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プチトリ!!(仮題)  作者: 谷口 ユウキ
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リメイクしました第一章 第二十一話「ほう契約用とな」

前回のあらすじ


バナナ様のおなーりー

「いや、ホントすいませんでした」

 独断でバナナ様を美味しくいただいたオレは、毎年何人もの死人を出しているダンジョンの中で何故か正座のまま謝っていた。

 時と場所がヤバイ様な気がするなー。と、謝りながら考えていると、フェレスの呆れたような声が耳に入って来る。

「テツ君、ウチは呼び出せる召喚獣のいない君に[モンキーバナナ]を使って何か手ごろな召喚獣と[魔力契約]を結ぶべきだって言おうとしてたんだよ?」

「いやー、申し訳ない」

「……なんか謝罪が軽いね」

「思った以上に美味かったからな。まあ、コレでも使い魔0なのは結構気にしてんだけどね」

 そう、実はオレは[召喚士]のジョブでレベル99というチートな実力を持ちながらも、召喚できる使い魔が一匹もいない。という残念な状態に陥っている。

 コレは多分、オレに上書き保存された[シュウ]の能力はあくまで基本性能だけ。と、いう事が原因なのだろう。

 召喚云々に関する契約はあくまで[シュウ]のモノ、今のオレな立場は契約する技術は合っても経験が無いペーパーだ。

 だからこそ今までは使えなかった[召喚術]を使うために、ここで[魔力契約]をするべきだったのだが。

「人が見てない間にコッソリ食べてるんだもん。ホント信じらんないよ」

「まあ一口やるから落ち着」

「じゃあ一口だけ」

「……お前、言い切る前に返事って」

 不審に思ったオレは、最初から狙っていたのではないだろうかと、フェレスに疑いの目を向ける。

「と、とにかく今の君には使える召喚獣がいないんだから。さっきみたいなチャンスはちゃんと生かさないとダメってこと」

「なるほどな。お前がさりげなく話を逸らしたい事は、よく分かったよ」

「理解したのそっち!?」

「気にすんな。世の中そんなもんだ」


 さて、切り替えようか。


 今『そんな世の中があるとは思えないんだけど』と微妙な顔で言っている猫耳娘。もといフェレスとの話で重要だったポイントは、やはり『特定のアイテムが召喚獣との契約に使われる』という点だろう。

「えーと[アイテム図鑑]で[モンキーバナナ]っと」

 ためしに[学者]のスキルで調べて見ると、案の定[モンキーバナナ]の説明に『契約用アイテム』というカテゴリー表示が付いている。どうやらコレが召喚獣との[魔力契約]に使えるアイテムの総称らしい。

「フェレス、契約用のアイテムって結構な種類があるよな」

「そうだよ。でもそれがどうかしたの?」

「いや、もしかしたらだけど、他にも何か持ってるかもしれないからさ」

 修次こと[シュウ]は大量のアイテムをもっていたからアイテムボックスを探せば1つくらいは『契約用アイテム』があってもおかしくは無い。

「持ってるって、『契約用アイテム』を!?」

「ん、そんなに驚く事か?」

「当たり前だよ! だってそういうアイテムってお店じゃものすごい高値で取引されてるんだよ」

「……なんで?」

「そりゃあ……自分で戦いたくない人がお金持ちに多いから」

「思った以上に嫌な話が出たな」

 気持ちは分からなくもないがその理由は酷すぎる。

「まあ『契約用アイテム』はどれもレア度が高いってのもあるけどね」

「そっか、珍しいのは[モンキーバナナ]だけじゃないって事か」

 確かにその2つの条件がそろってしまえばお高くなりそうではあるな。

「けど元々持ってるなら何で召喚獣との[魔力契約]に使わないのよ」

「そもそも[魔力契約]がどういうモノか知らなかったんだからしゃーないだろ」

「呆れた。テツ君はもうちょっと常識を学ぶべきだと思うよ」

「全くだな」

「……君ねえ」

 こうしてフェレスのお小言をBGMにアイテムボックスと睨めっこする作業が開始されるのだった。

 とりあえずそのままフェレスの説教を馬の耳に念仏状態で相槌を打ってやりすごし、ひたすら『契約用アイテム』の文字を探し続ける。そしてオレはあるアイテムの所でアイテムボックスの閲覧をストップした。

