6 - フレンチスフレパンケーキ ( 2 )
浅村さんという人は、なんだか他の人と違う。
「絶対に、良いものを撮りたいよな」
彼は食事の手を止め、フォークを脇に置き、私を見つめてきた。
掠れた声と、向けられた眼差しには、からかうような響きは一切なかった。
彼の突然の問いに、私は少し戸惑ってしまう。緊張で絶えず動かしていた両手も、そのせいで止まり、呆然と彼を見つめることしかできなかった。
彼は私の視線から逃げることなく、続けた。
「こんなにすごいもの、たくさんの情熱を注いだもの、絶対にちゃんと撮って、ファンのみんなに見せたいし、友達にも自慢したいだろ。ただ記録するっていう方法のせいで、見た目や品質が損なわれるなんて、絶対に悔しいはずだ」
え?
私は、瞬間的に目を見開いた。
すごいもの、情熱、自慢、悔しい?
過去の記憶が、脳裏に次々と蘇ってくる。六年前のあの日も、三年後のあの夕暮れも。
不安が驚きと共に胸を駆け巡り、疑問で満たされた頭は他のことを考えられない。思考が真っ白になる。
同じことではないけれど、どうして彼は…
彼は本当に、他の人とは少し違う。
吐きそうだ。急に胸が苦しくなる。自分の視線が少し泳いでいることに気づいたが、我に返った時には、もうまともに彼の顔を見ることができなかった。
ほんの些細なことなのに、どうして彼はそこまで考えられるの?
昨日の夜の会話と同じだ。
彼の心の中が知りたい。
彼がどうしてそんなことを言うのか知りたい。
彼の目的が何なのか知りたい。
でも、浅村さんの言う通りだ。
悔しい。
本当に、悔しい。
本当に、本当に、悔しい!
私が間違ったことをせず、自分らしく、必死に努力さえすれば、それでいいはずでしょう。
なのに、どうして。
「申し訳ない、藤原さん。多角的に検討した結果、我々としては…」
何?
「君の将来を考慮した上での…」
嘘つき。
「断腸の思いではあるが…」
また、その言葉。
そんな、役にも立たない無責任な言葉、誰だって簡単に口にできるじゃない!
目立ちすぎてはいけない、チームの他のメンバーを考えろ、うまく関係を築け。
理屈は、わかってる。
でも、私が何をしても、どれだけ人に合わせても、どんなにうまくコミュニケーションを取ろうとしても、何をどうやっても、彼女たちの陰での私に対する見方を変えることはできなかった。
やっぱり、あの子たちのせいなのかな。解雇されたこと。
やっぱり私は、誰かに認められる価値なんてないんだ。
私はマネージャーのオフィスを出て、ロッカールームへ向かった。
夕日が沈みかけ、オレンジ色の光が空に浮かんでいる。まるで、いつでも落ちてきそうだ。
「ねえ、あの藤原って子、本当に自己中心的すぎない?あの時の態度見た?わざと手抜きするとか、マジで人を見下しすぎでしょ」
「それな」
「本当、傍若無人だよね」
外から足音と噂話が聞こえる。声はどんどん大きくなり、ロッカールームのドアが開かれるまで——
私は隅に隠れ、静かに耳を澄ませていた。
みんな、ずっと表面上だけの友達だったんだ。
みんな、誰かの要求のために生きている。
他人が見たいと思う姿で生きる。
親が喜ぶ姿で生きる。
先生が満足する姿で生きる。
でも、そんな要求、私にはできない。
「大丈夫だよ、花。パパとママが、ずっとそばにいるから」
ありがとう。
「大丈夫だよ、花。悲しまないで。今夜、一緒に『幸せのパンケーキ』食べに行こうよ」
悲しまないでって言えば、私が悲しまなくなると思ってるの?あなたたちは…
誰も、「友達」の基準を満たせる人なんていないじゃない。
心からの想い。
心からの慰め。
心からの賞賛。
心からの助け。
できる人なんて、いるわけない。
やっぱり私が、こういう人たちと友達になる価値がないんだよね。
だって、もし私が同じことをしろって言われても、きっと疲れちゃうから。
これじゃあ、矛盾してる。
私って、本当に自己中心的。
だから。
みんなが見せるこの姿は、全部いろいろな目的のためなんでしょう。
期待しないことを当たり前にしようと、出会ったばかりの彼さえも拒絶して、そばから突き放そうとした、その時だった。
「えっと…その…あの時、何も考えずに口から出た言葉で…。今思うと、あの答えはあまりに自分勝手で、君の気持ちを考えていなかった」
彼、私のために反省してるの?
私たち、出会ってからまだ間もないのに?
街灯に照らされた浅村悠は、俯きながら、本来なら私が持っているはずの荷物を片手に提げている。
彼の言葉には何の飾り気もない。不器用とさえ言える表現だ。でも、なぜか、聞き続けたいと思わせる。
彼はその場しのぎの言葉を言わない。偽りの社交辞令もない。同年代の男の子にあるような、口先だけの軽さもない。
彼の言葉はいつもストレートだけど、一つ一つに強い論理がある。他の誰かの偽りの慰めや励ましと比べて、彼の言葉は、比べ物にならないほど誠実だった。
彼の言葉は、本当に私を納得させることができる。
それは、適当に考えて出てくるような言葉じゃない。
彼の言葉は、まるでテストの解答みたいだ。一つ一つのステップに、ちゃんと解法がある。なぜなら、だから。
彼は本当に、私のために時間を使って、私を理解しようとして、私の気持ちを楽にさせようとしてくれてるの?
だから、あの時、私は少し確信したんだ。浅村さんという人は、確かに、他の人とは違うんだって。
「是非、動画の撮影を手伝わせてください。この手間のかかった食事へのお返しとかじゃなく、僕自身が、こんなに美味しいものを伝えていきたいし、君が動画の中で何の気兼ねもなく全力で実力を発揮して、みんなに認められるっていう、その誇りを味わえるようにしたいんだ!」
彼がその言葉を口にした時、私は…
彼は、私の悔しさを感じ取ってくれてるの?
彼は、私の心残りを感じ取ってくれてるの?
彼は、私がどれだけ努力したか、わかってくれてるの?
彼は、全部感じ取ってくれたみたいだ。
彼は、感じ取ってくれたんだ。
彼は、本当に、全部、感じ取ってくれたみたいだ。
でも…
どんな目的から来ているのかわからない、私を助けたいというその想いは、私には重すぎる。
この、あまりに不器用で、独りよがりな申し出に、私はどう応えればいいんだろう。
私は顔を背け、彼に顔を見られたくなかった。
もしかしたら、私たちは、友達みたいな関係になれるかもしれない。
浅村さんとなら、きっと大丈夫だ。
人は変わるものだけど。もしかしたら浅村さんも同じで、いつか、突然人が変わったようになるかもしれない。もしかしたら、浅村さんも、実は他の人と同じなのかもしれない。
でも、今は、とりあえず彼のことを信じてみよう。
どうか、もっとあなたのことを知せてください、浅村さん。
もう、私をがっかりさせないで。




