40話・夜、駐車場にて友と語らう 1
ほんの少しずつだけど体力が付いてきた。これも毎晩おばあちゃん達のウォーキングという名の強歩に付き合わされたおかげだ。それと、食生活の改善。たくさん貰った夏野菜を消費するため自炊の回数が増えた。
今まで一人の時はインスタントばかりで、面倒な時は食事を抜くこともザラだった。自分は少食だと思い込んでいたが、それは全然動いてないから腹が減らなかっただけ。ウォーキングを始めてからは食事の量が増えた。適度な運動と野菜たっぷりの食事で、身体がイチから作り直されてるような気がする。
いつものようにおばあちゃん達と歩いて解散した後、家には帰らず更に夜道を歩く。街灯の少ない田舎道から外れ、だんだんと建物が多い明るい地域へと向かう。
時間は夜九時を少し回ったくらい。
道路の反対側を見れば、閉店作業中のガソリンスタンドが目に入った。最後の客を送り出し、歩道脇に置いてあった看板を引っ込め、敷地を囲むようにロープを張る店員の姿を追う。しばらくして、スタンド内の照明が落とされたのを見計らって横断歩道を渡り、裏手にある駐車場へと向かう。
ガソリンスタンドのスタッフ専用駐車場には、配達用の小型タンクローリー車二台と見慣れた大きなバンしか停まっていない。バンのすぐ脇にあるフェンスにもたれ掛かり、目的の人物が来るのを待つ。
「……よぉ」
「おまえ、なんで職場に」
スタンドの制服である作業着姿で現れたのはショウゴだ。薄暗い駐車場で俺の姿を見つけ、ひどく驚いている。当たり前か、俺が駅前まで一人で来たことなんかないんだから。
「散歩帰りに寄ってみた」
「散歩〜? その割にゃ汗だくじゃねェか」
「日が落ちても暑いからな」
「ふーん。メシ食いに行くか?」
「いや、いい。疲れてるだろうけど少し話に付き合え」
「……? そりゃあ構わねェけど」
今日はショウゴに会うためだけに来た。
俺が倒れた日以来連絡を取り合ってなかったから、シフトに入ってるかどうかすら知らなかった。居なければ明日また来ればいいと考えていた。
だが、ショウゴは居た。
話をしろと誰かに背中を押されているようだ。