 視界のタブに映っているのは一見するとバイク用のゴーグルにしか見えないアイテム。[グレムリンのゴーグル]だ。説明には『[グレムリン]との契約に使う事が出来る』としか書かれていないため、[グレムリン]がどんな生き物かはよく分からない。が、アイテムのランクがSになっている事から考えれば相当良い物だろう。[モンキーバナナ]はBランクだったからその差は歴然と言っても良い。


 考えれば考えるほど、バナナ様のありがたみが消えていくな。


「けど、よりによってイベントアイテムか」

 説明文に載っている知らないイベント名と、限定何たらがどーのこーのという記述から考えて、このアイテムは修次が時間と努力を使って手に入れたアイテム。しかももう手に入らない、昔あった特定のイベント限定のレアモノである可能性が高い。

 元々オレのじゃないからな。一度使ったら消えてしまう。というパターンが十二分にあり得るため、使ってしまう事にはどうしても抵抗を感じてしまう。

「かきんアイテム?」

「ああ、悪いフェレス。コッチの話だ。とりあえず『契約用アイテム』は見つけたから[魔力契約]はこの依頼が終わってから安全そうな場所でやるわ」

 フェレスのリアクションを見るまでは気付かなかったが、よく考えたらこの手のイベントアイテムは、特定のイベントで手に入れる以外に入手方法の無い限定品。つまりこれ自体が恐ろしくレアなアイテムなわけだ。 そんn[グレムリンのゴーグル]使って呼び出せる召喚獣も、普通では契約する事の出来ないモンスターになるだろう。

 ここは [情報屋]なんてジョブがある世界だ。ヘタな事したら目を付けられる程度じゃすまない。

「もうアイテムボックスって言うかトラブルボックスだな」

 けれどせっかく[召喚士]のジョブがあるのだ。召喚はしたい。それに気軽に呼べる強い仲間が増えるのは悪くない話だ。ロマンを取るか安全を取るか。悩み所である。

「いや、待てよ」

 オレはまだアイテムボックスの中身全部をちゃんとチェックしたわけじゃ無い。だったら課金じゃない『契約用アイテム』がボックスの中にある事だってあり得るんじゃないのか?

 そもそもこのアイテムボックスは、素材や武器に合わせてある程度整理されていたはずだ。『契約用アイテム』がまとめて仕舞われていたとしてもおかしくは無い。

 もしやと思ったオレは、あわてて[グレムリンのゴーグル]の先のアイテム欄に目を通す。

「……やっぱりな」

 意識を向けて進めて行くにつれ、アイテム欄の続きが視界に広がっていく。予想通り[グレムリンのゴーグル]の後には何種類もの『契約用アイテム』が保管されているようだった。

 レアアイテムであるはずの『契約用アイテム』をこんなにも集めている所は、さすが修次といった所だろう。

「ま、とりあえず[召喚士]でやっていく目処は立ったし。トラウマおじさんが戻って来る前にリデルを正気に戻すとするか」

 今はダンジョン探索中なのだ。実際の契約はまた日を改めて行う事にしよう。


 そしてアイテムに集中するあまり周囲の警戒を怠っていた事に気付いたオレは、慌てて[鑑定]を再発動させ、何かをブツブツと呟くリデルを元に戻すため[モンキーバナナ]の残り一欠けらを、リデルの口の中へと放り込む。

 バナナを食べたリデルのオリジナリティー溢れる復活の叫びが辺りに響きわたった。

「うーんまーいぞー!!」

 正気に戻ったはずなのに気がふれたみたいだ。が、とにかくコレでリデルも完全復活である。

 後はトラウマおじさんを待つだけだ。

「リデル君、ずいぶん元気がいいね。何かいい事でもあったのかい?」

「あ、トラウンの旦那!偵察お疲れ様っす」

「っえ、トラウマおじさん!?」

 いつの間にか階段を探しに出ていたトラウマおじさんが戻って来ていたらしい。

 いや、それはいいんだが……。

「何処にいるんだ?」

 慌てて辺りを確認したのだが、声はすれども姿が全く見えない。

 いくら辺りを見回しても[鑑定]の探索に引っかからないのだ。隠密系のスキルか何かで姿を隠しているのだろうか?

