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プチトリ!!(仮題)  作者: 谷口 ユウキ
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リメイクしました第一章 第二十七話「ほうのれんとな」

前回のあらすじ


威嚇と臨戦態勢の話は剣道の授業に生かせる……かも?

「うっしゃー、完成!」

 あの後宿に戻ったオレは[ゴラムーニョ]のドロップアイテム、[伸縮する縦糸]を使って新しい[勝負パンツ・男]を作成。レアなモンスターの為かドロップアイテムがたくさん取れたため、実に5枚のパンツを作成する事に成功していた。


 これで晴れて下着問題も解決。


 せっかくだから体の汚れを落として着替えるか。と、いう事で出来立てホヤホヤのパンツを持ったオレは風呂へと向かう。

 

そうしてやって来たのがこの宿のウリ。無駄にガードの固い温泉。

 食堂の近くにある、男湯と女湯が向かい合わせになった風呂場への入り口。その男湯と書かれた青いのれんをくぐったオレは、立てかけてあった温泉案内の看板を見て絶句した。

「どっからどう見ても現代の温泉パークじゃねえか」

 なんと定番のマッサージやサウナ、ジャグジーはもちろん岩盤浴や寝湯、波のあるお風呂なんてものまである。もちろん露天風呂も完備。

 脱衣所なんてまんま銭湯。体重計やドライヤー、そして扇風機を模したマジックアイテムが、キッチリと置かれている。この温泉にはセクハさんがなんやかんやと関わったみたいだから、おそらくその時に手を入れたのだろう。

「なんてハイスペックな温泉旅館なんだ」

 女性人気が高くなるわけである。

 実際に入って確認したら、シャンプー、リンスもシャワースペースにしっかり備え付けられていた。



「んー、やっぱ風呂は良いな。サッパリした」

 夕方。のれんをくぐって脱衣所から出たオレは、勇者ことセクハさんが広めたとされるフルーツ牛乳を購入する。

 この世界に来てもフルーツ牛乳が飲めるっていうのは地味に嬉しいサプライズだ。


 ありがとうセクハさん。でもこの村の広場にあった[変態鬼畜王セクハラ―のアダマンタイトゴーレム レベル97]はマジで無いと思うわ。


 ゴーレムはオリハルコン一種類じゃない。なんて新事実はいらなかった。

 そんな感謝と呆れと諦めの思いで空のビンを近くの瓶ケースに入れていると、オレの前を1人の挙動不審な男が通り過ぎて行くのが見える。

 知っている顔だ。

「何してんのリデル?」

「ハウワッ……ち、ちっと急用でな」

「お、おお。そっか、呼び止めてゴメン」

「うおおおおお、謝らないでくれー!」

 そして再び走り出したリデルは去って行った。

「逃げたな」

 しかし何故逃げたのかが分からない。

 いや、でも関わったらロクな目に合わない気がする。ここは気持ちを切り替えるために2本目を飲もう。

「オッチャーン、今度はコーヒー牛乳ください!」

 こうしてオレはリデルの事を忘れて開けたばかりのコーヒー牛乳を美味しくいただくのだった。


「あれ、テツ君。意外と早風呂だね」

 コーヒー牛乳を飲み終え、続いてイチゴ牛乳にチャレンジしようか迷っていたオレは、不意打ちのように掛けられた声に振り向いた。

「あ、フェレス、もしかしてお前も風呂に入ってたのか?」

 やって来た方向は男湯と女湯の入り口が向い合せになった風呂場の方だ。

「ううん、ウチはもっと前に入ったんだ。今のはただ脱衣所に忘れ物を取りにいって来ただけだよ」

 そう言いながら手に持ったくしを振るフェレス。

 どうやらオレとリデルが魔道具屋に言ってる間に汗を流したらしい。


「ところでテツ君、『お前も』って言ってたけど一体どういう事?」

「ん? ああ、さっきの話か。たまたまトラウマおじさんが男湯にいたから『そうなのかな?』って。もしかしたらあの人も、もうすぐ出て来るんじゃないか?」

「そっかー。ねえテツ君、トラウンさん出てきたらせっかくだから皆でご飯行こうよ」

 それは……良いかもしれない。この2人なら美味しいお店を知ってそうだ。

「そうだな。行くか」

「よっし、そうこなくっちゃね。あ、そういえば脱衣所にウチ等のクランのリーダーがいてさ。ちょっと話したんだけど『魔道具屋に初めて見る装備の魔法職がいた』って言ってたんだけど、もしかして身に覚えがあったりする?」

