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「パワー・オブ・ワールド」シリーズ

能力はSランク、でも影響力はBランク!? 力が全てのこの都市で、私は最強の動画配信者になる!! 『ストリーム・オブ・ワールド』

作者: ふくあき

“魔女も超能力者もロボットも! 皆もおいでよヴァルハラへ!! ~力帝都市ヴァルハラは、力あるものの来訪を心よりお待ちしております~ 【緊急警報発令】第三区画にて、『粉化(イラプション)』と『幻視(アトミック)』による戦闘が発生。一般市民は地下街への非難を行ってください”


 ――これらが平然と高層ビルの並び立つ商業区画の電光掲示板で表示されているなど、普通であればあり得ない。

 でもここは違う。ここは日本であって日本ではない。絶海によって他の国々から隔離された人工の島。そしてここは力帝都市ヴァルハラ。ありとあらゆる人間が己の持つ力を試す為に集う場所。


 そして私は――


「Valtubeで見てくれているみんなー! 今日も配信を見に来てくれてありがとー! 特別な煌めきを貴方にお届け! 星町キララの生配信にようこそー!!」


 通常ならあり得ないネオンカラーの髪色。そしてアイコンタクトを入れなければ再現できない、瞳の中に映る星。そんな見た目で明るく快活な声を挙げれば、コメント欄の熱狂的な視聴者から、倍以上の返事が浴びるように飛んでくる。


【うぉおおおおっ!!】【開始前から待機してました!】【全裸で待機してました!】【←通報しました】【応援してるぜキララちゃーん!!】


 このヴァルハラで最大級の動画配信サイト、Valtube(ヴァルチューブ)における有名なValtuber(ヴァルチューバー)、それが私、星町キララ!! ――といった人気アイドルの中の人である、仁良木にらぎ鈴風すずかというごく普通ではない女子高生がこの物語の主人公であり、これから始まる物語を語る者の名だ。

 さてさて、私のことなんて横に置いておくとして。改めてこの星町キララというヴァルチューバーに話を戻すとしよう。

 今現在一体何をしているのか、それはいたって単純。


「さてさて今回の検証相手はなななんと! Sランクの炎熱系最強の能力者、『猛り狂う爆炎(ベルセルクブラスト)』の異名を持つ男、緋山励二だぁーっ!!」


 そうして私が携帯端末のカメラを向けた先には、面倒ごとに巻き込まれてやれやれといった様子の男子高校生が一人立っている。


「ちっ、詩乃しのが出てやれって言うから応じてやったが、こうなってくると面倒くせぇな……」

「め、めんどくせぇとな……」

【おおっと?】【草】【草】【流石のリア充緋山も生キララちゃんを前に緊張か?】【(キララちゃん可愛いから)しゃーない、(気持ちを)切り替えていけ】


 Valtube上では色んな意味でコメント欄が盛り上がっているが、私の配信が盛り上がるのならそれもまた良しってこと。


「まあとにかく、今日の凸枠ってことで、いっちょバトルといきましょう!」


 私のメイン活動は屋外配信。このように力帝都市でも有名な実力者と出会っては、検証も踏まえたバトルに持ちこんで配信を行う。これが星町キララの凸配信スタイルだ。


「さてさて、『猛り狂う爆炎(ベルセルクブラスト)』対『幻影少女ファントムガール』、このSランクの能力者に私のBランクの力がどこまで通用するのか!?」


 既に周囲では警報が鳴り響き、多くの一般人がビルの地下へと非難していく。そんな中には私のファンもいるのだろうが、危険を承知で私達のバトルを見る為にその場に残っているなんてことはないからひとまず安心。


検証バトルを申し込んでおいてアレだけど、後でファンの皆とかに手を出さないでね?」

「心配するな。その辺の分別がつかねぇタイプじゃねぇ」


 そうして相手は既に準備ができているのか、緋山の右手が小型の砂嵐へと変化してゆき、バトルの開始を今か今かと渦巻いている。


「どこからでも遠慮なくこい」


 既に力帝都市側のライブカメラも起動していて、この戦いの記録はデータとしても残されることになる。


【流石緋山、いつも余裕だな】【あいつはいつもそうだよな。リア充タヒね】【今北なう】【その余裕面を崩してやれキララ!】


 しかしながらいつも思う。もしかしたらこの戦いが星町キララというヴァルチューバーを更に有名にしていくのではないかと。


 そしていつかは頂点に立ってみせる――

 ――『影響力』最高の有名人として!!


「星町キララ、いきます!!」


 先手必勝ッ!!


「なっ!?」


 私の初手はいつも相手の度肝を抜く。何故なら私の能力検体名の『幻視(アトミック)』の呼び名の通り、私の第一能力プライマリは――


「アウトブレイク・シリコン!」


 ――原子を操る力。つまり原子が関わる事象や物体なら、その全てをこの手で再現できる!


「俺以外にも砂を操れる人間がいるとはな……!」

「砂だけじゃなく、いろんなものを再現できちゃうんですよ!」


 身体を砂に変化させる能力者を前に、挑発するかのように砂を生み出す。そしてそれだけでは終わらない。


「私の砂に飲まれなさい!!」


 まるで大波のようにうねる砂の塊を携えて、生き埋めにして一気に決着をつける!


