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24話

「二人ともこんなところでなにしてんの~~?」


 まさか学校の外、それも休日にクラスメイトと遭遇するなんて完全に想定外。学校で俺達の関係は秘密、それだけじゃなくって赤の他人となっている。それなのに二人でいるところを見られてしまったとあれば。


 どうして一緒にいるのかって疑われるのは必定。それだけならまだいい。他人を装っていることに気づかれて相対的に関係を怪しまれるなんてことにも・・・・・・・・・。


 あわばばばばばば。えらいこっちゃ。


「こんにちは山峰さん。あなたことここでなにをしているの?」

「皆と遊びにきたんだよ。今はご飯中」


 チラッと横目で遠くの席に目をやる山峰さん。つられて見ると、たしかに見覚えのあるクラスメイト達がちらほら。何人かはこっちに気づいているみたいだ。


 ヒイイイ、まずい。


「それで二人はなにしてるん?」

「え、ええ~~~っと、その・・・・・・・・・」


 ダメだ。上手い言い訳がおもいつかない。


 可愛く小首を傾けている山峰さんは、俺が慌てている理由に気づいていないけど、そのうち怪しいと感じるだろう。


「私と大上くんは、同じ映画を偶然観に来ていたの。それで面白い映画だったから昼食がてら映画の感想で盛りあがっていたところよ」

「ふぁ!?」

「え、そうなんだ? なんか揉めてるみたいだったけど」

「ええ。でも意見の対立がおこってしまって二人ともヒートアップしすぎていたの」

「そ、そうそうそう! 実はそうだったんだよ!」


 柊の助け船に、全力でのっかることにした。


「面白い映画だったし、誰かと感想を語り合いたい気分だったの。大上くんも同じみたいだったし」

「そうそうそのとおり! 俺この映画めっちゃ好きなんだ! 前作も前々作も好きでBD持ってるし! 今回も買うつもりだし!」

「そうなんだ。よっぽど面白い映画だったんだね、パンフレットある? 興味出てきちゃった」

「残念ね。山峰さん。パンフレットは売り切れていたわ」

「あ、そっか~~」

「ええ。私もまさか初日で全部売り切れるとは甘く見ていたわ。私も買えていなかったのだから、大上くんごときが買えるわけがないしね」


 とげとげしさを含んだ柊の言には悪意しか感じないけどこのままいけば大丈夫な気がしてきた。最初はどうなるかとおもったけど、今ではほっと胸を撫で下ろしている。


 けど、ここまで真顔で嘘をつけるなんて良心が痛まないんだろうか? 俺はゾッとしてるよ。


「大上くんは監督の別作品の内容や撮り方にも詳しくて造詣が深いんだけど早口過ぎて得意げに話すの。私が好きなシーンや感動したシーンの説明をしたり」


 うん。それ俺のこと遠回しにくそめんどくさいオタクって言いたいんだろ?


 よく姉ちゃんにも指摘されるけど。もしかして姉ちゃんから聞いたのか?


「最終的には私も熱が入っちゃって、あんな風になってしまっていたわ」

「そ、そっか。大変なんだね」


 あはは、と困ったように笑う山峰さん。だけど、このままなんとか自然にフェードアウトすればいいかも。


「でも大上くんって学校じゃあんまり目立たないけど好きなことには熱くなるタイプ?」

「は、ははは。どうかな・・・・・・」

「気をつけたほうがいいわ山峯さん。あまり親しげに口をきかないで。油断しているとあなたも彼に目をつけられてしまうわよ」

・・・・・・・・・。

「え? それどういうこと?」


 いや、俺も禿同だわ。


 いきなりなに言ってんだ?


「そんなことをされると彼にターゲットにされるということよ」

「いや、お前なに言ってんの?」

「現に私もついさっき誘われたのよ。性的な関係を大上くんに」

「「・・・・・・」」


 こ、こいつは・・・・・・。


「え? え? 性的? え?」

「あなたの想像どおりのことよ」

「!」

「いやいやいやいや! ちよっと待ってくれ!」


 とんでもないことをとんでもないタイミングで暴露しやがった!!


「きっと女性と話した経験がないから好意を勘違いしてしまったのね。目がギンギンになっていたわ」

「やめろお前えええ! モテない男のリアルにありそうな方向性での勘違いは! 違うんだ山峰さん! 俺はそういうつもりで言ったんじゃなくて!」

「ええ〜っと・・・・・・」

「そもそもどうしてあなた山峰さんの名前知ってるの?」

「!」

「クラスメイトだからだよ! ちょ、柊! どういうつもりだよ!?」


 山峯さんが俺を見る目。酔いつぶれてゴミ捨て場で寝ているおっさんを見る目してるじゃねえか!


