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プチトリ!!(仮題)  作者: 谷口 ユウキ
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リメイクしました第一章 第九話「ほう初戦闘とな」

前回のあらすじ


Mrフルフェイスは華麗なる着地を決めた



 今が何時かは分からないが、すでに空は夕焼け色。

 あの後、職員さんとティーリアさんのおすすめであるという事。そして『面白そうだからコレでいいか』軽い理由で結局トラウマおじさんの依頼を受ける事にしたオレは、今街の外にある[ビギナーズ平原]へとやって来ていた。

 もちろんここに来る前にティーリアさんは神殿へと送ってある。


 ココに来た理由はいたってシンプル。

 依頼の出発が明日の昼なので、空いた時間を使ってその時になって足手まといにならぬよう、今の内に戦うという行為に慣れておこうというだけの話だ。

 とはいえこの[ビギナーズ平原]に出るモンスター達の雑魚っぷりはゲームとそう変わらないだろう。戦闘というよりも殺すという行為になれるといった方が正しそうだ。

 ちなみにここに出るモンスターが弱いというのは街の外に出る時にすれ違った子供たちが[クールトー]のドロップアイテムである[尾無し犬の牙]を握っていた事から判断した事だ。

 しかもその子供達は冒険者ギルドで見た例のゆっくりトークショーの観客達である。弱くないわけがない。

「しっかしあの歳でモンスターと戦うってのがスゴイよな。さすが異世界」

 あんな純粋そうな子供たちでもモンスターを殺せるのだ。かなりのカルチャーショックである。


 この世界で生きようとすれば自然とあのレベルが求められるのだろう。

「しっかしどこで戦うかな」

 オレは罪悪感で吐くかもしれない。というありがちな展開を予想して、そうなっても迷惑にならないよう街の門からできるだけ離れた所に移動する。

「んー、ここら辺なら大丈夫そうか?」

 周りは森、後ろは岩。人の通りそうな要素は全くと言っていいほど無い。

 ありがたい事に [鑑定士]と[学者]のスキルを併用することで、ゲームの時の様に遠くにいるモンスターの姿もネームタグといいう形で確認する事が出来る。さすがにHPのバーが見える事は無いが視界に浮かぶ赤い表示はあるだけで十分役に立っていた。

「さて、ここからどうするかだけど。まあ最初に戦うって言ったらやっぱあいつだよな」

 狙いは昨日ゲームの出会で初めて倒したモンスター、[クールトー]。幸いというべきかこの平原では簡単に出会うことのできるモンスターだ。今も視界の中にその名前の書かれたネームタグを確認することができる。

 そしてオレは早速遠くで単独行動している[クールトー]に狙いを定め……。

「んじゃ、まずは接近戦からだ!」

 気で身体を強化した状態を維持しながら[クールトー]に向かって走り出していった。


「バウッ!? バウバウバウ!!」

 オレの走る足音に反応したのか、それともさっきの自分に気合を入れる声が聞こえたのか。

 素早くこちらの存在に気付いた[クールトー]の反応は早い。

 弾かれたように吠え声を上げながら素早く後ろへ下がり、威嚇するように唸り低く声を上げる。

「ま、遠くから奇襲を仕掛ければ一瞬で片が付いたんだろうけどさっ」

 だが今日はそういう手段を取るつもりは無い。

 この世界がゲームと同じなら今のオレと同格以上の強さを持つ者やモンスターは沢山いるだろう。

 そんな化物たちを相手取る時が来たとして、今のオレが[シュウ]の力を100%使いこなせるか?と聞かれたら答えはNO。

 今までが平和すぎて手札の把握や戦略以前に、戦闘という行為にどう向かい合えば良いのかが分からない。

 だからこそ今は真っ向勝負を相手に仕掛ける。

 相手は大したモンスターじゃない。一撃さえ入れれば必ず勝てるであろう格下だ。だが自分の都合で。少なくともコッチを敵として認識している相手を殺す事はきっとオレの中で1つの区切りになる。

 ソレが良いことだとは思わない。けどそれはおそらく必要なものなのだ。

 基本能力に性能の差がありすぎて経験というほどの何かは得られないかもしれないが、それでも真っ向勝負で倒す事で少なくとも不意打ちで仕留めるよりは何かを掴めると思いたい。

「悪いな」

 

 そんなわけだからここで死んでくれ。


 自分自身に嫌気がさすくらいの、あまりにも自己中心的な考え方。オレは心の中で広がりかけた憂鬱な気持ちを押し殺し、相手の出方をうかがう。

 野生の本能で力の差を感じ取ったのか逃げようとも飛びかかってこようともしない[クールトー]とのにらみ合いだ。

 オレはある程度の間合いを取りながら、何時でも攻撃に対応できるよう力を入れる。

 人生で味わったことのない独特の緊張感が体に走り、分からないなりに次の手を考え、相手への集中を高めていく。

 コッチから仕掛けるか? いや、迷うな……行け!!