「あー、あの魔道具屋にいたダークエルフのお姉さんか」

 あの時は課金アイテムの装備だったし。十中八九オレの事だろうな。

「アハハ、その人だね。やっぱりテツ君の事だったか。まあテツ君は事情が事情だし気にしなくていいじゃないかな?」

「ん、まあそうなんだけどな」

「それより何買ったかの方がウチとしては気になるね。ちょっと教えてよ」

 買った物か。

「正直な話、店に売られてる商品って持ってるアイテムばかりだったからオレは何にも買わなかったな。まあリデルが買った[空のマジックストーン]に[障壁]の魔法は入れたけど」

「ず、ずいぶんと世間離れした話だね」

「えーと、どっちが?」

「両方、でも広まってヤバイのは魔法の方かな。テツ君の事だからリデルからちゃんとお金取った訳じゃないんでしょ?」

「『事だから』って何!? いや、合ってるけど」

「やっぱり」

「んー、タダはやっぱマズかったのか?」

「あのさあ、知らないみたいだから言うけどマジックストーンに魔法を入れてもらうのって普通だったらものすごい大金が掛かるんだよ」

「へー、そういうモンなのか」

「うん、高レベルの魔法職への直接依頼だからね。魔法を込める使い手によっては値段は7、8倍したよ」

「7、8倍!?」

 今さらだけどオレそれで食っていける気がする。

「思わぬところから転がり出た金策だな」

「またのんきな事言って。とにかくあのバカの口止めだけはしっかりしときなよ」

確かにあいつは人に喋りそうだ。

「……そだな。お前もしゃべんなよ」

「それじゃあ帰ったらケーキだね」

 それが対価ですか。

「ま、そういう事ならフェレスの方はひとまず安……心?」

の、はずだよな?

「ちょっとテツ君、まさか[情報屋]のウチが情報漏らすとでも?」

「いや、そうじゃない。お前の顔見てたら何かものすごい重要な事を見落としてる気がして……」

「見落とし?」

「そう、見落とし」


 違和感。


 何故かは分からない。だが自分の中の何かが引っかかる。

 だけどソレが何なのか分からない。今日一日を振り返っても思い当たる事はゼロ。特に引っかかるような事が何一つ無いのだ。

「じゃあ、昨日か?」


 可能性はある。

 確か昨日は朝にフェレスと話して、馬車便乗り場でパーティメンバーと顔合わせ。昼に[サンドワイバーン]と戦って、トラウマおじさんが心身共に負傷。それで宿に着いたらリデルに呼び出されて……。


「それだっ、昨日のリデル!」

「え、昨日?」

「ほら、思い出せフェレス。お前も昨日のリデルの覗き発言を盗み聞きしてただろ。あの時あのおバカは何て言った?」

 そこまで言ってフェレスも気が付いたらしい。若干顔が引きつっている。

「もしかして『お前のその強力な[障壁]があれば、数ある障害を防ぎ、飛び越え、躱し切る事ができるはずだ!!』の事を言ってるの?」

「間違いなくソレだ」

 まるでセリフを抜き出しコピーして貼り付けたかのようなすばらしい記憶力。さすが情報屋だ。


 だが今は感心している場合ではない。ソレだけでも人としては十分にヤバイが、昨日のリデルの問題発言はもう一つあるのだ。

「しかもアイツは昨日『フェレスが入浴してから覗きに行く』発言も一緒にしている。そしてフェレスがオレと会うちょっと前、オレは宿の外へと走っていくリデルの姿を見た」

「ソレってまさか!?」

「そうだ、どう考えてもヤバイ。んでもって非常にマズイ」

 そう、忘れ物を取りに一時的に脱衣所に入ったフェレス。それをリデルが見たと仮定すると……てか多分見たんだろうな。さっきの慌てたようなリデルの行動は、フェレスが風呂に入りに行ったと勘違いした覗き狙いのスタートダッシュだったと考えれば説明がつく。

