3 - 忘れられない、あの笑顔(1)
「ははは、変な奴だと思われたんでしょ?」
「やっぱりそうだよな。はぁ!」
僕はベッドにどさりと倒れ込むと、スマホから遠慮のない笑い声が聞こえてきた。
「ていうかあんた、本当に会話が下手だよね」
「そうかな。でも、まだ親しくないから、何を話せばいいかわからなくて」
「話題のことじゃないって。ていうか、あんた、本気で気づいてないの?」
「何にさ?」
「もし私の推測が正しければ…彼女、あんたに慰めてほしかったんじゃないの?慰めを!」
相手が突然声を張り上げたので、僕は思わずスマホを耳から離した。
「慰めって、一人暮らしのことに対する慰め?」
「ご名答。あんたの話が正確なら、たぶん先輩であるあんたの意見を求めてたんだと思う。言い換えれば、慰めをね。うーん…」
電話の向こうで相手が考える声がする。少し黙った後、彼女は続けた。
「だって、女の子が一人暮らしで直面する困難って、いろんな面で多いからね。社会には一人暮らしの女性を狙った悪質な事件もあるし。それに、体力面とか、生理とかも生活に影響するし。あの子が本当に聞きたかったのは、この辺りの治安とか、あんたが思う一人暮らしの良いところだったんじゃないかな。私はそう思うけど」
なるほど、そういうことだったのか。もし本当にそうだとしたら…あの時の僕は、人の心も分からない原始人同然だったじゃないか。
「そういうことか!」
思わず意外な声が出ると、相手は得意げに「ふふん」と二回鼻を鳴らした。
「でもさ、姉貴」
「ん?何、急に真面目な声出して」
僕は少し黙り、頭の中を整理してから、同じくバーチャルシンガーのリスナーである先輩に意見を求めてみることにした。
「Vtuberの中の人とモデルが、全く同じ見た目である可能性って、高いと思う?」
「ありえないでしょ。全く同じっていうなら、それはもうコスプレじゃない?それに、本人とモデルが全く同じだったら、モデルなんて要らなくない?」
「それもそうか」
確かに、もし犯人がつけている仮面が本人とそっくりだったら、それはもう仮面をつけていないのと同じだ。だから、同じはずがないか。
「もし仲直りできたら、ちゃんと報告してよね〜。さて、そろそろ仕事に戻るから、じゃあね、バイバイ」
「うん、わかった。またね」
電話を切ると、心の中の疑問はほとんど解決していた。
姉貴の言う通りだ。全く同じだとしたら、それはコスプレだろう。もしモデルと本人が同じなら、全く必要ない。
でも、一番大事なのは、どうやってこの状況を挽回するかだ。あの時、この問題に気づいた僕は緊張しすぎて、頭の中がごちゃごちゃで相手の意図を深く分析できなかった。考えもなしに答えたせいで、昨日みたいな気まずい雰囲気になってしまった。いくら僕でも、会って二日も経っていない他人に嫌われたくはない。
どうやって埋め合わせをすればいいんだろう?
*
あっという間に時間は過ぎ、夕方になった。午後六時の太陽は遠くに隠れ、建物の隙間からその姿をわずかに覗かせているだけだ。夕日が沈み、微風が肌の隅々までを優しく撫でる。人の体温に近いその感触は、それほど刺激的ではなかった。
運動をして全身汗だくの僕はベランダに寄りかかり、手の中の白湯を飲みながら、次第に賑やかになっていく通りを見下ろしていた。
仕事帰りの人々が、道路の両側の歩道をゆっくりと流れていく。車がその真ん中を走り抜け、道端の建物や街灯が色とりどりの光を放っているが、多くても雑然とはしていない。夕暮れが建物に一層深いフィルターをかけ、その質感をより豊かに見せていた。
三年前のある日の夕方、僕もこうしてベランダに寄りかかっていた。イヤホンからは聞き慣れた歌が流れ、心を空っぽにしながら、歌がもたらす解放感に浸っていた。
あの頃と比べて、今の僕にはイヤホンから聞こえるお馴染みの声がない。
音楽には魔力がある。時々、歌の中に自分の心の声を聞くだけで、とてつもない満足感を得られることがある。
世界中で自分とそっくりな人を見つけるのは難しいだろう。考え方も同じだ。もしある人の全ての歌が表現する内容と、自分の考えがこれほどまでに重なるなら、そんな人に出会えるのはきっと稀で、大切にしたいと思うだろう。
でも、当時、彼女がSNSに投稿した最後のメッセージ「さようなら。」を見た時、その言葉が何を意味しているのか心ではわかっていたのに、どうしても悲しくはなれなかった。
なぜだかわからない。たぶん、感情に関する問題のせいだろう。僕は大切な人のことで泣くことができない。親族の死であれ、様々な挫折であれ。一体どれほどの出来事を経験すれば泣けるようになるのか、自分でもわからない。そんな感情の障害が、子供の頃から僕には付きまとっている。
あっという間に三年が経った。彼女の最後の動画のアップロード日時は、三年前のあの日の夕方で止まったままだ。
彼女は今、どうしているだろうか。
はぁ。
どれくらいそうしてベランダでぼんやりしていたのだろうか。階下からか、あるいは隣からか漂ってきた料理の匂いに呼び覚まされた時には、空はもうすっかり暗くなっていた。
そこでようやく夕飯を食べていないことに気づき、僕は振り返ってキッチンに入り、冷蔵庫を開けて食材を探した。
「疲れたな。料理したくない」
壁の掛け時計に目をやると、七時を指そうとしている長針が、僕の料理をする気を完全にかき消した。
「じゃあ、下で何かお惣菜でも買ってくるか」
そう言って、僕は冷蔵庫のドアを閉め、鍵を手に取って玄関へ向かった。




