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2話

人狼。伝説の生き物の一種。ルーガール、狼男、ウェアウルフと呼び名があり、形態や事情は様々だが半分狼で半分人の姿をした怪物。


 世界中の国々で伝承があり、現代においては空想上の生き物とされている。


 けど、狼男は実在している。何故断言できるのかって? それは俺が狼男の末裔だからだ。


 自分でも信じられなかったが、判明したのは中学生のとき。なんでもないことで突然狼男の姿へと変貌してしまったことで発覚した。


俺を含む家族は驚愕した。両親も自分達が狼男の子孫だなんて知らなかったからだ。それも父母どちらの血縁なのかもわからないほど。


先祖返りというらしい。何代も前の御先祖様の遺伝子上の特徴が突発的に子孫に現れる現象。それが偶々俺にだけ発生してしまった。


  伝説の生き物なのになんでそこだけ現実味があるのかはさておき、当時はとても困った。いきなり伝承にある化け物だと言われても実感なんてなかったし、なにより生活や体質に四苦八苦した。


 なにしろ突発的に、原因もわからずいきなり人狼の姿になってしまうことが頻繁にあったし、人に知られたらとんでもないことになる。


 やがて人狼の体質について自ずと理解でき、克服とまではいかないまでも人狼の姿を抑えることができるようになると、別の問題が浮上した。


 俺の生き方、もっというなら人狼の体質をどうするかということだった。


 元々狼男、人狼なんていう生物に関する情報なんて都市伝説レベル。枚挙に暇はないが、眉唾もので参考にできることはなかった。どれも加えて世にも珍しい生物の末裔とあれば大っぴらに聞いて回ることもできない。実際の人狼どころか人狼を知っている人すらいるのかいないのか不明なレベル。


 それでも両親は俺をなんとかしようと調べて回った。今でもそうだ。


 そんな中、いつしか諦めと自分の体質を受け入れた俺は自然と他人と距離をとり、関わりを徹底的に持たないように心がけ、すっかり陰キャとなった。


 一人で過ごすことに慣れた頃には、この体質と一生生きることを決めていた。別に覚悟だなんて大袈裟なものじゃない。


 そうでなければ大騒ぎになって爪弾きにされたり珍獣扱いされていただろうし、腫れ物扱い、物珍しがられる存在になる、気持ち悪がられると現実的な考えで納得できているだけだ。


 別に辛くはない。今まで狼男の正体を知られることはなかった。姿を誰かに見られたことも、姿が変わることも皆無。他人と比べると楽しさは少なくても平穏な人生を送れているし、趣味も豊富だ。


 もしも狼男の末裔でなかったら。そんな夢想をしたことは何度かあるけど、無駄なことだった。努力では変えられないことがあるし、今では一人で過ごす時間を満喫できる術を会得しているからなんでもない。


 俺にはこんな生き方が合っている。無理に誰かと仲良くなって正体がバレないようにビクビクするのも嫌だし、バレてしまえば元も子もない。


 そんな面倒で大変な生き方をするよりも、今のほうがずっとマシだ。結局のところ、人には立場や不相応という言葉があるのだから。


 このままずっと空気のような存在としてそっと生きていければいい。高校二年生になったときも、心躍っているクラスメイト達を観察しながら純粋にそうおもっていただけなんだ。


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