死のくじ引き 2
「「さぁ!どうぞ!1枚引いて下さい!」」
今日も先輩と並んでくじを引く。
先輩と僕。横並びになってくじを引く。それぞれの目の前には、とても大きな抽選箱。
抽選箱を挟んで、向かい合うように、髪の毛を七三にまとめたスーツ姿の男が立っている。
抽選箱も人数分。スーツの男も人数分。全く同じ顔と姿で、先輩と僕の前に立っている。
いつものように、三角形のくじ引きの長辺から半円状にちぎり取って中身を確認する。
中身はいつも通りの白紙。
七三の男は声を揃えて言う。
「「あらー。残念。今日もハズレですね。」」
すると、先輩が話す。
「俺、これで当たってるやつマジで見たことねぇよ。近所のばぁさんなんて、60年以上、毎日引いてるけど、当たったことねぇってボヤいてたわ。くじを引いたこと無いやつから死んでいく。っつってな。」
その言葉に、僕も同調して返事をする。
「いや。ほんとそうっすよね。そもそも、先輩とここで並んで引くようになってから、5年くらい経ちます?1日に何回も引いてんのに、当たったことないじゃないっすかー。」
先輩も同調して返事をしてくれた。
「ほんとそれなー。馬鹿らしい。」
それから数日がたったある日。
今日も変わらず、先輩と並んでくじを引く。
すると、先輩の前に立つ七三の男が言った。
「あっちゃー!おしい!ハズレですねぇ。それは2等です。」
先輩の手には"苦"と書かれたくじが引かれていた。
「結局ハズレかよ。」
先輩は言った。
その次の日から、先輩はいつもの場所に来なくなった。
また次の日も。その次の日も。
そのまた次の日。いつもの場所に居ると、女上司が横に並んだ。この人とは、たまにここで一緒にくじを引く。
今日は女上司と並んでくじを引いた。
中身はいつもの白紙のハズレ。
女上司が言う。
「君の先輩君、脳出血で倒れたって知ってるか?」
僕は驚いて返事をする。
「え。そうなんですか。え?大丈夫なんですか?それ。」
女上司は話す。
「どうも2回出血したらしい。1回目は、殆ど症状も無かったが、2回目の出血で麻痺が出たと。血管がボロボロだったらしい。」
「うわー。それは。災難ですね。こんなこと言っちゃアレなんでしょうけど。生きてて良かったっすね。」
僕の返答に、女上司は話しを続ける。
「まぁ、聞いていたら、リハビリで良くはなるらしい。今は、麻痺のせいでなかなか動けなくて。呼吸?の調子が悪いらしい。仲良かったんだろ?見舞いにでもいってやれ。」
「ほんとっすね。」
話しが続いた為、自然と女上司と2人で、もう一度くじを引いた。
すると、女上司の前に立つ七三が言った。
「残念ー!おしいーっ!それは3等です!ハズレですねぇ。」
女上司の手には"不全"と書かれたくじが引かれていた。
「ハズレたのか。やっぱり当たらないものだな。」
その日を境に、女上司と横並びになってくじを引くことが増えた。
女上司は、いつも"不全"と書かれたハズレのくじを引いていた。
僕は聞いた。
「それ。気になんないんですか?」
女上司は答えた。
「当たりを引いた奴を見たことあるのか?」
「無いっす。」
そんな話しをした数ヶ月後。女上司もいつもの場所に来なくなった。
なんでも、妊娠、出産でトラブルがあったらしい。母子共に無事なものの、その後の発育でもトラブルがあって、仕事には戻れないらしい。
不運なこともあるものだ。
僕は1人。いつもの場所で、いつもの様にくじを引く。
すると、僕より若い男が、横に並んで一緒にくじを引くようになった。
ある日、若い男は僕に話しかけてきた。
「これ、当たりを引いた人、見たことあります?俺、周りに誰も居ないんっすけど。」
僕は答えた。
「僕も当たりを引いてる人なんて、見たことないよ。」
「ですよねー。」
それから暫く、若い男と一緒に、横に並んでくじを引くようになった。
それから数年がたったある日。
その日は、たまたま1人でくじを引いた。
僕の目の前の七三の男が言う。
「おめでとうございますー!アタリましたね!!」
僕の手には、"死"と書かれたくじが引かれていた。
それからは、何度くじを引こうとも"死"と書かれたくじしか出てこなくなった。
僕はアタリを引いたことを後悔していない。
僕は分かって引いていた。
けれど周りに、アタリを引いたことを言えずにいた。
僕は後悔していない。
後悔してない。
後悔してない。
でも今。死ぬ直前に言うならば。
おまえの目の前にある、その抽選箱。
本当に引く必要はあるのか?
題材:タバコ




