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プチトリ!!(仮題)  作者: 谷口 ユウキ
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リメイクしました第一章 第二十五話「ほう買い物とな」

前回のあらすじ


そして家を焼いた主人公達は家主を……家主を!

「依頼達成を祝して、乾杯!」

「「「「カンパーイ!!」」」」

[箱舟の岩村]の大通り。その一角に建つ食堂の中に明るい声が響く。

 無事[ゴラムーニョ]を倒したオレ達はダンジョン脱出用のアイテムを使って[アルカの森]から出ると、そのまま馬車を使って一番近い食堂に直行。

せっかくなので御者のジオットさんも入れて、なだれ込むように遅めのお昼兼打ち上げを始めていた。

「んまーい!」

 オレはテーブルの上に並べられた料理の数々に舌鼓を打つ。串モノや焼きモノなど、全体的に居酒屋メニューな感じはするが、味の方はどれも文句無し。

オレお手にある焼き鳥はタレや焼き加減はもちろん、素材自体の存在感も強く、一噛みで旨みが口一杯に広がっていった。

「さすがは[ファイヤーバード]の串焼き」

 どうやって焼いたのかという疑問は残るが、食材にモンスターを使っているだけあって絶品である。

 隣に座るリデルとジオットさんも我先に料理に手を伸ばしていた。

「てか人の皿に手ぇ出すなっての」

 オレはリデルがどさくさに紛れて伸ばしてきた手を、慌てて障壁でガードする。

 向かいに座るトラウマおじさんはそんなオレ達を見て嬉しそうに笑っていた。

「気に入ってくれたみたいで嬉しいよ。ここは[アルカの森]帰りの冒険者たちが必ずと言って良いほど寄る名店でね。元冒険者の[料理人]、それもレベル60以上の職人しかコックとして雇われない場所なんだ」

「へー、皆元冒険者なんですか」

「ああ。現に今厨房にいる何人かは知り合いでね。それもあって贔屓にさせてもらっているんだよ」

 おお、顔なじみってヤツか。良いな、そういうの。

「ちなみにこのお店のメニューって、コックさん達が元冒険者ってこともあって、酒の種類や量がすごいんだよ。冒険者の時に知った美味しいお酒を、色々と仕入れてるんだって」

 なるほど、だから酒に合いそうな居酒屋メニューが多いのか。

フェレスの補足情報に頷いたオレは果実ジュースに手を伸ばす。


 ……ホラ、未成年だからね。


「それにしてもテッペイ君の運の良さには驚いたよ。[ゴラムーニョ]の討伐依頼は、当たりの部屋を引けない。という理由から失敗する事が多いというのにね」

 しばらく食べて一息ついたところでトラウマおじさんが話し始める。どうやら自分の出した依頼が初日の、しかも午前中で終わってしまうとは思っていなかったらしい。

「ホント、ウチもテツ君にはビックリですよー」

 逆にフェレスはどこか、てか絶対に含みのある笑顔を浮かべていた。

全く居心地が悪い。

「まあソレはソレとして、さすがにお腹がいっぱいになって来たな」

「あー、まあ確かにココは1品の量が多めだもんね」

 いい加減食べ疲れたのか、リデル以外の全員がオレの言葉に同意する。するとそのタイミングを待っていたかのように、厨房の方からデザートであるフルーツの盛り合わせと追加の串が運ばれてきた。

「わー、美味しそー!」

「わー、砂肝ー!」

 目の前にデザートを置かれたフェレスの猫耳が嬉しそうに跳ねる。

 目の前に焼き鳥(砂肝)を置かれたリデルの気分も跳ね上がる。

 そして焼き鳥(砂肝)を口一杯に頬張るリデル以外のメンバーは、各自自分の席に在ったフォークを手に取って、デザートへと手を伸ばしていった。


「ふう、美味かった」

 すると一息ついた所で、トラウマおじさんがオレ達に質問を投げかけてくる。

「それで皆はこの後はどうするつもりだい?」

「ふぉれはどうふうひみふぇふかだんふぁ? (それはどういう意味ですか旦那?)」

「リデル、お前食うのに集中しすぎ」

 それじゃあ何言ってるのか分からないって。

「簡単な話だよリデル君。依頼の期限は昨日を含めた3日間だったけど、もう達成できてしまっただろ? 一応今日の分の宿は取ってあるけれど、まだお昼すぎだからね。今から[迷宮都市ラース]に帰ろうと思えば夜には着く事が出来る」

