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28話・カノジョ(仮)は腹黒女子高生 1

 翌日、俺んちにリエがやってきた。

 玄関を開けたら女子高生が立っているというシチュエーションなのに、どうしてこんなに嬉しくないんだろう。


「中に入っていいー?」

「やだ」

「ええ〜? 私、プーさんの『カノジョ』なんだよねぇ? それなのに家に入れてくれないの!?」

「今までだって入れたことないだろ」

「あーあー、マリ(ねえ)に『プーさんちに行く』って言って出てきたのに、すぐ帰ったら怪しまれちゃうかもしんないなぁ〜」


 リエはニヤニヤしながら俺を上目遣いに見上げてくる。ぶっちゃけコイツの言動はイラッとするだけだ。今もこうして甘えるような口調で平然と脅してくる。可愛げなど皆無だ。


 マリは今回の件に関わっていないが、ショウゴと繋がっている。リエとの交際が取り引きによるものだとマリ経由で知られたら面倒くさい。


「…………わーったよ」

「最初からそう言えばいいのにぃ」


 渋々了承した途端、リエは俺の脇をすり抜けて玄関に入り込んだ。履いていたサンダルを脱ぎ捨て、すたすたと家の中を歩き回っている。


「プーさんの部屋どこ〜?」

「オマエは居間で十分だ!」


 コイツを俺の部屋に入れたくはない。ウチでテレビが置いてあるのは一階の居間だけだ。ずっと喋って相手をするつもりはないし、適当に時間を潰したら帰ってもらおう。


「そういや体調だいじょーぶ?」

「頭は痛いし軽く吐き気もする」

「ヤバっ! マジ熱中症じゃんウケる〜」

「仮にもカノジョなら心配くらいしろよ」

「心配してるから来てあげたんじゃ〜ん」


 オマエの甲高い笑い声を聞いてると余計に頭が痛くなるんだよ。心配してるなら黙るか帰れ。

 台所の隣にある居間に通し、冷蔵庫にあったペットボトルのジュースを投げて渡す。これは昨日ショウゴが買い置きしておいてくれたものだ。


「それで、オマエの目的はなんだよ」

「目的ってなにが?」

「俺と付き合ってオマエに何の得がある? そもそも俺のこと好きでもなんでもないだろーが」

「そんなことないよぉ。ちょー好きぃ♡」

「嘘くさ……」


 こんな信用の出来ない告白があるだろうか。女子高生から好きと言われてこんなに嬉しくないとは思わなかった。


 ジロリと睨み付ける俺を気に留めることなく、リエはペットボトルに口を付けてジュースを飲んでいる。オフショルダーのトップスに薄い生地の短いスカート。薄く化粧をしているのか、唇はほんのり赤い。ペットボトルの飲み口に口紅の色が移っている。スタイルもいいし、黙っていれば美人なんだけどな。黙っていれば。


「ウチらが付き合ってるって聞いた時、ミノリ全然驚いてなかったじゃん? なんでだと思う〜?」

「なんでって……」

「実はちょっと前から『私プーさんが好きなの♡』ってミノリに言ってたんだよね〜」

「は???」


 ていうか、付き合ってると伝えたって何?

 知らねえんだけど。

 あ、俺が倒れてる間に言ったのか。

 そりゃ知ってるわけないな。


 ……でも、そうか。驚かなかったか。


 ミノリちゃんが俺んちに来なくなる前に『私が入り浸ってたら彼女作る時間ないよね』って言ってたのはエロ本を発見したからだけじゃない。リエの根回しのせいだったんだな。


「何してくれてんだよ……」

「別にいーじゃん。それとも、ミノリのほうが良かったぁ〜?」

「オマエよりはな」

「ひっっっど!!」


 その時、玄関のチャイムが鳴った。

 ショウゴが様子を見に来たんだろうか。


 そう思ってドアを開けると、そこにはミノリちゃんが立っていた。

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