「それで旦那、階段の方はどうでした?」

「ああ、ちゃんと見つけて来たよ。すこし遠いけどこのメンバーなら問題ない」

 しかし隠密系のスキルを使っているのなら、リデルがちゃんと会話できている意味が分からない。

「ってアレ?」

 よく見ればリデルの首、上を向いてないか?

 不思議に思ったオレは恐る恐るリデルの視線を追ってみる。と、その先には空中に平然と立つトラウマおじさんの姿があった。

「と、トラウマおじさん!?」

 何でそんなカルト教団の教祖みたいな事を!?

 予想外すぎる登場をしたトラウマおじさんは驚くオレを見て苦笑する。

「ああ、驚かせてしまったかい? 僕のコレは隠密系ジョブの[空中歩行]というスキルだから心配しなくてもいいよ」

 スンマセン、教祖扱いはしたけど心配はしてないです。

「でも何そんなスキル使ってるんですか?」

「あ、コレを使えば基本地上に設置されたトラップに引っかかる事はないし、モンスターとの戦闘も少ないからね。それに上から探した方が見つけやすいし」

「あ、そういう事ですか」

「それで、階段も見つけたからすぐに動きたいんだけど。大丈夫かな?」

「「「はい」」」

 ダウンしていた1名も無事復活したので大丈夫です。

「よし、それじゃあ次の階層へ進むとしようか」


 次の階層。という事はまた環境が変わるのか。


「ここの環境に慣れる間もなく移動とはね」

 忙しい所だなホント。

 しかもここでは階を変えるごとにランダムで環境が変わる。それはつまり次の階で戦う相手への対策の立てようが無いという事だ。

「こりゃ思ってたよりも大変かもな」

 ようやくこのダンジョンのヤバさを実感し始めたオレは、次の階へと進むため、階段に向かって出発したのだった。




「着いたよ。ココが階段だ」

「や、やっと着いたか」

 その後トラウマおじさんに案内され、密林の奥へと進んだオレ達はトラップやモンスターの襲撃を切り抜けて早々と階段へと辿り着いていた。

 襲いかかって来たモンスターはさっきの[鉄拳エイプ]より数もランクも下。トラップも少し注意して見れば簡単に気づけるモノだけだったため、大した苦労もなく、時間もかけずにここまで来れている。

「なのに……」


 なのに信じられないくらいキツイ。


 やせ我慢でポーカーフェイスを気取ってはいるものの、何時来るか分からないモンスターの襲撃。そして見落として引っかかれば、間違いなく何らかのマイナス要素を受けるであろうトラップの2つを警戒し続けたせいで、思った以上に精神がすり減っている。

