31話・腹黒女子高生のみだらな誘惑 2
居間で寛いでいる時にリエから迫られた。
じわじわと距離を詰められて後ずさるが、背中はすぐに壁に行き当たってしまった。逃げ場のない俺を追い詰めるようにリエが身体を擦り寄せる。
「好きにしていいよ♡」
しんと静まりかえる室内とは対照的に、やかましいくらいの蝉の鳴き声が窓の外から聞こえてくる。頭の中に響くのはリエの甘美な誘い文句と蝉の大合唱。思考が邪魔されて、冷静な判断が出来ない。
このまま流されちゃえば楽なんだろうな。
──でも、違うんだよなぁ。
俺が欲しいのはコイツじゃない。
「ごめん。そういうつもりはない」
リエの両肩を掴んで引き離しながら謝る。
非常に魅力的な誘いではあった。めちゃくちゃ性格が悪いのが難点だが、リエは美人だ。スタイルもいい。こんな風に誘われて正直かなりグラッときた。断って惜しいという気持ちもある。
だが、ここで誘いに乗ってしまえば、俺は二度とミノリちゃんに顔向けできない。
断られたリエは驚いたように目を見開いた。その後は黙って俯いている。
「……、……っ」
「り、リエ?」
俯いたまま肩を震わせるリエの姿に焦りを感じた。女の子からの誘いを無下にして、プライドを傷付けてしまったのだろうか。
心配して声を掛けると、リエは両手で顔を覆い隠し、尚も身体を震わせていた。
もしかして泣いてる?
「……っくく、あはは! おっかし〜!」
「…………」
全然泣いてなかった。コイツは笑いを堪えていただけだった。パッと顔をあげるが涙ひとつ出ていない。心底おかしそうに腹を抱え、居間の床で笑い転げている。呼吸困難になるくらい爆笑し続けるリエの姿に、心がスゥッと冷めていく。さっきからパンツが丸見えだが、もう何も響かない。
「やっぱ揶揄ってたのかよ……」
「ううん、誘ったのは本気ぃ〜」
爆笑してんじゃねーか。
俺がまんまと誘いに乗っていたら、コトに及ぶ前に笑い飛ばして有耶無耶にするつもりだったたんだろう。要らん恥をかくところだった。
「俺じゃなかったら襲われてたぞ」
「別に構わないのにぃ」
「アホか。もっと考えて行動しろ」
ようやく笑いが落ち着いたのか、リエは身体を起こして座り直した。さっきまでは色っぽく見せるために振る舞っていたが、もう芝居をする必要がないからか胡座をかいている。だから、パンツ丸見えだっつーの。
「誘ってノってこなかったの、別にプーさんが初めてじゃないよ。ミノリに惚れてる男は私の誘惑に引っ掛かんないの」
「えっ」
何故そこでミノリちゃんの名前が出る?