 一気に足に力を込めたオレは勢いよく地面を蹴りだし、握りしめた拳を撃ち出すため振りかぶる。

 だがオレが突っ込むそのコンマ数秒前。オレの足が地面を蹴るより先に、それまで棒立ちだった[クールトー]がその場から真横へと跳躍した。

「うえっ!?」

 コレが野生の勘なのか? それともオレの動きが犬にもバレバレなほど分かりやすかったのか?

 そんな疑問が浮かんでしまうほど完璧なタイミングの跳躍は、結果として[クールトー]の位置とオレの走り込む軌道にわずかなズレが生じさせる。

「……けど、遅い!」

 レベル差と気の強化によるアドバンテージは限りなく大きい。まるで周りの時間を置き去りにするように加速した体は目の前のモンスターの動きを正確に、そして少しばかりスローに捉えている。

 相手の反応に合わせてなんなく軌道を修正。

 自分でも信じられないくらいのスピードで撃たれた拳が一瞬で[クールトー]の体と命を撃ちぬいた。

「キャィン!!」

 殴られた[ク-ルトー]は高く吠えながら光の泡になって消えていく。

 後にはドロップアイテムの[尾無し犬の牙]と小銅貨1枚、そしてある種の喪失感が残されるのみ。

 

 倒せた。当たり前だけどアッサリ倒せた。


 思っていたほど罪悪感は感じない。確かに腹の中にズンッと重い物は来るが、耐えれて、それでいて無理やり切り替えられるレベルの胸糞の悪さだ。

 [クールトー]の骨と一緒に自分の心のどこかが砕けたようにも感じたがそれは心の問題だろう。なんにせよ吐くほどの精神的なダメージはない……のだが。

「気持っち悪りぃ」

 まさかの大穴。生理的な嫌悪感がとんでもなかった。

 一応死体は消えるから濃い血の匂いとかはしない。しても残り香程度でそれだけなら特に問題は無い。

 だが殴った拳に殺した時の感触が残っているのがまずかった。

 こう何て言うか……死んだその瞬間、相手の体に流れていた神経の糸が切れる感じと言えば良いのだろうか?

 気で感覚が強化されていた事もあって、感触が変わった瞬間がモロに分かってしまった。

「あー、キツいなー」

 これで濃い血の匂いとかがあったら相乗効果で吐いてたかもしれない。

 オレは現実逃避気味に前の世界で読んだ異世界トリップモノの主人公たちに同情する。

「お互いロクな目に合わないな」

 ホント、泣きたくなるよ。


 オレは気休めだと理解しながらも、手に残った感触を払えればと手首をスナップさせてぶんぶんと振る。

「あー、とりあえず素手でやるんじゃなかったかな」

 武器があればもう少しはマシだっただろうに。何でそこら辺の事を考えられなかったんだかな。

 今からでも何か適当な杖を見繕おう。

「アイテムボックスにいいのがあるといいんだけどな」

 そういえば今着ている[治療師のローブ]もDランクの装備。

 Cランクの依頼を受けるのならもう少し良いモノ着ないと変な目で見られるかもしれない。アイテムボックスに良い装備が無いか探して、もしなかったら適当に材料集めて作る事にしよう。

「Cランクなら何か一つくらいあるかな」

 身を守る装備に関しては、絶対に壊れないであろう有料装備が良いかもしれない。今着ているのは私腹として使えばいいかな。

 オレはそんなことを考えながらとりあえずアイテムボックスの中を探していく。

「っとー、もしかしてBランクしか無い?」

 優位の手によってなのかシステム的なものなのかは分からないが、アイテムボックスの中にある装備はランクと種類を基準に整理されていた。

 しかしその中を一通り探した所修次のコレクションしていた有料(リアルマネー)装備にはBランクより上の装備しかないらしいという事が分かってしまう。

 正確にはCランクより下のアイテムもあるにはあるのだが[黄金に輝くビキニパンツ]とか[鋼のアフロメット]とかネタ装備ばかり。

 さすがにコレを装備して依頼に行こうとは思えなかった。

「しゃーねーな」

 こうなったらBランクの有料装備で抵抗なく着れそうなのを選ぼう。

 レベルが2つ上がればBランクになるんだし、持っていてもそこまで変って事は無いはずだ。

 知り合いと協力して素材を集めましたとか言えばきっと誤魔化せるさ。


 もちろんアイテムボックスに素材がたくさんあるんだからソレ使って宿で装備を作れば良い。という考え方もあるが、多分キョウはもうそんな気分になれないだろう。

 どの素材が何処に住むモンスターの物かオレは知らない訳だから、ヘタに作って、その装備を知ってる人と話した時に「この素材どこで手に入れたんだ?」とか、あの地方は最近どうなんだ?」みたいな事を聞かれたら万事休すだしな。

