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カッチョの恋

カッチョ は森の暴れん坊。そんなカッチョは綺麗な羽のカナリアと出会って、お互いを認め合い、二人は仲良くなって行く。

切なくて可愛いお話。

睡眠童話として描きましたとても癒されるお話です。


睡眠童話


「カッチョの恋」




僕はカッチョ。森の暴れん坊。


今日もエサを探してこの森にやってきたんだ。


あっ、スズメのやつ、僕のエサ場にいるな……


よーし、ちょっと驚かせてやる!


「カッチョカッチョ! どけどけー! ここは俺様の縄張りだぞ〜!」



パタパタパタッ……スズメたちはあわててどこかへ飛んでいきました。



「はっはっは、どうだ! 俺様の声に驚いて、みんないなくなったぞ。これでゆっくりエサが探せるな!」


――あっ、やべっ。キジのやつが来やがった。


今日は別のところでエサを探すとするか。


そう言って、カッチョは山の向こうの街の方へ飛んでいきました。


赤い屋根のかわいいお家が見えました。


その近くには、美味しそうな木の実がなっていました。


「おっ、美味しそうだな。今日はここでごはんにしよう」


そう思って、カッチョはその木の枝に止まりました。


すると、赤い屋根のお家から、とってもきれいな歌声が聞こえてきました。


「わぁ……なんて綺麗な声なんだろう」


カッチョはエサを食べるのを忘れて、ずっとその声を聴いていました。


もっと近くで聴きたいと思って、窓のそばに止まりました。


部屋の中には、黄色いカナリアさんがいました。


カッチョが窓辺にいるのに気づいたカナリアは、にっこりして言いました。


「こんにちは」


カッチョはちょっと照れながら、


「こんにちは」と返事をしました。


「どこから来たの?」


「山の向こうから来ました。僕はカッチョ」


「私はカナリア」


「カナリアさん、とっても綺麗な声ですね」


「ありがとう」


「僕は『カッチョカッチョ』ってしか鳴けなくて、ぜんぜん綺麗な声じゃないんです」


「でも、カッチョさんの声、私好きですよ」


そう言われて、カッチョは赤くなりました。

「カナリアさんはいいですね。黄色い羽がとても綺麗で……


僕なんて、茶色い羽に、まだら模様のお腹で、ぜんぜん綺麗じゃないんです」


「あら、その茶色い羽も、まだら模様のお腹も、私は好きですよ」


カッチョはうれしくて、ますます顔が赤くなりました。


そのとき、ドアが開いて、


「カナリアちゃん、ごはんを持ってきたよ」


と、この家のおじさんがやってきました。


カナリアにエサをあげながら、窓辺のカッチョを見ると、こう言いました。


「なんだ、この汚い鳥は! あっちへ行け!」


そう言って、窓ガラスをパンッと叩かれました。


カッチョはびっくりして、慌てて飛び立ちました。



次の日も、カッチョはまたカナリアさんの歌を聴きにやってきました。


カナリアさんは、今日も綺麗な声で歌ってくれました。


「カナリアさんはいいですね。こんな素敵なお家に住んでいて」


「カッチョさんはいいですね。毎日自由に空を飛べて……」


「えっ、カナリアさんは空を飛んだことがないのですか?」


「ええ。私は、生まれてからずっとこのカゴの中……


一度も空を飛んだことがないの。だから、カッチョさん、外のお話を聞かせて」


そう言われて、カッチョは毎日、カナリアさんのところにやってきて、


スズメのこと、キジのこと、美味しい木の実のこと……いろんなお話をしてあげました。


カナリアさんはとっても楽しそうに聞いてくれました。



ある日、カッチョがカナリアさんのお家に行くと、歌声が聞こえませんでした。


「カナリアさん、今日は歌わないのですか?」


「コホン、コホン……カッチョさん……私、声がおかしくて……歌が、歌えないの……」


カッチョはとても心配になりました。


しばらくして、お家のおじさんと、白い服を着たお医者さんのようなおじさんがやってきました。


その人は、カナリアさんをじっと見て言いました。


「うーん、これは……鳥インフルエンザですな」


「えっ、そうなんですか!? どうしたら治るんですか?」


「いや〜、もう助かりませんな……」


そう言って、白い服のおじさんは帰っていきました。


家のおじさんは、困ったような顔でカナリアさんを見ていました。


そして、エサをやろうと鳥かごを開けたそのとき


カナリアさんは、バタバタッと羽を広げて、カゴの外へ飛び出しました!


おじさんはあわてて追いかけました。


「カナリアさん、こっち!」とカッチョが呼ぶと、カナリアさんは窓の外へ飛んでいきました。


おじさんは手を伸ばしましたが、カナリアさんはそのまま空へ飛び立ちました。


お家が小さくなるほど高く、高く――カッチョと一緒に飛びました。


「カッチョさん、私……飛べたわ」


「うん、そうだね。カナリアさん、飛べたね」


ふたりは空高く、風に乗って飛びました。


けれど


「うっ……」


カナリアさんの様子が変でした。


「カナリアさん……?」とカッチョが声をかけたそのとき、


カナリアさんの体は、くるくると回りながら落ちていきました。


カッチョは必死に追いかけました。


けれど、カナリアさんは草むらの中へ落ちてしまいました。


「カナリアさん、大丈夫!? 大丈夫!?」


カナリアさんはうっすらと目を開けて、こう言いました。


「カッチョさん……ありがとう……私……飛べたわ……空を……飛べた……」


そう言って、静かに目を閉じました。


カッチョは、カナリアさんのそばで


「カッチョ、カッチョ……」と、いつまでも鳴いていました。



おしまい。








小説家になろうさんで初めての投稿となります。ドキドキしながら投稿させていただきました。(温かいお気持ちで読んで下さい)

カナリアは空を飛べだ時、憧れていた鳥籠の外の世界をカッチョと一緒に見れました。けれど最後の二人の会話にグッときてしまいます。

私も泣きながら描きました。

よろしければYouTubeで睡眠用に朗読しておりますので。そちらも合わせてお楽しみ下さい。

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