「再現か……だったら、これはどうだ!!」


 緋山の持つもう一つの力――むしろこっちの方が有名で、彼が炎熱系最強と言われるたった一つの大きな理由。


R(ラヴァ).B(ブラスト)ッ!!」

「いぃっ!?」

【!?】【うおっ、出た! 緋山の得意技!】【(あまりの実力差に現場の奴ら)冷えてるかー?】


 顔の真横を、超高熱の熱線が一直線に通り過ぎていく。ほんの一瞬の出来事とはいえ、頬から伝わる熱量が、直撃のダメージを想像させる。


「……あの、もしかして殺す気でしょうか?」

「あぁ? 殺す気なら初っ端ブチ当ててるぞ」


 なるほど、つまり相手を真似るような魅せプをするくらいなら容赦しない、と。


「だったら……モルディング・タングステン!」


 金属でも最高の融点温度を持つ元素、タングステン。その盾でもって、さっきの一撃を防いでみせる!


「この大盾で――」

「目の前で悠長に生成しているみたいだが、足元を見なくていいのか?」

「へっ?」


 確か緋山励二は能力系統を二つ持つ能力者ってのは知ってるけど、砂の方は『身体強化フィジカルエフェクト』で、マグマを操る時は確か――


「『空間影響エリアエフェクト』……ヤバッ!?」

E(アース).E(イーター)ッ!!」


 足元が臙脂えんじ色に輝くのを感じて即座に、私はたったいま生成した大盾を地面に置いてその上に乗る。

 次の瞬間、何もなかった筈のアスファルトの地面から文字通り溶岩が打ちあがり、彼のもう一つの能力である噴火の力が発揮される。


「……流石は金属で最高の融点を持つタングステンか。融点は確か三千度を超えるんだったか?」


 そう、確かに私は溶岩によって遥か上空に打ち上げられた。しかし下に敷いていた大盾タングステンのお陰か、直接のダメージはほとんどない。


「うわっとと!!」

【大人げねぇぞ緋山ァ!!】【リア充が爆破しやがった……】【流石Sランク】【きららもこれで見納めかぁ(遠い目)】

(勝手に殺すなっての!)


 こんなこともあろうかと、私は既に着地の為に地上の方で原子を組み合わせている。

 炭素と水素――それらを組み合わせてできるのは天然のゴム!!


「きゃあっ!」

【可愛い悲鳴いただきましたー】【パンチラ助かる】【ヒヤヒヤさせやがって……】

「……何でもアリかよ」


 巨大なゴムの塊に着地をすれば、ノーダメージとはいかないものの軽減をさせることはできる。


「いったた……流石はSランク、一筋縄じゃいかないわね」

「……確かに面白い能力だな。俺の知人にも似たような反則級の能力者がいるが、そいつを思い出させる」


 率直な感想を述べたところで、緋山はこれまでとは違って手加減はなしだといった様子で地面各地を赤く輝かせ始める。


「……B(ボルケーノ)――」

「はいストーップ! 検証はここまでぇーっ!!」

【えぇ……(困惑)】【???????】【ハイ出たー】【いつもの】【確かにこれ以上は危険が危ない(冷静)】

「今回の検証! 私の力でタングステンとかを活用すればそこそこ戦えるけど、やっぱりSランクはムリー!!」

【予定調和】【ですよねー】【原子操れるならまだ打開策はあるのでは……?】【マジになりかけるとヘタレになるキララちゃん嫌いじゃないけど好きでもないよ】

「ってことで、今回の検証バトルはここまで! 皆またねー!!」


 そうして配信を切断し、私はほっとした様子で胸をなでおろす。そして改めて緋山の方を振り向くと、当然ながら最初は唖然とした表情を浮かべたが、そこから明らかな不満の意図を持った表情に変わっていく。


「……お前、実は他にも打開法を持っているだろ」

「えっ? 何が?」

「何が? じゃねぇ。原子を操れるのが本当なら、原子の振動を抑えれば熱なんざすぐに抑える事ができることくらい知ってるだろ」


 ぎくっ。


「……へ、へぇー!? そうなんですかぁー!?」

「ちっ、折角強い能力を持ってるってのに調子が狂う……俺の知り合いならそれくらいは平然と思いついて打開してくるぞ」

「……別に、強くなりたくてバトルしている訳じゃないんで」

「は? だったら何の為にこの力帝都市でバトルを仕掛けてるんだよ」


 確かにそうだ。ここでは腕力、能力、魔力、科学力、権力でさえも、この都市では自分の存在の証となる。力こそが、この都市において唯一揺るぎ無いものとなる。だからこそ誰しもが力を欲し、誇示し、証明する。ヴァルチューブも主な目的は戦いを記録し、誰もがその記録を目にすることができるサイトだ。

 でも私は、そんなものには興味がない。


「私が欲しいのは、この力帝都市ナンバーワンの影響力を持つこと」

「影響力……?」

「もっとチャンネル登録者を増やして、もっとバズって、力帝都市で一番の影響力を持つ存在になりたい!」


 私にとって力とは、影響バズる力のこと!!


「だからこそ、せめてチャンネル登録者数十万人は超えたい……!」

「おいおい……なんかとっくに百万人超えてる感じを予想していたんだが」

「百万なんて、やったことないから簡単に言えるんでしょ!!」

「っ……悪かったよ」


 そう、私はまだまだ駆け出しのヴァルチューバー。チャンネル登録者は最近一万人を超えたくらいで、まだまだ満足するつもりはない。


 リア凸バトル系ヴァルチューバー、星町キララ! 現在の影響力、そこそこ(Bランク)

 ――そして能力者としての実力は、測定不能(Sランク)(こっちでは申請していないけど)。

ということで短編です。もしかしたら連載で書いてみるかも(´・ω・`)。

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