 この世界に来てまだ3日目、ゲーム初心者で設定も裏設定もサッパリなオレがそんな事言われても答えられるはずがない。

 壊れない、素材を知ってる人がいない、という2つのメリットもあるしね。

「……ヤベエ、[詐欺師]ハンパねえ」

 今、それっぽい話がスラスラ出てきた。これが[とっさのウソ]の力なのか。

 地味に筋が通ってそうな所がまた何とも言えないクオリティー。イヤ、もうコレは嘘では無い(って事でいい)な。


「とにかく装備だ装備」

 サッサと探してサッサと装着しよう。

 今のオレなら一々服を脱がなくてもメニューからパッと着替える事ができる。

「パッと見コスプレっぽく無いのはこの[魔導師風フード付きコート]とかか?」

 胸に2本の杖をクロスさせた小さなエンブレムがある以外は普通のコートに見える。

 コートの下に着るシャツなんかまで付いててお得感まである優れものだ。

「うん、もうこれでいいか」

 今はあんまり考え事をする気分でもないしな。

「「「「「グルルルルルル」」」」」

「ん?」

 何か否定的な雰囲気の返事をされた気がする。

 いや、否定的というよりも……。

「敵意タップリだな」

 アイテムボックスを閉じるて周りを確認すると、5匹のクールトーに囲まれていた。

「ボックス系は視界が潰されるのは欠点だな」

 全然気づけなかったし、さっきの『グルルル』も返事云々って訳ではなさそうだ。

 コレはアレか。さっき倒したヤツが最初、弾かれたように吠えたのは仲間にオレの存在を知らせる事が目的だったとかいうアレなのか?

 そうでもないといきなり囲まれたりしないだろう。

「いや、知らんけどさ」

 そもそも今は憂さ晴らしがしたくなるような。若干投げやりな気分なんだ。

「スキルを試すには持って来いだしな」

 使える魔法の威力の確認ついでに古術師のチートスキル[多重詠唱]でも試してみよう。

「相手の数に合わせて5つって事で」

 一気に行ってサッサと終わらせよう。

 オレがスキルの一覧から[魔術師]の使える下位、中位、上位の魔法をランダムに選ぶと、あっという間に完成した魔方陣が日の落ちていく平原で妖しく光りだす。

「ゴメンな」

 そして放たれた魔法が一瞬で5匹の命を掻き消した。


 罪悪感はほとんど感じなかった。






「うーん、良い天気」

 翌朝、朝食と一緒にお弁当を作ってもらったオレは集合場所である馬車便乗り場へと向かっていた。

 装備は昨日見つけた[魔導師風フード付きコート]に、同じくBランクの有料装備である[魔導ジーンズ]と[レプリカ・ケーリュケイオン]という名前の杖だ。

 [魔導ジーンズ]の見た目は後ろのポッケに魔法陣が縫い付けられたジーンズ。

 そのオマケみたいな魔方陣のおかげか防御力は高く、[魔導師風フード付きコート]と上下合わせてDFが62、MDFが35もプラスされている。

 [治療師のローブ]が上下セットでDF32しか補わなかったのに比べてかなり大幅に防御力が上がっている。2つランクが上なだけあって大した変わりようだ。

 さらにこの[レプリカ・ケーリュケイオン]は偽物のクセにATが40、MATが70も上がる高性能杖。

 ギリシャ神話のヘルメスとかいう神様の持っていた杖のレプリカらしく杖の先端に一対の羽。その羽を囲う2匹の蛇が杖に沿ってとぐろを巻いたデザインになっている。

「レプリカのクセにBランクでこの性能とか本物どんなだよ」

 と思いつつアイテムボックス見てたら数少ないSSSランク装備の1つとしてボックスに収められているのを発見してしまい、その性能に驚かされたのが中々忘れられそうにない思い出になった、課金アイテムである。


「しかしSSSランクの装備がリアルマネ―で買えないとは思わなかったな」

 本物の[ケーリュケイオン]を見るためにアイテムボックスを確認した時、全てのSSSランク装備に製作に必要な素材が記載されているのを見たオレはその現実にショックを受けていた。

 どうやらこのゲーム、最高峰の装備ともなるとプレイヤー達の努力の結晶的なアイテムになるらしい。

 何というロマン。

「ま、今はそんな事より依頼か」

 何が起こるか分からないのが現実だ。小説や漫画見たくホイホイ上手くいくかどうかなんて分からない以上心してかからないといけないだろう。

「テツくーん、馬車便乗り場はソッチじゃないよー!」

「え、マジですか? ありがとうございますフェレスさん」

 そう。オレの泊まってる宿の看板猫耳娘であるフェレスさん。

 宿屋の1従業員のはずの彼女が何故か同じ依頼を受けているという時点ですでに大分妙なことになっていると言えるのだから。

「はー、顔見知りの女子と一緒の依頼か」

 ゴムパンへの道は中々に遠そうだった。


ども、谷口ユウキです(-_-)/ 


修正しましたなつかしの初戦闘。

当時は頭をひねって書いた文章でしたが今見ると「量短っ」って思っちゃいますね。直すところもたくさんありました。


しかも文章だけ差し替えて後書きとタイトルを変更し忘れるという痛恨のミスまでやらかす始末。

今後は気いつけます。


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