「アレで伝わったのか」

 さすがですトラウマおじさん。


 とりあえず本題は今日帰るのか、それとも明日帰るのか。どっちにしたい? という事のようだった。

「後一泊か。どうしよう?」

 悩むオレをよそに他の2人が答えていく。

「うーん、ウチはもう1泊。できるなら泊まりたいですね」

「ファッ、俺ふぉ泊まふ一択だふぇ (ハッ、俺も泊まり一択だぜ)」

「リデル、とりあえず口に食い物入れて喋んな」

 いくらか口に入っていた食べ物を飲み込んでも、イマイチ何言ってるのか分からないのは変わらないんだからさ。

 するとリデルは大きく喉を鳴らしてからこう言った。

「細かい事言うなよ親友」

「細かいのかコレ?」

 だが質問を向けた相手から帰ってきたのは、ついにデザートを口に投入した事で発生したモゴモゴと言う音だけだった。


「それでテッペイ君はどうだい?」

「あ、そうですね。せっかくなら観光していきたいんで、泊まれるんなら泊まっていきたいです」

 フェレスとリデルの発している無言のプレッシャーもすごいしね。

「分かった。じゃあそういう事で頼めますか、ジオットさん?」

「オウ、任しときな。元々こっちも2泊の予定だったんだから何の問題も無いしな。オイラも休日バカンスは大歓迎だ」

 あ、そういえば宿代も『支える会』持ちなんだっけ。チャッカリ相席していた会の代表(?)であるホビットの御者さんは、気軽に了承したかと思うといきなり大量の酒を樽で注文。ここからはアフターだとでも宣言するかのように一気飲みをし始める。

「うおっ、え、こんな飲むの!?」

 一緒になって結構な量の串もの食べてたよな。どんな腹してんだ?

「ガハハハハ、安心しろ兄ちゃん。今からホビットの酒癖の悪さをみせてやっからよぉ!」

「それ飲んだらダメじゃないですかっ」

 それにしても何て言う酒豪っぷり。注文した酒の量が体の体積を明らかに超えているにも関わらず、ジオットさんは嬉しそうだ。

「そういえばこの人って[サンドワイバーン]戦の時も酒飲んでたな」


 このホビット、どうやら仕事がなければただの呑兵衛らしい。


 さてデザートもあらかた片付いた頃、隣にいたリデルがふとオレにある提案を持ち掛けてきた。

「親友、どうせこの後暇なんだろ。一緒に魔道具屋に行かねえか?」

「魔道具屋?」

 童心をくすぐる言葉だ。

 ものすごく行ってみたい……けど。

「何か裏がありそうでイヤだな」

 前回のコイツの誘いは処刑人を覚醒させただけだったという事もあって、リデルと一緒に行動というのにあまり良いイメージが無い。

「ちょ、俺は親友にとってそんな裏のあるイメージなのか!? 俺達の友情はどこにいった!?」

「知り合って2日目の友情とか、たかが知れてるだろ」

「親友ー、昔はそんな子じゃなかったのにー!」

「今知り合って2日目って言ったよな!? 大体お前、魔道具屋に行ってどうするんだよ」

「ハッ、なーに、ちょっと買いてえモンがあってな」

「そうか。んじゃ行ってらっしゃい」

「ってオーイ、連れねえなぁ。んな事言わずに一緒に行こうぜー。ついでにさっきのダンジョンでの[モノクロバット]に対するヘッポコな初撃。アレに関して前衛職としてちょっとアドバイスをしてやるからよー」

「ヘッポ……アドバイス?」

「そうだ。親友、テメエのあの戦い方。今までも最初の一撃は上手くいかない事が多かっただろ?」

「あー、まあ、確かに」

 ヘッポコ呼ばわりされたのはアレだが、コイツの言っている事は間違いでは無い。

 [モノクロバット]の時だけじゃない。思い返せば最初の最初、[クールトー]戦の時も、オレの初撃は見切られかけた。どちらも強さ的には最ザコの部類に入る相手なのに、だ。


「やっぱアタリか。ま、そこん所は、この親友たる俺がそこの所をちゃーんと教えてやっから安心しろや」

「……ホントかよ」

 オレがリデルの前で物理攻撃を見せたのは、[モノクロバット]と戦った時の一回だけだ。

コイツは、そのたった一回でどこが悪いのかを見抜いたという。はたして信じていいのかどうか。

「ま、どうせ予定は無いわけだし。別に良いか」

 攻撃が見切られる理由があるのなら、今のうちに知っておきたい。それに魔道具屋そのものにも興味はある。何かしらプラスになる経験はできるだろう。

「ハッ、良いね。そうこなくっちゃな」

 こうしてオレの食後の予定が決定した。



「で、魔道具屋にやって来たわけだが。えらいゴチャゴチャしてるな」

「ここはいつ来てもこんなだぜ、親友」

「……それで良く商売が成り立つな」

 生まれて初めてやって来た魔道具屋の感想は『なんて歩きづらいお店』という一言に尽きるものだった。


 店員さんの名誉のためにも言うが、別に店内で商品が散乱しているとかではない。ただ商品の入った箱やら棚やらが適当に置いてあり、しかもその数と種類が多いのだ。

 所々杖やらデカイ石やら謎のアイテムやらが棚や箱からはみ出していて歩きにくそうな通路。何故かミイラの腕とかが飛び出ているデカイ陳列棚。物理的にも精神的にも全く通りやすさを考慮していない事が見てとれてしまう。

