平和破棄Ⅰ
長らく更新していなかったです。すみません
“クリムゾン”って知ってるか?
そんな声がした。其の声を聞いた少年がくるりとその声の持ち主へ向く。
「何それ、知らない」
少年――イルナがそう答えると声の持ち主、少女メイルは嬉しそうにクリムゾンの説明をし始めた。彼女の説明はこうだった。
“クリムゾン”
それは、紅を意味する言葉。彼はまさに其れ一色だった。他の色が思い当たらないのだ。戦場では何が何でも紅に染まり、その姿を何処かへと消してしまう。初めは皆、ただの幻覚だと言って笑っていた。そう目の前で起こったことがありえないからだ。あそこまで無残な状況に人が出来るわけが無い。しかし、その戦闘のせいで亡くなった人間の人体は確かに現実のものであった。その場にいた全員が叫びながらそこから姿を消した。
メイルは説明が終わると満足そうに笑った。それとは正反対に震えるイルナ。そんなイルナを臆病者、とメイルは笑った。
「酷いよ。」イルナは口をへの字に曲げてそう言った。その姿がメイルには笑いをもっと誘う材料にしかならなかった。イルナはからからと無邪気に笑い続ける。
「馬鹿者め。」
「何だよ、いいじゃん笑っても」
メイルは馬鹿者という言葉に敏感に反応し、イルナを睨んだが、彼は首を傾げるだけだった。
「あれ?」イルナも首をかしげる。
バサリと遠くから大きな羽音が聞こえた。
空を見上げると、龍。龍だった
イルナとメイルはぱくぱくと口を開閉させた。
「我を信じぬ者は、裁きの道を歩むのに他ならん。」
ああ、彼だ。
二人はすぐに分かった。彼を見れば一目瞭然だ。彼は酷く美しい紅の眼を持っていた