 しかも他のメンバーは全然平気そうにしてるのがまた辛い。


 オレは育ちの違いを痛感しながら、バレない様に体力回復を回復させようと、 [無詠唱]で[ヒール]を自分にかけていった。

「よし」

 [ヒール]を上手く使えば、もう2,3階層くらいは余裕で行けそうだ。

「さて、それじゃあ誰が最初に階段を降りるのか決めようか」

 肉体的な疲労が無くなったことで心にも余裕が戻ってくる。[ヒール]のおかげでようやくいつも通りに戻ったオレは、トラウマおじさんの提案にゆっくりと頷いた。



 このダンジョン、[アルカの森]は階段まで特殊なモノになっているらしい。

下の階に通じる広い階段を下りた先に、扉ではなく光の膜が張っているのだ。

 恐らくここに来る時に使った転移門と同じような仕組みのモノで、下に降りる冒険者をランダムに決めたフィールドへと飛ばすためのモノだろう。


 オレは不確定な先行きに不安を感じつつ、扉代わりの膜の前で繰り広げられている討論を見てタメ息をつく。

「……だからウチはこの中で一番LUCの高いテツ君が最初にくぐるべきだと思うんだけど、皆はどう思う?」

 ホント先行きが不安でたまらないな。


 そもそも、この[アルカの森]には同じ階でも何パターンものフィールドがある。1つの階を進むごとに無数にあるフィールドの中の1つがランダムにセットされるらしいのだ。

 しかしこのシステムは[ゴラムーニョ]討伐が目的のオレ達には都合が悪い。目的のモンスターが出現する階層とフィールドが限られているのに、その目的の場所に行けるかどうかが分からないからだ。


 つまりアタリを引けるかどうかは完全に運の世界。

 だからこそオレのステータスを知っているフェレスは、オレを一番最初に光の膜を通過させようとしているのだ。

 パーティーの場合は最初に階段を下りたメンバーと同じところに他のメンバーも降りるらしいからな。


 だが以外にもそのフェレスの提案にリデルが反対する。

「つっても、テッペーはココまで来るのに結構魔法も使ってる。残りのMPを考えるとムチャをさせるべきじゃねえだろ」

 おお、ホレてる相手の意見に正論で返論するとはさすが元マジメ君 (のイメージ)、チンピラな見た目の割に言う事はかなり堅実だ。


「そうだね。なら当事者であるテッペイ君はどう思う? 僕としてはフェレス君の言うようにLUCの一番高いという君が最初に入るのも1つの手だとは思うが……」

 ま、確かにアタリとハズレの可能性を考えればそうなるよな。

 2人の間に割って入ったトラウマおじさんが、選択肢をそのままオレに放り投げる。

 もちろんオレの答えは決まっていた。

「大丈夫です。行きますよ」

 自分自身の精神的な耐久力を考えれば、この依頼はなるべく早く片を付けておきたい。早く終わる可能性が少しでも高くなるのなら、やっぱりオレが行くべきだろう。


「お、オイ親友!?」

 だがこの回答が意外だったのか、リデルは相当驚いているみたいだ。

「大丈夫だってリデル。いざという時は障壁もあるし、多分平気だろ」

「けどMPの方は?」

「安心しろって、まだ全然余裕だ。オレはMPの回復も速いしな」

「……本当に大丈夫なんだな?」

「ああ」

「……ッチ、分かったよ」

 どうやらしぶしぶ納得してくれたらしい。リデルは不服そうな顔で引き下がる。

「それじゃあよろしく頼むよ」

「ハイ、それじゃあお先です。ハズレ引いても文句言わないでくださいね」

「分かってるよ」

 こうして次の階に一番乗りする事が決定したオレは、覚悟決めて光の膜を突き破っていく。すると体の大半が幕の中に入ったところで、後ろから声を掛けられた。

「あ、そうだ、親友! 分かってるとは思うけど、新しい階層に降りた時、場所によってはいきなり敵が襲い掛かってくる事もあるから十分に注意するんだぜー!!」

「え゛っ」

 り、リデール?

 もしかして反対していた理由ってソレ?

「何でそういう大切な事を体半分が光の膜に入ったタイミングで言うかな!?」

 そりゃ分かっているのが当然っていう世界なんだろうけど。そういう事はもうちょっと早くに言ってほしかった。

 だが文句を言いだした時は、すでに下の階へと転移した後。


 次の瞬間、新しいフィールドに着地したオレは、慌てて警戒態勢をとるのだった。


ども、谷口ユウキです(-_-)/


今回の話は予定よりも長い依頼編の長さに、この第一章はどこまで長くなるのかと疑問に思った回ですね。


頭の中にあるイメージを描くとこんなにも長くなるんだなー。と実感しました。他の作者さんの作品でも『思った以上に長くなった』という後書きを見かけます。


みんな思うことは同じなんですかね?


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