「冷やかすのもためらうわ」

 今ビン詰にされた鶏と目が合ったぞ

 しかし戸惑うオレとは対照的にリデルは何事も無いように進んでいた。

「お前さすがだな」

「こういうのは慣れだぜ、慣れ」

「って言ってもなあ」

 確かにゲームの店みたいで魔道具屋って感じはする。だけどリアルでこのイメージ通りはちょっと困る。

 まあ売られてる商品への興味は尽きないので、なんだかんだ言っても入店するんだけどさ。


「お、先客」

 店の奥に進んで目を引いたのは店の商品。ではなくソレを品定めするダークエルフの女性だった。

 髪を後ろで束ねてポニーテールにしている事もあって、見た目は健康的なお姉さんって感じに見える。

どうやらなにかしらの前衛職らしい。店内でも鎧姿をしており、背中には重そうな大剣を背負っている。

「アレでどうやってここまで来たんだ?」

 背中に背負っているのは大剣だ。普通はあそこまで行く前に最初の棚で詰まる。

オレだったら最初の一歩でドラゴンか何かの尻尾のミイラに引っかかってしまうだろう。


 そういえば良く考えたらこの世界に来て会った可愛い、とか美人とか思った女の人達には全員、言いようのないクセの強さがあったような気がする。

 ……もしかしたら美人相手には『名前は知らないけど、顔は見た事ある』レベルの認識がちょうど良いのだろうか?


 だが自分が知り合う、知り合わないに関わらず、目に入った誰かの個人情報っていうのは意外と身近なヤツが知っているモノらしい。リデルが珍しそうな顔で話し出す。

「お、あれはフェレスの所属してるクラン、『白夜』のクランリーダじゃねえか」

「クランリーダ? 『白夜』?」

この世界じゃ初めて聞く単語だな。

まあ前の世界のゲームの知識や、リデルの言っていた所属という言葉から考えて、大所帯のチームみたいなものだろう。

「おお、確かあの姉ちゃんの名前はアリス。二つ名持ちだったはずだぜ」

「そうか、『名前は知らないけど顔は見た事ある』作戦を開始3秒でオシャカにしてくれてありがとう。んで二つ名ってどんな?」

「忘れた」

「……つまりは有名人って事ね」

 まあ今の話の内容だとリデルもオレを紹介できるほど仲が良いわけじゃないみたいだし、知り合って面倒な事になる可能性もあのダークエルフと同じクランのフェレスがいない今はほとんどゼロ。

 なら今のオレがする事は一つ。何気なく会話に出てきた知らない知識を吸収する事だろう。

 オレはリデルとの世間話の中で、あのダークエルフのお姉さんがリーダーをしている『白夜』について聞いていく。


 それで分かった事を頭の中でまとめてみると、クランというものが何なのかが、何となく見えてきていた。

やはり特定の冒険者集団の事らしい。

 冒険者ギルドから依頼を受けるパーティーには、1パーティーに付きメンバーは6人までという上限がある。だがクランはそういった人数制限が無く、状況によっては遠征と言う名目で大規模な行動が取れる。

 話によると、体験入部とか幽霊部員的なポジションの人もいるらしいので、活動内容が殺伐寄りな部活みたいなものだと思えば良いだろう。

 リデル曰く『白夜』は数々の戦果を挙げているらしい。

「つまりは部長さんって事だな」

「親友、なんかナナメな解釈してねえ?」

「そんな事はない」

 でも、そういう小規模な集まりってリーダーとか古株とかに権力が集まるからなあ。

元の世界で言うブラック会社とかはそのタイプが多いらしいし、下手に近づくと火傷しそうな気がする。

 まあ逆に大規模だとシステムがしっかりしてる分、融通がきかなかったりするらしいし、どちらのタイプでもしっかりやってる所はやってるから何とも言えないんだけどさ。

「ちなみにそのクランに所属してる人数って何人くらい?」

「あー、大体60ってトコだな」

「へー、てっきり10人前後の小会社な感じかと思ってたのに、意外と多いな」

「ハッ、一応俺の所属しているクラン。『熱血野獣騎士団』とタメを張る[迷宮都市ラース]のトップクランの1つだからな。面子も結構な手練れ揃いだったはずだぜ」

「へー……」


 『熱血野獣騎士団』って何。


「リデル、今言っていたお前のいるクランの名前」

「ん? 『熱血野獣騎士団』?」

「そう。ソレだけど、まるで騎士団を語りながら騎士道精神を無視するのが前提の集団。みたいに聞こえる名前だな」

「ハッ、やるな親友。我らがクランの内情を名前を見ただけで看破しやがるとは」

「……肯定するのかよ」

 

 もしもクランに入る様な事があったら所属先は慎重に選ぼう。


 心の底からそう思えた瞬間だった。


ども、谷口ユウキです(-_-)/


最近春が嫌いになりました。

黄砂と花粉のダブルパンチが目と鼻に効きます。


鼻はもちろんだけど問題は目。あの内側から止めどなく溢れてくるかゆみがホント嫌ですね。


……いっそ花粉症のキャラ出してやろうかな。


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