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【第1話】突如訪れる非日常

「……んぁぁぁあ!!もうやだぁぁあ!!」



そう叫んで寝そべる人はボスアルタ・アリサである。


その叫び声で木に止まっていた鳥たちはバサバサッと一斉に飛び立つ。



「………なんで逃げたんだろ、私。」



さっきとは比べ物にならない程小さな弱々しい声で囁く。


その時の顔はとても後悔と悲しみに溢れていた。


ボスアルタ・アリサ。


名前から察している人もいるかもしれないがアリサは異世界人だ。


猫のような容姿をしている無能力者である。


そんな少女は親友に近い関係の子を最近亡くした。


逃げろ、と言われたから逃げた。


それがアリサにとって後悔の元となったのだ。



「アイツ馬鹿だろ。死んだら私は一生覚え続けて立ち直れないって事。なんでだよ……私も、アイツも……。」



そんな独り言をしているとガザガサ、とアリサの後ろの葉が揺れる。


あいにく、アリサは気づいていないようだ。


異世界だからといって出てくるヤツは魔物系だとは限らない。



Schlaf(シュラーフ)。」


「っえ……?」



突如アリサではない声でそんな言葉が聞こえた。


そんな声に反応し、アリサは自身の頭上を見上げるように見る。



「(誰の声や……?)」


「ははっ。やっぱりここにいたんやな。ほんと、前と全然変わらんなぁ。」


「(私の事を知ってる……?ということは知り合い?)」



相手はアリサの事を知っている様子だった。


それを理解したアリサは立ち上がる。



「おー。すげぇ、これ耐えられるんか。」


「何言ってるか分からんけど……とりあえず誰?」


「へぇ?分からんのや。好都合やなぁ。」



そうニヤける謎の人物。


アリサは分からず顔を顰めるだけであった。



「質問に答えてくれません?会話が成り立ってないんだけど……。」


「うーん、やだ。」


「はぁ?なんで。減るものないじゃないですか。」


「だってそろそろ意識失うじゃん。」


「は……ッ!?」



そう言われた途端アリサは力が抜けたように倒れ込む。


なぜ力が抜けたのか分からず座ったまま考える。


いくら考えても答えにたどり着けないアリサを見て謎の人物は笑いながら言う。



「はは、さっきの英語。“Schlaf(シュラーフ)”。それで倒れたの。じきに眠るだろうね。気絶したかのように。」


「は……?」


「おやすみ。大嫌いなボスアルタ・アリサ。」



まぶたが重くなってくるアリサに対して謎の人物はそう言う。


“大嫌い”、何故そんなことを言ったのか。


考える間もなくアリサは深い眠りについたのであった。




























「………………!?」


「(………?人の声……?でも、聞いたことの無い声だ……。誰の声だ……?)」



誰かが驚いた声がアリサの耳に入る。


だが、アリサは聞いた事のない声だった。


気になってアリサはゆっくり警戒しながら目を開ける。



「あ、良かったぁ!生きてた……!」


「え?は、だ、誰……?」



見たことの無い景色。見たことの無い人。


全てが見たことの無いもので理解が追いつかなかった。


その様子を読み取ったのか目の前にいるモデルのような女性は安心させるように言う。



「ごめんごめん、倒れた人が生きてた安心からグイグイいっちゃった!ワイの名前は宮零奈!」


「私はボスアルタ・アリサ……。えっと、ミヤ・レイナ……?」


「そ!宮って呼んでくれていいよ!アリサちゃん!」


「み、宮……。珍しい名前だね……?」


「え?そう?ワイは君の方が珍しいと思うけどね!」


「え?」



アリサは思っていた回答と離れた回答をされてきょとん、とする。


そこで今までの記憶を頑張って思い出しながら辿る。



「(私はあの草原で倒れ込んで、謎の人物が出てきて、力が抜けて眠ってしまった。謎の人物は私の事を知っていて、私の事を大嫌いと言って……。)」


「……アリサちゃん?大丈夫?」


「……まさかっ!!」


「ちょっ!!アリサちゃん!?」



アリサはそう言って勢いよく歩道へと飛び出す。


ある1つの“噂”を思い出したから。


その噂とは、『急に眠くなって眠って起きたら人間の世界に飛ばされる。』というものである。


なんとも胡散臭い噂だった。



「……うっそじゃん。あの噂、ガチだったの……?」



アリサの目の前に広がるのは信号機、たくさんの車、色々な形の家。


その光景を目の当たりにしてアリサはそう言いながら笑う。



「急にどうしたんだろ……って、あの自転車!!」



突然、よそ見運転をしている自転車が通ろうとする。


このまま行くとアリサにぶつかってしまう。


あいにく、アリサは気付いていない様子だった。



「(やばい、助けなきゃ……でも、どうやって?一般女性の私が異世界から来た女の子を助けられるの?)」



深く考えてしまう宮。


その間にも自転車はアリサに迫る。


もうダメだ、と思って目を瞑ってしまう宮。


その時、自転車の前のタイヤがパンクした。


そして乗っていた人がアリサの上を通って吹っ飛んで行った。



「っ!?人と自転車ッ!?」


「っアリサちゃん!!」


「っわ!宮……?」


「怪我してなくって良かったぁぁっ!!」


「ちょ、なんで泣いてんの!!?」



アリサの無事を知った宮は泣きながらアリサに抱きつく。


アリサは焦りながらも宮をなだめる。


すると怯えたような声とそれに対する怒りの声が聞こえてきた。



「ご、ごめんなさいっ!ほんの出来心で……ッ!」


「ごめんで済んだら警察はいらねぇんだよ。黙って連行されろ。」


「何あれ……窃盗?」


「やだ、怖いわね……。」


「うわー。怖いね、アリサちゃん。」


「…………?」



怒ってるであろう人物は黒い帽子をかぶっていて、とにかく全身が真っ黒だった。


そんな姿をした人物に怖がってる宮に対して、アリサはその人物の声、姿に既視感を覚えていた。

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