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さぐれ まるたね

金襴緞子の輝きと

見よう見まねの猿までしかない

ヤシの切り株の血液採取

南国気分のリュウゼンカズラ

生き血をすする

ワインの心

猿真似しかない金襴緞子の輝きをともす



長いがんもどきの洗礼を受けた我々の飢えと渇きは

どこまでも血に飢えた廊下をすべるようにいたし方がなく

蛍光灯は、血を発火させ

丸電球は、常にそこのほうで、血を沸騰させ

竹製のフェルメントを発火状態を、常普化させる

目玉焼きは、黒く黒化を繰り返し

近くを群れのようにして飛ぶハエと大差はない

鬼畜染みた廊下の修繕作業は、血が乾く時でしか

行えないだろうか


「しかし、今日は、暑いですね」

クーラーが、発電機の故障により

外の暴風雨とは、対照的に、密閉された室内は、サウナというわけではないが、さすがに、南国染みた暑さを

この畳敷きの和室にもたらしている

個々の夫妻は、さすがに長いこと暮らしているということもあるのだろう

さしたる苦もないように

「それでは、おやすみなさいと」

多少の、謝罪とともに、姿を向こうの襖へと消していく

小さな電球は、この建物の揺れと振動して、円を描くように、揺れ動く

それは一種、なんの前触れもなく

そして規則性もないようなこの嵐において、それでも、毎年この時期に来るという確率の高い

その台風の規則

そして、この家を振動させ

それを、目に見える部位として、もしくはどんな振動でも、円を描くように、それはそう揺れるのかもしれない

私は、たどたどしい考えのもと


「君は、先ほどから何をしているんだい」


教授が、布団の上から私に横になって話しかける

私は、筆を止めて、横を向いた

「いえ、小説ですよ、探偵だけじゃ食っていけないものでね」

教授はこちらを見る


「君は、ここに仕事に来ているのだろう、つまりは、金が入るはずだ」


何を言っているのだろうか、私はここに、バカンスに来たと先ほど

言ったではないか

この教授は、もうぼけてしまわれたのだろうか

それとも、偏屈な人間が多いと聞くが、その一端を私は垣間見ただけなのかもしれない

「君は、返事をしながら、よく文章など書いていられるね

器用なのかいい加減なのか

しかし、私がしゃべる横から、文章には、できればしてほしくないというのが私の正直な感想ではあるが

しかし、この雨風だ、

もうそろそろ、私のライトを、消させてもらいたい

いつ何時何があるかわからないからね」


「きみ、いい加減にした前

うそを言うのは勝手だが、この部屋には、停電もしていないし

クーラーが、ついているなんだったら、宿屋の親父が、クーラーが来てから

異常気象の成果は、わからないが

とてもとても、あれがなくては生きてはいけない体になった

正直、クーラーは、体力を奪っているだけかもしれないと、言っていたではないか、先ほどまで

きみ、少しは、返事をしたら、どうなんだい」

「すいません」

私は、そう告げて、顔を上げた

「しかし、あなたも、先ほどから、古風に、パソコンではなく、原稿用紙にメモを、書き込んでいるではないですか

同質なのですから、少しは情報交換や会話をしませんか

ねえ」

私の返答に、男は、顔をなでながら


「君の言っていることは、どの程度正しいのだい」


などと言っている

その時、電気が消えた

何の前触れもなく

一瞬にして暗闇に包まれる

先ほどと違い

そこには、夫婦はいないし

「すいません、あなた、私の小説を読んだ通り

もちろん、ぶら下げる電球式のライト持っていますよね」

「何の話だ」

やけに不機嫌そうに教授が暗闇の中でいう

そのと音が、やけに激しく聞こえ

まるで怪獣が、唸り声をあげて歩いているようにさえ感じる

激走である

「あいにく、君の言っているのは、多分にして、ランタンであり

電球ではないとは思うが

私は、武闘派でもまた、用意周到なたちではない

懐中電灯の一つ

この近代的な時代には、持ってはいないのだよ

君こそ、その近未来的な

パソコンで、何かしたらどうなんだい」

私は首を振る

しかし教授には、明かり一つないこの部屋では見ることもできない事であろう

「残念ながら、この機械も、近代的な申し子

つまりは、アナログではなく、電気がなければ、死ぬ貧弱体質な劣等生なのですよ

もしも、電源が、長いこと

もし今使うことで、切れてしまえば、脳に血液がいかないように

筋肉に細胞に酸素が回らないように

この中のデーターは、どういうわけか

死んでしまうかの世があるのですよ」

教授は、闇の中で

「僕は、眠るよ」

そんなことを言い

「しかし、俗説だと思うがね

試しに、君の三文小説を、ともしびに、この部屋を明るく快適に照らすことのほうが、有益に、楽しいと思うがね」

私は、ぼんやりと、パソコンを閉じる

夫婦の声が聞こえることはない

寝てしまっているのだろう

身動きすらこの嵐の中では、聞こえる事さえないのである

私は、閉じたパソコンを置きながら考える


「おい、探偵、先ほどから、カタカタとうるさくて、仕事ができない

眠るなり安らむなり、死ぬなり永眠するなり何とかしてくれ

それが無理ならせめて、そのガチャガチャいう

キーボードの音を、最小限に、その大雑把な腕を、神経質で、削りながら

一つを押すのに一時間くらいかけ

二十四文字以下を打つのに

翌朝までかんばってくれ

電気は消すから、それが無理なら、いきもせずに、静かにしていろ

今日は、祭りなんだからな」

私は、ぼんやりと、相手を見ていた

蛍光灯は、静かに揺れている






嵐の中、暗闇の中

汐の中風の中雨の中

何かが揺れそして、死と性の静寂の中間を、皮をはぐように

泳いでいる

それは鋭い刃物とも鞣しともとれる

どちらにしろ、誰もいない

この空間を割く人間を、観測できる人間は存在しない

ゆえにそれは、非存在物である

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