30話・腹黒女子高生のみだらな誘惑 1
ストーカー野郎の弱みを握って撃退し、取り引きで付き合うようになってから、リエは毎日のように俺んちに入り浸っている。
俺の部屋には入れたくないから場所は一階の居間だ。そこでゴロゴロしながらテレビを見るだけ。
昼間はどこのチャンネルも再放送ばかり。その中に昔のアニメがあった。『マジカルロマンサー』が夏休みスペシャルとしてまた一話目から再放送が始まっている。
「あ、これ、ミノリが好きなやつ〜」
「ふうん、そうなんだ」
知ってるよ。彼女が俺んちに入り浸る切っ掛けになった作品だ。再放送を見てハマったと言っていた。
「なんかさー、昔流行ったアニメってちょいちょい再放送してるよねぇ。最後までやらずに、いいところでブツッと終わるの。意味わかんなーい」
確かに。再放送するなら最後までやれよと思う。この『マジカルロマンサー』も春休みに中途半端なところまで再放送していた。所詮昔のアニメは空き時間を埋めるためのツールに過ぎないんだろうが、真剣に見ている側からすれば迷惑な話だ。
テレビ画面の中では、主人公たちが中盤のボスにありったけの魔法を撃ち込んでいる場面が流れている。魔力吸収型のモンスターに許容量以上の魔力を注いでパンクさせるという割とよくある展開。でも、ここに至るまでのストーリーやキャラクターの葛藤がいいんだよな。
ミノリちゃんは原作の漫画を読みながら手に汗握っていた。今頃彼女もこの再放送を見ているのだろうか。
そんなことをぼんやり考えながらテレビを眺めていたら、突然画面が暗くなった。リエが電源を切ったからだ。
「なんで消すんだよ」
「つまんないんだもん、他のコトしよ」
「言っとくけど、外には出ねーぞ」
「分かってるって。家の中でできるコト♡」
「は?」
リモコンを放り投げ、リエがこちらに近寄ってきた。
今日の服も肌の露出が多い。手を床につき、四つん這いの体勢でこちらを見上げてくる。ヒラヒラした短いスカートが扇風機の風に煽られて揺れ動く。
思わず後ずさるが、すぐに距離を詰められた。
「──ねぇ、こーゆーの興味あるでしょ」
自分の服の胸元を引っ張り、わざと見せつけるようにして挑発してくる。イタズラっぽく笑う表情も、いつもより色っぽい。
「嘘でも付き合ってるんだから、ね?」
間違いなく俺を誘惑している。
何を考えてるんだコイツは。