、真、百合奈、ダレン、ノンナ、ワン・イン、リウ・リーシー、イ・ロンミ、ヨン、真矢部、マイジンガーだ。
東調査隊よりも軍人が多いが、何が起きてもおかしくない場所なので、油断は禁物だ。
調査隊の編成を終え、集合場所を現在地にすれば、一同は直ぐさま東西に別れて手掛かりの探索を始めた。
「朱利さん達がついてれば・・・」
「仕方ないよ。あの人達軍人だし・・・」
「それもそうだな・・・早く見付かんないかな・・・?」
正芳が朱利達が居ないことで不安がって口にするも、真の「仕方がない」の一言でより一層不安感が増す。
その不安感を和らがせる為か、百合奈が正芳に告げる。
「大丈夫よ、桑部君。頼りになる軍人が三人も居るんだから」
「そ、それもそうですよね! ははは・・・」
大和撫子のような容姿を持つ美女に勇気づけられ、正芳は顔を赤くしながら返事をした。
それから数分間奥の方へ進んでいけば、驚いたことにこんな場所に人が居た。最初に見付けたイが声に出す。
「おい、人が居るぞ」
「なんでこんな所に・・・」
正芳がそれを言えば、ワンが聴きにその怪しい人間に近付こうとする。
「生存者かもしれん。俺が聞いてこよう」
「待て、ゾンビかもしれない」
「呻き声はしてないぞ。多分大丈夫だ」
ヨンの忠告も聞かず、ワンは怪しい人間に近付いた。
「おい、こんな所で何してんだ?」
中国語で話し掛け、振り向かせることに成功するが、通じていないようだ。
だが、何かに怖がっている表情を浮かべ、ワンに近付いてくる。
その人物の服装は開けた黒い学ランと典型的な田舎のヤンキーと言える服装だが、所々がコンクリートで固まっていた。
それを確認した真がワンに知らせる。
「様子がおかしい過ぎますよ!」
「戻れ!」
「ただ固まる前のコンクリートに落っこちただけだろ? なぁ、そうだろ?」
真に続いてのヨンからの忠告も聞かず、ワンはそのヤンキーの肩に手を置いた。
「助けて・・・! 身体中がコンクリートに!!」
「うぉあ!? なんだよ!」
突然、何かから助けを求める声を上げ、ヤンキーはワンに触れる。
訳も分からず触れられたので、ワンはヤンキーを突き放し、PMマカロフ自動拳銃を懐から引き抜き、自分に触れた人物に銃口を向けた。
「助けてくれよ! 頼むよ! なんとかしてくれぇ!!」
「おい! こいつが見えないのか!? お前は銃口を向けられてんだぞ!!」
銃口を向けられているにも関わらず、ヤンキーは尚も助けを求め続け、ワンに近付いてくる。
そのヤンキーの身体は徐々にコンクリート化しており、完全に灰色化した部分が砕ける。
緊迫した状況が続く中、ヨンが持つAK74突撃銃の銃声が響き、ヤンキーが額から血を吹き出しながら倒れた。
正確に額を撃ち抜いており、完全にコンクリート化した下半身が砕け、上半身だけとなった死体が横たわる。
「おい!」
ダレスがヨンの肩を強く掴むが、状況は仲間を責めている程の物ではなかった。
「な、なんだこれ・・・!? 俺の身体が灰色に・・・!?」
ヤンキーに触れられたワンの身体の部分が灰色のコンクリート化していた。
どういう原理か分からないが、身体中がコンクリート化している人間に触れられれば、ヤンキーと同じ末路を辿る事は確かだ。
現にワンもその末路を徒取ろうとしている。先程のヨンが射殺したヤンキーと同様に、頭を撃って即死させるしかない。それを行えるのは、仲間を切り捨てるほどの冷徹さが必要である。
「なぁ、俺・・・どうなっちまうんだ・・・?」
徐々に身体中がコンクリート化していくワンは、正芳達の方を向いて問うが、誰もがその末路を僅かながら分かっていた。
「済まないな。せめてもの情けだ、楽に死んでくれ」
「こんな所で・・・せめて、故郷に帰らせて・・・」
ダレンはM4カービンを構え、照準をしっかり構え、ワンの遺言が終わる前に引き金を引いた。
乾いた音が周囲に鳴り響き、脳を撃たれて即死したワンの死体はゆっくりと、堅いコンクリートの上に崩れる。
ワンが死んだのを確認したダレンが銃口を下げれば、真矢部は彼の亡骸に近付き、その見開いた目をソッと指で閉じた。
「日村は行方不明になって、ワンの奴が死んだ。殆ど何も知らないのに・・・クソっ!」
ダレンは苛立った言葉を母国語である英語で言いながら、何もない空間に八つ当たりした。
当の日村はとっくに頭に聞こえてくる幻聴で狂人化し、マリに殺されているが、一行は知るよしもない。
そんな初めての犠牲者が出た正芳達西の調査隊に、ヤンキーと同様の末路を辿ろうとする男達が集まってくる。
「助けてくれ!」
「頼む!」
「こんな所で死にたくねぇよ!!」
周囲から所々から声が聞こえ、一行を包囲する形で集まってくる。
全員が先程のヤンキーと同様に、身体中がコンクリート化していた。
「こ、これを止めてくれ! 幾らでも出すから頼む!!」
ある者は片腕が欠けて、ある者は片足が欠けている。更には両腕や両脚が欠けている者達もいた。
そう言う者達は這いずりながら近付いてくる。その姿はゾンビその物と行って良いほどであり、大挙して押し寄せてくる。触れられればコンクリート化されるので、殺しても良いだろう。