 そしてソコに昨日の『[障壁]があれば』発言と、現在あの究極おバカの手に[障壁ストーン]がある事を考えると……。

「「女湯が危ない!」」

 欲望の申し子であるリデルがついに動いた。それがオレ達の導き出した結論だった。


 そしてその予測を肯定するかのように女の悲鳴が女湯の方から聞こえて来る。

「しまった、気付くのが遅かったか!」

「ちょっと、マジでヤバイって。今女湯にはウチのクランのリーダーが、アリスさんがいるんだよ!? Sランクの冒険者が暴れたら……」

「てかこの音、もう暴れてないか?」

 足に響くような爆音と轟音。

きっとあの赤いのれんの向こうでキャッハウフフな地獄絵図が展開されているのだろう。命を賭けた『アハハ、捕まえてごらーん』が繰り広げられている事は簡単に予想できた。


 本来ならパーティーメンバーであるオレが引き取りに向かうべきなんだろうが、場所が場所なだけに動けない。

 そして途方に暮れたオレの前に、奇声を上げながらソレは現れた。

「うおおおお! 今死ぬ、すぐ死ぬ、速死ぬぅ!」

 裏返りかけた声を上げ、赤いのれんの向こうから飛び出して来る大きな影。

 ソイツはギャグ漫画よろしく石鹸や桶やシャンプーなんかを投げつけられる……どころか後ろから何発も強力なスキルを撃たれ、ソレ等全てをギリギリのギリギリで躱していた。


 そう、リデルだ。


「神様、仏様、ご先祖様、奥様ー!」

 色んなモノに頼みつつ体を伏せたリデルの上を大量のスキルが飛んでいき、向かいの男湯と書かれたのれんを撃ち破る

「最後一気に現実的になったな」

 困った時の神頼み、とは言うが他にも色々言っていた。むしろ奥様って誰だよと問いたい。

 だがそんな風に考えられたのはほんの一瞬だった。


 スキルが飛んで行った男湯の方から、聞き覚えのある叫び声が聞こえてきたのだ。

「ぐああああああ」

「「「え?」」」

 オレとフェレス、そしてリデルまでもがその苦悶の叫びに動きを止める。

 その場がしんと静まり返る中。オレは、恐る恐る思った事を口にした。

「この声、まさかトラウマおじさん?」


 とんでもない藪蛇だった。



「て、テツ君、どうしよう。トラウンさん死んでないよね?」

 もの凄いモノを聞いてしまったという顔でフェレスがオレの肩を揺さぶってくる。


 まあ心配になるのも無理はない。


 多分のれんからのれんに飛んで行ったスキルが、ちょうど脱衣所を出ようとしたトラウマおじさんに当たったのだろう。

 絶対安全と思える宿の中での、しかものれん越しの不意打ち。これは後々引きずる事間違いなしの大事件だ。

「……てか生きてるかな」

「トラウンさん悪運強いから大丈夫だと信じたいけど……。でも明日からは気軽に銭湯へ行けなくなりそう。きっとのれんを見るたびに『不意打ちが来るんじゃないか』って身構えちゃうよ」

 嘆くようなフェレスの声がトラウマおじさんの未来を予測する。

「ありそうな話で笑えねえ」

「まあ今回は事が事だから」

「しかもまだその『事』が全部終わったって訳じゃないんだよなあ」

 伏せのポーズで停止しているリデルは、まだほとんどノーダメージなのだ。

「ハッ、なんでフェレスがこんな所に?」

「「ハア……」」

 ほんとコレどうしようか?

 今になってこちらに気付いたリデルに、オレとフェレスは思わずタメ息をつくのだった


ども、谷口ユウキです(-_-)/


えー、皆さん予想は当たっていたでしょうか?

読んで分かる通り、第一章のラストのギャグ兼バトルパートは「帰ってきた覗きネタ」です。


投稿もストーリーの進行も結構スローペースですがコレからも楽しんでいただけたら幸いです。


では、そういうことでまた次回お会いしましょう<(_ _)>


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