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うそつき

私(女)が元ニューハーフの方とおつきあいしていた時の話です

「同情も愛情も、結局は”情”なのよ。」

だからいいじゃない、とハナは言う。ハナヤショウヘイ。それが彼の本名。

しかし、ハナヤでも、ショウヘイでもなく、ハナとかハナさんと呼んでと彼は言う。

いつでもそう。丸め込むのがうまいのだ。

青いシャドウと長いつけ睫毛に縁どられたハナの切れ長の目はいつも色っぽく濡れている。

最初会ったとき泣いているのかと思ったのだがそうではないらしい。

「下手な口説き方ね」

それを告げるとハナはふふっと笑って手元のグラスを飲み干した。

「オトコノヒトが好きなんでしょ」

ぱっくりと胸元が開いた黒いワンピースで現れたハナに対して私は色あせたジーンズに黒縁メガネだった。おずおずと盗み見るようにハナの表情を窺ったが、困惑しているのかどうとでもないのか私にはわからなかった。もっとも私はヒトの表情がよくわからない。今だって他人がそうするように目を合わせて、表情を読むふりをしただけだ。

「うーん。そういうわけでもないわよ。あのね、恋って男とか女とかじゃないの。」

「ふーん」

「マキはあたしが好きなんでしょ?」

カウンターの隣通しに座っていたハナとの距離が10cmくらい急に縮まって私は思わず、倍の距離、後ずさった。もっともその場所には壁があったので左肩をしたたかに打ってしまったのだが。

「…う、うん!」

私は、同性が苦手だった。(彼氏はできるのだけれど。)

どうも浮世離れしているとか、変人とか言われてあまり友達ができない口なのだった。

「じゃあ、きまり!おつきあいしましょ。あ、ううん、オトモダチとかお姉さんとかそういうのでもいいのよ」

「あ、うん-…。」

「大丈夫よ。嫌いじゃないなら傍にいて。あたし、さみしいのよ。ね?」

ハナはおどけた顔をして笑った。その時は気づかなかったけれどハナは目いっぱい気張っていたようで私が頷いたら直後ほっとしたように、よかったとつぶやいた。お互いに傷ついていて寂しくて人が恋しかったんだと思う。それが二人の共通点だった。

思いだし語り

気持ちの整理に書きました

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