46. 化物の側の人間
【あらすじ】悲しい映画を見た帰りのバスで、カオルは運転手から「大丈夫?」と声をかけられる。
その映画はとても悲しかったので、カオルは沈んだ顔をして映画館を出た。頭のおかしい博士が死体を寄せ集めて造ったモンスター。醜くて力が強いため、馬鹿にされ恐れられる化物。カオルは化物映画を見ると、必ず化物の孤独に共感し、同情してしまう。カオルもどちらかといえば醜い部類に属し、人から笑われたり悪口を言われたりするからだ。
私もあの化物と同じ。
それがカオルを一層悲しい気持ちにさせる。今日の映画でとても残念だったのは、最前列に陣取っていた若い子達――多分中学生か高校生――が、化物が村人から酷い迫害を受けるシーンでゲラゲラ笑っていたことだ。
あの子達は、私を笑いものにする意地悪な人達と同じ。
カオルはそう思って泣きたくなった。世の中の人間を「化物の側」と「化け物を苛める側」に分けると、自分は必ず「化物の側」に属する。それがカオルには悲しかった。
バスが来たので乗り込んでお金を払うと、巨漢の運転手が
‘Are you all right?’
と訊いてきた。今にも泣きそうな情けない顔をしていたことをカオルは知る。運転手は首を傾げて心配そうにカオルを見ている。イエス、サンキューと口の中で呟いて、慌てて笑顔を作り、お釣りを受け取って空いている座席に座る。見ず知らずの人に親切にされて、カオルは少しだけ暖かい気持ちになる。しかし、ここはニュージーランドだからと思い出して、また気持ちが沈んだ。カオルは、二十一歳。こちらの人からは東洋人は若く見えるらしく、運転手は彼女のことを十二歳かそこらの子供だと思っているはずだ。
日本では泣きそうな不細工な女に親切にしてくれる人などいないし、子供の頃だって、散々な目に遭ってきた。
あの化物と同じ。
子供なら不細工でも親切にしてくれるだけ、この国はましだとカオルは思う。自分を変えようと留学してみたものの、友達もできず、日本に居る時とさして変わらない一人ぼっちの日々だけど。