彼等の服装は揃って反社会的な物ばかりであり、女性からの怨みを買ってもおかしくない連中ばかりであった。
「全員奴等に耳を貸すな! 触られれば、コンクリートにされるぞ!!」
ヨンが叫べば、一同は各々が持つ銃を構え、助けを求めて近付いてくる男達に向けて撃ち始める。
何名かは生きた人間を撃つことに抵抗を覚えていたが、ワンの末路を思い出し、触られれば一貫の終わりと思って背に腹は代え、引き金に指をかけて銃を撃つ。
撃たれた男達はバタバタと倒れ、血を流しながら絶命するか、暫く苦しんでから絶命する。
「や、止めろ! なんで撃つんだ!?」
何故撃たれるのか分からない男達は大きな声を上げて訴えかけるが、銃声で訴えは掻き消され、撃ち殺される。
数十名以上を撃ち殺したところで、男達は逃げようとしたが、足は言うことを聞かず、ただ仲間を増やす事を目指して正芳達の方へ強制的に向けられる。
足がない者達は、手が強制的に動かされた。
「あ、足が勝手に!?」
「止めろ! 死にたくない! 死にたくない!!」
「わぁぁぁぁ!! ママァァァ!! 死にたくないよぉ!」
どう足掻いても助からない男達は、情けない声を上げながら必死に正芳達から離れようとするも、手や足はそちらの方向へ向けられる。
ここに連れてこられる前は、暴行、恐喝、強姦、拉致監禁を繰り返してきた極悪な男達であるが、今は同情するべき場所はあるも、それ相応の末路であろう。
尤も、全身がコンクリートに染まり、生きたまま窒息死するよりはマシな末路だと思うが。
数十分後、銃声が鳴り止み、向かってきた男達は全てコンクリートの上に横たわり、動いているのが正芳達のみとなった。
周囲には、銃創だらけの死体が転がっているが、中には酷く損壊した死体も転がっていた。
その数は一つや二つではない、コンクリートの灰色を完全に赤くするほどの物である。
これを見た軍人でもない者達は、コンクリートの下に向けて嘔吐した。徴兵されて兵役を終えただけのイでも、流石に酷く損壊した死体は見たことはないのか、彼も嘔吐し始める。この島に来てから数人以上を殺した経験がある正芳は、今まで殺した人間のことを思い出し、胃から来る吐き気に我慢できず嘔吐する。
「まぁ、仕方がない。初めて人を撃ったんだ。こうなるのは当たり前だ」
マイジンガーが言えば、嘔吐していないダレン、ヨン、真矢部は納得する。
数分後、彼等の気分が落ち着けば、手掛かりの調査を再開した。
正芳を含める吐いていた者達は顔色が悪くてとても調査を続けるには良くないが、また先程のコンクリート化している男達が来るかも知れないので、早く見付けてこの場から離れようと重い身体に鞭を打って必死に探す。
途中、徐々にコンクリートで固まっていく恐怖で顔付きが強張った死体を見付けた。
何か手掛かりになるような物を持っていないか、立ったまま固まって死んでいる死体を探ってみたが、何もなかった。
これに苛ついてか、イは強引に倒してコンクリートで固まった死体をバラバラにする。
「おい!」
ダレスが肩を掴んで注意するが、イは払い除ける。
「あぁ、分かってるよ! こんな事やっても何にもならないって! ちょっと苛ついて倒しちまったのは悪いと思ってるけどよ・・・悪かったよ」
胸のうちを空けた後、彼等に向けて謝った。
正芳もやろうかと思っていたが、イの行動を見て仲間達の反感を買うと思い、止めることにする。
それから調査を続行したが、成果無しだった。
「なにも無いな。集合場所に行くか」
後は何も無さそうなので、集合場所へ戻ることにする。
戻る途中、先程の男達の死体が目に入ったが、目を背けながら戻った。
集合場所へ到着すれば、東調査隊が既に戻っていた。正芳達とは違い、幾つかの軽傷はあるが、誰一人欠けていない様子だ。リーダーである貞雄が声を掛ける。
「そっちは何かあったか?」
「いや、無い。それどころか仲間を一人失った」
「そうか・・・ワンが・・・」
貞雄からの問いに対し、真矢部が答えれば、彼は顔を暗くした。仲間が一人居ないことに気付き、察しが付いたようだ。
それぞれの成果を話し合い、幾つか分かったことを伝えた。
コンクリート化している男達に関しては、貞雄達も方も遭遇したらしく、触られてコンクリート化する弱点は、ヤクザ物の男で分かったらしい。
東側も西側と同じく何も成果が無かったらしく、双方とも何の成果も得られなかったようだ。
残る手段としては、妙な気配が漂ってくる洞窟くらいだろう。
「あそこに入るのは・・・嫌だな・・・」
「仕方ねぇだろ、もうあっちしか残ってねぇし」
その洞窟にはいることに抵抗を覚える正芳が愚痴を漏らせば、貞雄はそこしか手段は無いと踏み、堂々と入る。
何名か抵抗や不安感を抱いている者達が居たが、底へ入らねば何も手掛かりを掴めないので、貞雄の後へ続く。
「破れかぶれだ!」
正芳も皆の後へ続き、その不気味な雰囲気が漂う洞窟へと足を踏み入れた。
助けを呼びながら襲ってくる人って、恐くない?




