表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/56

34話・頼られていないという現実

 空手の全国大会で上位の成績を残したストーカー野郎こと須崎(すざき)。それはそれで構わないんだが、どうも再び暴走を始めたらしい。


「付きまとうのを禁止されたから、今度はミノリの両親から交際許可を得るつもりみたいで」

「はぁ〜〜???」


 なんだそりゃ。

 確かに禁止された付きまとい行為には該当しないが、外堀から埋めるようなやり方を選ぶとは。


「大会を終えてハイになってるだけかもしれないけど、もう既にミノリの家に連絡して約束を取り付けたらしいんです」


 ルミちゃんは終始険しい表情だ。

 撃退したと思っていたストーカーが懲りずに動き出したんだ。しかもこれは正攻法。付きまとい行為でない以上、外野は口を挟めない。

 今回の俺は完全に部外者である。直接ミノリちゃんから相談されたならともかく、同じく部外者のルミちゃんから話を聞いただけでは動けない。


「……なんで俺にその話すんの」


 二人きりでなく家族の前ならおかしな真似はしないだろう。ミノリちゃんに無理強いすることなく冷静に話をするというだけなら須崎の邪魔をする権利なんかない。

 そう思って尋ねると、ルミちゃんはメガネの下の目を何度も瞬かせ、平然とこう言い放った。


「ミノリのこと好きですよね?」

「えっ?」

「えっ?」


 今なんて?


「だから、プーさんはミノリのこと好」

「エッ、なんで? いやそんな、違っ」

「そんなに慌てなくても。真っ赤ですよ」

「ウッ……」


 急に気持ちを言い当てられて動揺した。

 ていうか、ルミちゃんと会ったのは今を含めてたった二回なのに、なんでバレてんの!?


「見れば分かりますよ。ミノリを助けるために必死になって駆けつけたり須崎君に立ち向かったりじゃないですか」


 そうでした。

 結局俺は殴られただけで、ミノリちゃんを助けられたのはルミちゃんが機転をきかせてくれたおかげなんだけど。


「だから、リエがプーさんと付き合ってるとか言い出した時はビックリしました。あの事件の後、急にですよ。もしかして、あの時……」

「いいから。そーゆーことにしといて」


 やはりルミちゃんは鋭い。

 どんな理由があろうと、リエが提示した条件を飲んだのは俺だ。対価として須崎に連れ去られたミノリちゃんの居場所を教えてもらい、その結果間に合った。俺から取り引きを反故にするわけにはいかない。


「昨夜ミノリから電話で相談された時、プーさんに知らせないのかって聞いたんです。でもあの子、プーさんに怪我させちゃたことにすごく責任を感じてて」

「……そっか」


 ルミちゃんには電話したのに俺には何も無しか。

 頼りにされていないという事実がものすごく寂しい。

 いや、そもそも俺とリエが付き合ってるとミノリちゃんは思っている。『友だちの彼氏』に個人的に連絡するような子じゃないもんな。


「わたしはショウゴさんから聞くまで知らなかったんですけど、プーさんは昼間外に出たらダメな体質なんですよね。ミノリはそれも気にしてました。自分のせいで無茶をさせてしまったって」

「あれは俺が勝手にやったことだから」

「ミノリはそう思ってないですよ」


 あの時、ルミちゃんは須崎の行き先を知るために俺んちに来ただけ。俺にしか教えないとリエが条件をつけたからだ。その後の行動は誰かに頼まれたワケじゃない。俺の意志だ。


 でも、これ以上関わっていいんだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 須崎のキモさ、ここに極まる!!! まずはミノリちゃんの気持ちなのに!! もう心がないのわかってて、それでもどうにか欲しいんだろうな…… おおう! 怖い!! プーさんの事は信じてるけど ミノ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