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78. 巫女の一生

【あらすじ】予言がよく当たると評判の娘が、村の巫女に祀り上げられることに。

 その子の予言はよく当たると評判だった。予言といっても、子供のことであるから、明日はよいお天気になるとか、誰々のところの庭の柿の実を食べると腹を下すとかそんな他愛のない内容である。

 しかしそれが積み重なって更に評判となり、その子は庄屋の立派な屋敷に招き入れられ、村の巫女に祀り上げられた。その子が五つの時である。

 それからその子は、庄屋の家の離れで寝起きし、ご飯をたらふく食べ、きれいなべべを着せてもらう代わりに、村人がやってきてお伺いを立てると、神託を下すことになった。

 神託といっても、村人からのお伺いに対し、頭に浮かんだことを述べるだけである。例えば

「今年は十分な雨が降るでしょうか」

「降る」

「息子の嫁にするのは、スギサクのところのサヨとヤスケのところのキク、どちらがいいでしょうか」

「サヨには既に恋仲の男がいる。キクは最初の子と次の子を死産するが、六男一女に恵まれる」

 といった具合。これがよく当たるのだという。本人には自覚がなかったが、どうやら本当に神のお告げがあるらしいのだ。巫女の元へは、農作物や山菜、狩りの獲物などのお供え物がひっきりなしにもたらされた。

 ところが、巫女として担ぎ上げられる日々はそう長く続かなかった。血で穢れる、つまり子が産める体になると、神が寄り付かなくなるという。十二歳で神に見放されたその子は、三度目に予言が外れたのを機にお払い箱にされてしまった。

 それまで彼女の前で畳に額をこすりつけていた庄屋をはじめとした村人達の態度が一変し、彼女は身ぐるみを剥がされ、ボロ布を身に纏っただけの状態で、庄屋の家から追い出されてしまった。

 これでもお役御免となった巫女としては、まだ命を取られなかっただけ寛大な措置と言えるのだが、彼女には、この急転直下の展開がただただ理不尽としか思えなかった。その子が五歳までは貧しい農家で半ば野生児の如く過ごし、それから十二歳までは神の遣いとして下にも置かない扱いだったのだ。箸より重い物は持ったことがなく、同年代の子に当然に備わっている生活の知恵がない。彼女は、自分の生家がどこで、誰が親なのかも忘れていた。

 ボロ布を纏っていても白く清らかな体と艶やかな髪をしていたその子は、途方に暮れて彷徨い歩いていたところを、ある農民の男に半ば拉致されるような形で嫁にもらわれた。その子は粗野で汚らしい成りをした男に体をまさぐられるのを泣いて嫌がり、男の頬を平手で打ったが、その何倍もの力で殴りつけられ意識を失っている間に、事はすっかり済んでいた。

 じきにその子は男の子を身籠ったが、その子は農民の貧しい暮らしと男に殴られることを嫌って、ある日大きな腹を抱えて家を出て行った。

 身重の妻を捜す男の元に、渓谷の方へ向かって行ったという情報がもたらされた。男が息を切らして山奥の谷にたどり着くと、断崖絶壁の端に、生まれたばかりの赤子が女物の着物にくるまれて泣いていた。赤子は女の子で、着物は彼の妻のものだった。

 男は他に身寄りのない独り者で、酷く貧しかった。彼は泣き止まない赤子を谷底に放り投げると、女の着物だけを家に持ち帰った。

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