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28/62

28日

カラオケから一日空けた週初め。待ち合わせ場所に向かうと先に待っていた柊に挨拶をしようとして、そのまま止まってしまう。


 そわそわしているというのだろうか。どことなく落ち着きがなくて、いつもの柊ぽくなくて挙動不審になっている。


「あ・・・・・・・・・」

「おう・・・・・・・・・おはよう」

「うん・・・・・・・・・」


 そうこうしている内にこちらに気づいて、ぎこちのない挨拶を交わす。そのまま歩き出すけど、こっちにまでぎこちなさが伝染してしまう。


「恵里奈さんに・・・・・・・・・・・・なにか言われた?」

「別に。やっぱりテンション上げながら根掘り葉掘り聞こうとしてきただけだ」

「そう・・・・・・・・・」

「「・・・・・・・・・・・・」」


 会話もぽつりぽつり、一言二言投げかけ合うとすぐに終了、もどかしさが残った通学時間だ。そして一番はモフろうとしてこない。隙をみせれば人狼化させようとしてきて慌ただしいほどだったのに、今日はそれがない。


相対的に考えて、カラオケのときのことが影響しているんだろう。こうまであからさまだと接し方に困るし、やりづらいんだ。


 いや、俺にとっては喜ばしいことなんだけど、ここまでいくと違和感が拭えないし逆に心配になってくる。


 けど、それを俺から言い出すのもなぁ・・・・・。


「あれから、おかしいところはない?」


おかしいところ?


「人狼化、突然しちゃったりとかしかけちゃったりとか」

「いや。ないけど」

「なら、メンタル面での不調は? 気分の落ち込みや食欲がなかったり。今日学校に来るのが憂鬱だったり」


な に? 専門医の問診?


「精神的にストレスを抱えたり不安定になると体調がおかしくなることもあるのだし。もしかしたらメンタルの変化であなたの体質に悪影響が出てるんじゃないかって」

「そういうのもないよ。今のところだけど」

「そう」

「もしかして、モフりたいか?」

そういうことを聞いてくるってことは、俺が人狼化しやすいということは、柊にとってはモフりやすいということ。いわば願ってもないことなんだ。

そんな回りくどいことしなくても。


 ってなに考えてんだ俺。


「いえ・・・・・・今はいいわ」

「?!」


なん・・・・・・だと?


「え、どういうことだ?」

「どういうもなにも、モフらせてもらわなくてもよいということだけど」


 嘘だろ?!


「なぁ、柊。お前なにか悪いものでも食べたのか? 体調が悪いとか?!」

「なによ急に。おかしな人ね」


いやおかしいのはお前だよ!


考えてもみろ。


いついかなるときもどんなときも、今まで徹頭徹尾モフることにしか興味がなくて俺と一緒にいるのもモフるため、モフるためなら手段も選ばない。自らをモフラーと称したこともある生粋のモフモフの 好き。そんなクレイジーサイコなキチガイケモナーである柊がモフろうとしないなんてありえない!


 あ! でもいつも連れ込まれそうになる公園の公衆便所もスルーした!


「本当にモフらなくていいのか!?」

「なに? モフってほしいの?」

「違わい!」

「逆にしてほしいと迫まれるとこっちも冷めちゃうんだけど」

「複雑なモフラーの心理なんか語られてもどうでもいいんだよ!」

「一体どうしたというの。うるさいわよ静かにして」

「お前のせいだよ!」

「気分がのらない。それだけよ」

「そんな気分になるときがお前にもあるなんて衝撃だわ!」

「本格的に失礼ね。私だってそういうときくらいあるわよ」

「えっと・・・・・・」


 流石におかしくなってきて、頭が混乱してくる。柊らしくない。らしくなさすぎるんだ。


「え、じゃあなんで今日一緒に登校してるんだ?」

「・・・・・・」

「ひ、柊?」


 睨まれた。


怒っているというほどじゃないけど、険悪な表情を向けられ続ける。


「・・・・・・教えない」


 少し足取り荒く、大股な早歩きでずんずんと進んでいく。全身から火が立ち上っているような後ろ姿を呆然と見送る。


「ちょ、待てよ!」


 ハッと我を取り戻して追いかけるけど、並んで歩くのを拒んでいるのか足を速められて中々追いつけない。


・・・・・本当に、なんなんだ?



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