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第十八・五話 アシンメトリー

私は隠れていた。

 どうして此処に隠れていれば安心だと思ったんだろう?

 そっと押し入れの隙間から外の様子を見る。気付かれないように息を潜めて……

 真っ赤な火と焦げた匂い、ゆらゆらと地面を揺れる黒い影と断末魔。


――此処から出ちゃ駄目だよ。私が出て来ていいよって言うまで……


 そう言った人は私を隠すように押し入れのドアを閉めた。

 あの人は誰だっけ?

 あぁ、目の奥が痛いなぁ……どうしてかな?

 手、ドロッとしたもの付いてるなぁ……鉄みたいな匂いするなぁ。


「……どうして、私泣いてるんだろう?」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 昔あるところに色んな魔術を使う魔女の村がありました。

 炎を操る者、水を操る者、植物を操る者、自然現象を操る者、毒に詳しい者、呪術に詳しい者、動物を操る者、時間を操る者。

 色んな魔女がいました。

 ある日一人の魔術を持たない女性と少女が村に来ました。

 女性は魔女に尋ねました。


――私は町から来た奇術師をやっている者です。どうすれば悪魔と契りを交わせますか? と。


 魔女達は女性を止めました。


――悪魔と契りを交わすことはとても危険、まして魔力を持たない身では体が朽ちてしまうでしょう。


 女性と少女はそれを聞くと、村を離れていきました。

 その日の夜はとてもとても静かな夜でした。


 動物の声も風の音もその日はしませんでした。




 少女が血のついた布を抱えて魔女の村に訪れました。

 少女はもう使われていない建物などありませんかと魔女達に尋ねました。


 魔女達は少女に近付く歩みを止めました。

 少女が抱えている布から禍々しい程の魔力を感じたからです。

 魔女達は少女にもう使われてない村の外れにある家を教えました。

 そして遠慮するように少女の抱える布を指さしました。

 少女は魔女達の問いに答えると、会釈をし村から出ていきました。


 何年か経ち、ある日魔女の村に一人の女性が小さな籠も持って訪ねてきました。

 女性は小さな包みを魔女達に渡しました。

 村はそのとき流行り病が蔓延していました。

 女性はこの包みに入ってる粉を病にかかっている方に飲ませてください。すぐよくなるでしょうと言います。

 魔女の中には最初は疑う者がいましたが、その女性の言うように包みの中の粉を飲ませると、何事もなかったようにどんどん病人の容体が回復していくのです。

 女性はあの時の少女でした。


 魔女達は彼女の事を《《白い魔女》》と呼びました。


 白い魔女は治癒魔術が使えるようでした。

 魔女達は彼女を歓迎しましたが彼女の近くにいる少年のことは忌み嫌っていました。

 少年は大層強い魔力を保持していました。


 しかし魔女の一族には男は生まれないのです。


 そうずっと昔から言い伝えられていました。



 白い魔女は町の方にも薬を持っていっているようでした。

 町からもらった肉や魚、布や糸など白い魔女は魔女達に持ってきました。

 魔女達も珍しい果物や宝石等を白い魔女にお礼にとあげました。

 白い魔女は町の人にそれを分けているようでした。


 白い魔女は町の青年と恋に落ちました。

 二人の間には女の子が生まれました。

 女の子が五つを迎えた夜白い魔女は町の人に火炙りにされ殺されました。

 魔女達は大層怒り、青年を殺してしまいました。

 しかし、一番の元凶は白い魔女の弟でした。

 弟は白い魔女を青年にとられた腹いせに町の人を使って女の子の大切な二人を殺したのです。



「ここまでが藍が知っている物語」


 朱はパタンと分厚い本を閉じる。藍は格子をぎゅっと握る。


「ずっとこのままその鳥籠の中に入ってるのか、それともここから出る?

でも、残念なことにね、この鳥籠の鍵は《《朱》》も《《藍》》も持ってないんだよ」

「……貴女、誰?」


 朱は藍の方に近付くと、囁くように呟いた。


「……鍵の在り処は藍自身が知ってるよ」


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