表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/28

6 - フレンチスフレパンケーキ ( 2 )

浅村さんという人は、なんだか他の人と違う。


「絶対に、良いものを撮りたいよな」


彼は食事の手を止め、フォークを脇に置き、私を見つめてきた。


掠れた声と、向けられた眼差しには、からかうような響きは一切なかった。


彼の突然の問いに、私は少し戸惑ってしまう。緊張で絶えず動かしていた両手も、そのせいで止まり、呆然と彼を見つめることしかできなかった。


彼は私の視線から逃げることなく、続けた。


「こんなにすごいもの、たくさんの情熱を注いだもの、絶対にちゃんと撮って、ファンのみんなに見せたいし、友達にも自慢したいだろ。ただ記録するっていう方法のせいで、見た目や品質が損なわれるなんて、絶対に悔しいはずだ」


え?


私は、瞬間的に目を見開いた。


すごいもの、情熱、自慢、悔しい?


過去の記憶が、脳裏に次々と蘇ってくる。六年前のあの日も、三年後のあの夕暮れも。


不安が驚きと共に胸を駆け巡り、疑問で満たされた頭は他のことを考えられない。思考が真っ白になる。


同じことではないけれど、どうして彼は…


彼は本当に、他の人とは少し違う。


吐きそうだ。急に胸が苦しくなる。自分の視線が少し泳いでいることに気づいたが、我に返った時には、もうまともに彼の顔を見ることができなかった。


ほんの些細なことなのに、どうして彼はそこまで考えられるの?


昨日の夜の会話と同じだ。


彼の心の中が知りたい。


彼がどうしてそんなことを言うのか知りたい。


彼の目的が何なのか知りたい。




でも、浅村さんの言う通りだ。


悔しい。


本当に、悔しい。


本当に、本当に、悔しい!


私が間違ったことをせず、自分らしく、必死に努力さえすれば、それでいいはずでしょう。


なのに、どうして。


「申し訳ない、藤原さん。多角的に検討した結果、我々としては…」


何?


「君の将来を考慮した上での…」


嘘つき。


「断腸の思いではあるが…」


また、その言葉。


そんな、役にも立たない無責任な言葉、誰だって簡単に口にできるじゃない!


目立ちすぎてはいけない、チームの他のメンバーを考えろ、うまく関係を築け。


理屈は、わかってる。


でも、私が何をしても、どれだけ人に合わせても、どんなにうまくコミュニケーションを取ろうとしても、何をどうやっても、彼女たちの陰での私に対する見方を変えることはできなかった。


やっぱり、あの子たちのせいなのかな。解雇されたこと。


やっぱり私は、誰かに認められる価値なんてないんだ。


私はマネージャーのオフィスを出て、ロッカールームへ向かった。


夕日が沈みかけ、オレンジ色の光が空に浮かんでいる。まるで、いつでも落ちてきそうだ。


「ねえ、あの藤原って子、本当に自己中心的すぎない?あの時の態度見た?わざと手抜きするとか、マジで人を見下しすぎでしょ」


「それな」


「本当、傍若無人だよね」


外から足音と噂話が聞こえる。声はどんどん大きくなり、ロッカールームのドアが開かれるまで——


私は隅に隠れ、静かに耳を澄ませていた。


みんな、ずっと表面上だけの友達だったんだ。


みんな、誰かの要求のために生きている。


他人が見たいと思う姿で生きる。


親が喜ぶ姿で生きる。


先生が満足する姿で生きる。


でも、そんな要求、私にはできない。


「大丈夫だよ、花。パパとママが、ずっとそばにいるから」


ありがとう。


「大丈夫だよ、花。悲しまないで。今夜、一緒に『幸せのパンケーキ』食べに行こうよ」


悲しまないでって言えば、私が悲しまなくなると思ってるの?あなたたちは…


誰も、「友達」の基準を満たせる人なんていないじゃない。


心からの想い。


心からの慰め。


心からの賞賛。


心からの助け。


できる人なんて、いるわけない。


やっぱり私が、こういう人たちと友達になる価値がないんだよね。


だって、もし私が同じことをしろって言われても、きっと疲れちゃうから。


これじゃあ、矛盾してる。


私って、本当に自己中心的。


だから。


みんなが見せるこの姿は、全部いろいろな目的のためなんでしょう。


期待しないことを当たり前にしようと、出会ったばかりの彼さえも拒絶して、そばから突き放そうとした、その時だった。


「えっと…その…あの時、何も考えずに口から出た言葉で…。今思うと、あの答えはあまりに自分勝手で、君の気持ちを考えていなかった」


彼、私のために反省してるの?


私たち、出会ってからまだ間もないのに?


街灯に照らされた浅村悠は、俯きながら、本来なら私が持っているはずの荷物を片手に提げている。


彼の言葉には何の飾り気もない。不器用とさえ言える表現だ。でも、なぜか、聞き続けたいと思わせる。


彼はその場しのぎの言葉を言わない。偽りの社交辞令もない。同年代の男の子にあるような、口先だけの軽さもない。


彼の言葉はいつもストレートだけど、一つ一つに強い論理がある。他の誰かの偽りの慰めや励ましと比べて、彼の言葉は、比べ物にならないほど誠実だった。


彼の言葉は、本当に私を納得させることができる。


それは、適当に考えて出てくるような言葉じゃない。


彼の言葉は、まるでテストの解答みたいだ。一つ一つのステップに、ちゃんと解法がある。なぜなら、だから。


彼は本当に、私のために時間を使って、私を理解しようとして、私の気持ちを楽にさせようとしてくれてるの?


だから、あの時、私は少し確信したんだ。浅村さんという人は、確かに、他の人とは違うんだって。


「是非、動画の撮影を手伝わせてください。この手間のかかった食事へのお返しとかじゃなく、僕自身が、こんなに美味しいものを伝えていきたいし、君が動画の中で何の気兼ねもなく全力で実力を発揮して、みんなに認められるっていう、その誇りを味わえるようにしたいんだ!」


彼がその言葉を口にした時、私は…


彼は、私の悔しさを感じ取ってくれてるの?


彼は、私の心残りを感じ取ってくれてるの?


彼は、私がどれだけ努力したか、わかってくれてるの?


彼は、全部感じ取ってくれたみたいだ。


彼は、感じ取ってくれたんだ。


彼は、本当に、全部、感じ取ってくれたみたいだ。


でも…


どんな目的から来ているのかわからない、私を助けたいというその想いは、私には重すぎる。


この、あまりに不器用で、独りよがりな申し出に、私はどう応えればいいんだろう。


私は顔を背け、彼に顔を見られたくなかった。




もしかしたら、私たちは、友達みたいな関係になれるかもしれない。


浅村さんとなら、きっと大丈夫だ。


人は変わるものだけど。もしかしたら浅村さんも同じで、いつか、突然人が変わったようになるかもしれない。もしかしたら、浅村さんも、実は他の人と同じなのかもしれない。


でも、今は、とりあえず彼のことを信じてみよう。


どうか、もっとあなたのことを知せてください、浅村さん。


もう、私をがっかりさせないで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