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47話

 数年ぶりに会う父さんと母さんは少し老けて、そして小さくなっているように見えた。お互いの近況と暮らしぶりについての話もそこそこに本題に移ると、驚きの内容だった。


 海外に人狼の末裔がいた。


 厳密には人狼を支援する団体、組合の存在を知った。


 俺みたいに正体を隠して生きている人狼達を助け、正体を隠して現代社会に溶け込める手助けを中心に活動している。


  自分以外にも人狼がいたことに驚きだけど、なによりそんな組合がある事に一番驚いた。


 その組合に入るか話を聞けば俺の体質や今後の生活もよりよくなるんじゃないかと両親は考えた。なにより、俺と同じ境遇の人達がいるから心強いだろうと。


 話を聞いているうちに興味を持った。これほど心強いことはない。けど、素直に喜べなかったのは両親の表情が暗かったからだ。


 先を促すと、理由がわかった。問題が一つ浮上したのだと。


 その組合は日本にはない。海外のあちこちにはあるけど組織としての規模も小さく、人に知られないよう活動しているから仕方ないことだけど、今のままだと支援を受けることも協力を仰ぐこともできない。


 だったらいっそのこと海外に移住してはどうだろうかと。


 急な話だし、結論は急がなくてもよいと言われてたけど、その場は勿論、眠りに落ちるまでモヤモヤとしたものを抱え夜は過ごした。


 恵里奈姉ちゃんは心情を理解してくれているのか、話題を持ちだすことはしなかった。


 一人で悩んで居ても仕方が無いので柊に相談をしようと切り替えてすぐに出掛ける。


「いねぇし・・・・・・」


 別に約束していたわけじゃないけど、いつも待ち合わせしていた駅や公園、家の前に柊はいなかった。


【先に行ってる】


 連絡してみても、そんな素っ気ない返信が一回だけ。昨日のことをまだ気にしてるんだろうか。

 そんなことを考えながら登校し、学校に到着。クラスに入ってそのまま柊を探すけど、どこにも見当たらない。トイレにでも行っているんだろうか。


 だったら待ってれば――――


 ざわ・・・・・・・・・。


「?」


 なんだろう。嫌にクラスがざわついてるし、クラスの皆に注目されてるような? 

 しかも変なかんじで・・・・・・・・・・。


 なんで? 柊のことで変な噂が流れてる? それにしては嫉妬の類いとか物珍しがってる気配はないし・・・・・・・・・。


 うう、こわい。恥ずかしい。


「あ、山峰さん」

「・・・・・・・・・・・・え?」

「今日って、その、なにかあったのかな」


 柊に次いで一番の知り合い――――もとい話しやすい彼女に事情を聞きにいく。このままじゃまともに過ごすことさえできそうにない。緊張と羞恥で死にそう。


「えっと、君誰?」

「・・・・・・・・・・え?」

「話したことあったっけ? というかこのクラスの人じゃ・・・・・・・・・ないよね?」

「いや、なに言ってるの? 俺だよ俺」

「?」


 ・・・・・・・・・。


 嘘、だろ?


 最初はなんの冗談かとおもったけど、両のまなこは微塵も揺らいでいない。悪ふざけをしている素振りなんて覗う隙もなく。



 まったくの初対面、赤の他人を見る目だ。


 なんで? 


いやなんで!?


 昨日まで普通に接してくれてたじゃん! 散々からかうみたいに面白がって絡んできたじゃん!


「というか、柊さんの知り合い?」

「そこから!?」

「ねぇ皆。この人知ってる?」


 「いや」「わかんない」


 うっそだろおい!?


 なんで他の人達まで! 特に君達! 昨日髪型とか色々アドバイスしてくれたじゃん!


 な、なんなんだよ今日に限って!


 これはまさか虐めか!? 皆で俺を他人のフリして無視してリアクションを楽しもうゲームか!? なんて性悪なゲームを! 嘘の告白をして呼びだすゲームより最低だぞ!


「あ、柊さん。なんか柊さん探してる人いるんだけど」

「あ、柊!」


 戸を開けて教室に入る手前で呼びかけられた柊はそのままピタッと足をとめた。これで助かった・・・・・・・・・・・・と安心したのも束の間。


「・・・・・・・・・! お、大上くん・・・・・・・・・」

「なぁ、クラスメイト達の様子が変なんだ。なにか知ら――――」

「~~~~~~~!」

「あれ、え?」

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっ!」

「え、ちょ柊!?」



 彼女は回れ右をしてそのまま来た道をピュー! と凄まじい勢いで走りさってしまった。 

 え、逃げられた?


 えええええ・・・・・・・・・・・・・?


 勘弁してくれよ。この環境で一人にしないでくれよ。もう泣きそうだよ。


 なんなの? もしかしてまだ昨日のこと引きずってるのか!? 


「ね、ねぇ君」

「・・・・・・・・・・・・なんでしょう」

「もしかしてだけど・・・・・・・・・大上くん?」

「誰だとおもってたんでしょうか!?」

「え、嘘! マジ!?」


 山峰さんの反応に、近くにいた人達も同様の反応を示したけど、そんな大袈裟に驚くんだろうか。こっちがびっくりだよ。


 というかさっきからなんだか変だな。俺のこと知らないゲームじゃないのか?


「へぇ~~~・・・・・・・・・・・・あ、でもたしかに面影っつか大上くんぽさが・・・・・・・」

「面影って、正真正銘俺――――ってちょ、ちょっと・・・・・・・・・近いです・・・・・・・・・」

「なんか爽やかになったね~~~。全然いいじゃん! うん、ありあり!」

「ありって、なんのことですか?」

「つかさっきからなんで敬語?」

「だって山峰さんも皆も俺のこと知らないフリするから・・・・・・・・・」

「え? いや違うくて! だって今までと雰囲気別なんだもん!」

「へ?」

「そうそ! 別人かとおもったし!」


 ・・・・・・・・・嘘をついているかんじじゃない。


 ・・・・・・・・・・・・じゃあ皆俺のことに気づかなかっただけってこと?


 いや、髪型変えただけだよ? マスクそのままだよ? 


「今までのモサモサのモサ男くんって印象と真逆だよ! すごいな~~~! あ、ワックスも付けてる!?」

「それはまぁ教えてもらったし、まだ下手だけど・・・・・・・・・」

「だよね~~~。この辺りとか」


 !?



 近い!

 さっきの比じゃないくらい。つま先立ちをして触ろうとしてきたもんだから顔がくっつくかとおもった!


 あ、まずい。このままだとまた人狼に!!


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「もうちっとここを流すようにすればってどしたの?」


 あ、あれ?


 体を硬直させ、ギュッと瞼を閉じて襲いかかってくるであろう準備。それを僅かに緩めても、やっぱり予想していた変化はない。あちこちをたしかめるけど、やっぱり。


「大上くん?」

「あ、ごめん。それでなんだっけ」


 不思議そうにしてる山峰さんと話しだし、何度もあ、まずいという場面はあった。その度に身が構える。けど、まったく同じだ。


 前兆がなかったんだ。


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