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奴隷騎士の主  作者: 社菘
3.擬似番の守護

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14/25


 食事をして一息ついたあと、ニコラは空に広がる星を眺めていた。


「寒くないですか? 夜は冷えるので、毛布を被っていてください」


 ポーチから取り出した毛布をラウロが肩にかけてくれる。その時に見えたラウロの首元に浮かび上がる紋章に、ニコラは無意識に手を伸ばしていた。


「……っ主?」


 ひた、とニコラの指が紋章に触れる。ラウロの喉仏が上下して、困惑した声がニコラの頭上に降り注いだ。


「あ、ごめん……狼がこちらを見ているような気がして」


 二人が奴隷契約を結んで浮かび上がってきた紋章は、狼と二本の剣。紋章の柄は契約者ごとに違うらしいが、これには何か意味があるのかと気になったのだ。


「この模様って、何か意味があるのかな?」

「……狼と二本の剣は、俺が生まれ育った国と関わりがありますね」

「そうなの?」

「はい。ちなみに……ココも」


 ココ、と言いながらラウロはニコラの下腹部に触れた。そこは聖紋が浮かび上がっている場所で、服越しにすりっと撫でられただけで体が熱くなってきたのが分かる。心臓はドキドキと激しく暴れ出し、ラウロに聞こえてしまうのではないかと緊張した。


「聖紋として刻まれている青い薔薇は、国花でした」

「国花……?」

「なので主の体には、俺に関係するものばかりが刻まれているんですよ」


 そう低く囁かれ、ニコラの心臓はより一層大きく跳ねた。


「ぁ、え? なに……っ?」


 全身が一瞬にして熱くなる。まるで内側から燃えるように体温が上がって、呼吸が乱れてきた。ニコラはバクバクと脈打つ心臓を服の上から抑え、たらりと流れてくる額の汗を手の甲で拭う。


 目の前が霞んできたが、なぜかラウロの顔だけがハッキリと見えていた。


「らう、ろ……」

「っ主! フェロモンが……ッ」

「ふぇろも……?」

「発情期です! まずは一旦落ち着いて、抑制剤を――」


 発情期やフェロモンという単語はニコラにとっては遠いもので、ぼーっとする頭では理解できなかった。ラウロが慌てていることだけは分かったが、彼が離れていきそうだったのでニコラは必死にラウロの腕を掴んだ。


「いかないで、ラウロ……側にいて……!」

「……っ、側にいます。だから落ち着いてください、主」

「やだ、おねがい、ぎゅってして……ラウロに抱きしめてもらわないと、さみしい……っ」


 ニコラは自分が何を言っているのかも理解できていなかった。ただ、今のニコラは目の前にいる『アルファ』が欲しくて欲しくて、たまらない。この腕を離すとラウロもいなくなってしまうのではないかという不安に苛まれながら、彼の腕を掴むことしかできなかった。


「お願い、一人にしないで……! 僕から離れていかないで、ラウロ……」

「ニコラ……」

「キスして、抱いて……うなじ、噛んで……」


 ラウロの手をニコラは自身の首元に触れさせる。アルファからうなじを噛まれないためのチョーカーを外し、ラウロから噛んでほしいとニコラの本能が訴えていた。


「うなじを噛まなくても、側にいる。そこは……本当に愛する人のために大切に守っておかないと」

「ん……っ」


 火傷しそうなほど熱い唇が重なったかと思えば、ニコラの口内にはころんっとした何かが流し込まれた。


「ぁ……なに……?」

「抑制剤です。しばらくしたら熱も引きますから、耐えてください」


 抑制剤を飲まされたことはラウロから拒否されているように感じ、ニコラの視界は涙で滲んだ。そんなニコラに気がついたのかラウロも苦しそうな表情を浮かべ、毛布に包んだニコラの体をぎゅっと抱きしめた。


「……大事なんです。大事にしたいから、熱に浮かされた状態で繋がったら駄目だ、ニコラ」


 ニコラと同じように体を熱くしているラウロに抱きしめられながら、オメガとしての欲求が落ち着くのを待った。


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