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新しい隣(1)

皆さん、長らくお待たせしました。

先月の末に高校を卒業し、僕にとっての「ラノベ黄金時代」とも言える日々が遠のいてしまったことに、少し寂しさを感じています。

今回は一週間ほどかけてこの章をじっくりと推敲すいこうしました。文字数は多くありませんが、楽しんでいただければ幸いです。

前置きが長くなりましたが、どうぞ物語の続きをお楽しみください。

皆様にとって、良い一日となりますように。

遠くの森から蟬の鳴き声が聞こえ、時折吹く潮風が体の右側を撫で、夏の蒸し暑さがもう片側を支配する。

「ねえ、何を考えているの?」

僕は目の前に広がる、砂浜と海と黄昏の夏が織りなす景色を静かに見つめていた。海水に濡れた両足には、砂浜の砂がまとわりついている。

「ねえ——あな!た!は!何!を!考えて!いる!の!」

声は、少し離れた前方からだった。

学生服にプリーツスカートの女の子が、首を傾げて僕を見ている。ポニーテールが右肩にかかり、水平線に沈みゆく太陽が最後の光を放ち、彼女の体の左側を眩しく縁取っていた。

瞼がゆっくりと落ちていく。

世界が静かになった。

再び目を開けたとき。

彼女の瞳が僕を見ていた。すぐ側にいるのに、その焦点は僕の背後、遠くのどこかに合っている。

光を失った、空虚な表情。

「はぁ……」

一つため息をついた後、彼女が微笑むことは二度となかった。



「皆さん、初めまして。浅村あさむら ゆうです。どうぞ、よろしくお願いします」

僕は夢から覚めた。カーテンの隙間から差し込む朝日が顔を照らし、窓の外からは鳥のさえずりが聞こえ、その直後、耳元でけたたましいアラームが鳴り響いた。

「では浅村君、本校を志望された動機、特に本校のどのような点に惹かれましたか?」

毎日が同じことの繰り返し。同じベッドで眠り、見慣れすぎた天井を見つめながら眠りにつく。それが僕の毎日だ。

「御校の豊かな文化的土壌と、充実した教育資源に惹かれたのが、私が御校を志望した理由です、面接官殿」

毎日呼吸する空気と、腹に収める食べ物以外に繰り返しでないものはない。僕の人生には、もはや考える価値も期待するものも、何もなかった。

「浅村君、君は各科目で優秀な成績を収めていますが、時事問題だけが芳しくありません。その原因は何だと思われますか?」

一人暮らしを始めた初日の興奮から、今の麻痺し、退化した状態に至るまで。僕と普通の人との違いは、未来の生活様式を数年早く始めたというだけのことだ。

「すべての問題は、私の物事に対する理解の仕方と、質問への回答の仕方に欠けている部分、そして婉曲的な表現にあると考えております、面接官殿。だからこそ、御校の豊富な教育資源をお借りして、私の表現と思考の仕方を強化したいのです…」

小学校、中学校、高校、大学、就職、定年、そして死。それが全ての人の人生。予定された人生、その道へと導かれる人生、人類が自ら発明したルールに従う人生。

「面白いですね。物事の理解の仕方と回答の仕方に欠けている、と。でしたら、最近話題になった事件を一つ、現場で取り上げてみたいのですが。若者なら知らないはずはないでしょう。どうですか、浅村君?」

何のために生きるのか、僕にはわからない。誰もが自分なりの生きる目的を持っている。ならば、自分の生きる目的を見つけることこそが、僕の生きる目的なのかもしれない。どうせ、もう他に意味なんてないのだから。

「…お任せします」

もう他に意味なんてない。

「AはBとの交際期間中、極度のアプローチを見せ、生活水準を大幅に落としてまでBに高額なプレゼントを提供し続け、最終的にはBへ多額の金銭的支援をすることが主となる恋愛関係を形成しました。ある口論の後、Bが距離を置きたいと申し出たところ、Aはこの関係が終わる可能性を受け入れられず、アパートの6階から飛び降り、不幸にも亡くなりました。この件について、君はどう考えますか、浅村君?」

もう他に願いなんてない。

「Aは死んで当然。Bに非はありません」

もう他に希望なんてない。

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