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プロローグ
いつだってそうだった。
何の気なしに出向いた所で、何の気なしに『今夜のフィーリング・・・』と、視線を向けた。
別に異性に限った事ではないが、同姓とあまり親しくなれない自分の視線には、余程目立つ存在の同姓しか目に入ってはこなかった。
傍から見れば、私は恋愛上手なのかも知れないと、時々思う事がある。
だけど、決して自負しているわけではない。
その時の勢いに感性を任せているだけなのだろうと、この頃は気付いている。
その確たる根源は私が自ずから作り出している『ほろ酔い』だから。
複雑海峡を真っしぐらに、それも、とことんと泳いできている。
えっ、「好きなタイプ?」
「仕事、してる人」
こんな、およそ筋違いとも言えるセリフをいとも簡単に口に出せる自分。でも、私唯一の最低条件だった。
そして、私の鉄則。
『好きな人が出来たから、今の彼と別れよう。』
《私》なんて人間は、どこにでも存在している。《私》がいなくたって、あの人は平気だ。
そもそも《好き》・《恋》・《愛》の区別を簡単に付ける事が出来るなら、弟子入りでもお願いしたい位だ。