「事実じゃない。あなたが私に・・・・・・ごにょごにょ・・・・・・を誘ってきたのも。女性と話す経験がないことも」

「だからってお前!! お前なあああ?! 絶対勘違いされてるだろあれ! そもそもそういうつもりだったんじゃねえよ! 全部が全部間違ってるわ!」


 ここまで俺を下げる必要なんて皆無。


「身内以外だとコンビニやお店の店員さんくらいとしか話したことないくせに。袋いりませんって告げるのにも勇気がいるくせに」

「ストローくださいだって言えるわ! Tカードありますも言えるわ!」

「胸を張れることじゃないわよ」

「やかましい! つうか大事なのはそこじゃねぇよ! 俺が柊に言ったのはーー」

「えっと、どういうつもりでなにを誘ったつもりだったのかな?」

「・・・・・・」


ええい、説明できないのがもどかしい!


 だってそうだろ。動物をモフモフすることが大好きな同級生が人狼である俺をモフろうとしたから落ち着かせようとしていたなんて信じてもらえるわけがねぇ!

つぅか柊ガチでどういうつもりだ!


 そうおもって睨んでいると、柊からメッセージが届いた。


【私以外の女の子と話すのはまだあなたに身が重いでしょう】


 くそが!伝わらない気遣いは気遣いじゃねえ! ただの傲慢なんだよ!!


「大上くんってそういう人だったんだ・・・・・・あははは」


 言い訳もできないでいることがある意味説得力になってしまっているのか。すっかり信じ込んでいる様子。


 ああ。このままじゃ。対して仲良くないけど、山峰さんから同級生、下手すりゃ学校中に噂が広まって学校生活が針の筵。人狼どころじゃなくなるぞ。


なにか上手い言い訳は。この場を乗りきる方法は?!


このままじゃ俺が誰彼かまわず好きになるガチでヤバい奴ってレッテル貼られるぞ!


「か、カラオケ!」

「か、カラオケ?」

「映画観てテンション高くなってきたから一発カラオケ行きたいなっておもって誘ったんだ! ちょうど主題歌歌いたい気分だったし!」


 これだ。これしかない。


「なのに柊の奴、碌に話もきかないで勘違いしちまってさ〜! ははは、困っちまってたんだよ!」

「えっと、そうなの?」

「ああ! 第一柊俺のタイプじゃないし! もっと大人の年上の女性が好みだし!」


 山峰さんは勢いに呑まれてか、信じはじめている。柊も証明する手段がない。ここだ。ここで一気に畳みかける!


乗るしかない。このビッグウェーブに。


「ぜんっっっっっぜん!!!! 柊のことそんな目で見てないから!!!! ありえないから!!!!」


 柄にもなく大声で叫んでしまった。そのせいで周囲の注目を集める結果になってしまい、猛烈に恥ずかしくなってくる。


「そ、そうなんだ・・・・・・」


 なんとかわかってくれた反応を示す山峰さんに、ホッと一安心。これでもうなにも問題はない。はず。


「じゃあちょうどよかったかな」

「え?」

「私達もこれからカラオケ行く話になってたから。二人もよかったらどう?」

「・・・・・・」

「いいわね、それ」

「え、」

「私も最近皆と遊べてないし。鬱憤、も溜まっているし」


 鬱憤、というところに妙な力強さが感じられた。


「ねえ? 大上くん」

「いや、俺は――」

「じゃあ私、皆に知らせてくるねー!」

「あ、ちょっと!」


 制止の言葉と伸ばした手は届かなかった。


「よかったわね。望みが叶って」

「!?」


 身が竦む。背筋に冷たい刃が走る心地。ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・と圧倒的なプレッシャーをかんじる。


「柊・・・・・・なんか怒ってる?」


 すぐ隣から怖々としたものを放ち続けている柊は無表情だ。冷たい印象の顔立ちだからこそこわさと怒りが際立っている。


「怒らせるって自覚があることをしたの?」

「いや、ないけど・・・・・・」

「せっかく私があなたを他人から助けようとしていたのに自分から墓穴を掘るだなんてなんて駄犬だ、なんて自覚があるの?」

「い、いや。そこまでは・・・・・・」

「ならわざわざ聞かないで」


  こんな柊は初めてで、黙りこくったまま首を何度か上下に振ることしかできない。


「山峰さん達も準備できたみたいね。行きましょう」

「いや、でも――」

「なに? 大上くんがしたかったことでしょ? 好みでもない女の子と二人でカラオケを」


 含みしかない言い方だけど、なんでだろう。なんでこんな風になった?


 俺が柊を意識してないって強く説明したのがそんなに気に入らなかったとか?


 でも、それだけでこんなに怒るのか? いや、だって柊が興味あるのはモフモフできるかどうかだけ。俺の好みだとか好かれてるなんてのは関係ないだろうに。


 もしかしたら別の理由がある? 本当は山峰さん達とカラオケ行きたくなかったとか?


「・・・・・・・・・」


 そうかもしれない。だって俺の正体がバレやすい状況になったんだから。


 あれ? でもなんで柊は誘いにのったんだ?


「だったら普段仲良くない人達としても問題ないでしょう」

「いや。それはおかしい。お前がさっき言ってた事と逆」


 なにはともあれ。このままじゃいけない。断固として拒まないと。


「ああ、そうだ。新しい楽しみ方を昨日の夜考案したのを思い出しちゃったわ。モフモフサンドイッチっていうんだけど」

「 」

「来るわよね?」

「・・・・・・・・・うん」


  逆らうことなんてできなかった。


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