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21話・何年振りかの全力疾走

 夏休みど真ん中の出校日。

 その帰りに、ミノリちゃんがストーカー野郎こと須崎(すざき)に連れ去られてしまったという。そこで、彼女の味方であるメガネ女子、ルミちゃんがリエを連れて俺に助けを求めてきた。


 スマホでミノリちゃんに電話を掛けてみるが『お掛けになった電話は電波の届かない場所にあるか電源が入っていないためかかりません』とアナウンスが流れるのみ。


「わたしも何度か電話してみたけど、電源切られてるみたいで。きっと須崎君がやったんだわ」


 マジか。

 連絡手段を断たせて連れ去るとか確信犯過ぎる。


「事情は分かったけど、なんで俺んちに?」


 そこがいまいち分からない。確かに俺はミノリちゃんを助けたいが、二人がウチに来た理由が謎だ。


「わたしはこの辺の土地勘がなくて。それに、リエが『プーさんになら二人がいる場所を教えてもいい』って言うから」


 グイッとリエを前に突き出すルミちゃん。

 彼女は隣の市からバスで通学していると以前ミノリちゃんから聞いた。土地勘がないのなら闇雲に探し回るのは無理だ。

 しかし、リエは何故そんな条件をつけたんだ?


「人の恋路を邪魔するつもりならそれなりの代償を払ってもらわなきゃ。プーさんに出来るぅ?」


 コイツ、完全にストーカー野郎とグルじゃねーか。どういうつもりだ。


 リエは唇の端をあげて笑っている。

 底意地の悪そうな、何か企んでいるような目だ。俺が睨み付けても平然とこちらを見返してくる。


「何でもするから場所を教えろ」

「……ふうん。じゃあ耳貸して」


 小さく手招きするリエに近寄ると、彼女は俺の耳に唇を寄せた。小さな声で告げられた条件を即座に飲む。


「ミノリと須崎君は河川敷にある公園だよ」

「河川敷……あそこか!」


 下駄箱の上に置いてある家の鍵と外出用のパーカー、サングラスを身に付け、家を飛び出す。ルミちゃんたちが追い掛けてくるが、待っている余裕はない。


 件の河川敷は、この町を縦断するように流れる川の下流の辺りにある。俺んちからさほど遠くない。走れば十分くらいで着く距離だ。


 お盆前の昼間。

 雲ひとつない晴天。

 容赦なく太陽が照り付ける。

 既に横っ腹が痛いが構わず走る。

 全力で走るのなんか何年振りだろう。

 晴れた日に外に出たのはいつ振りだろう。


 毎日ダラダラして何にもしてこなかった。

 ただ時間が過ぎるのを待っていた自堕落な俺の生活を照らしてくれた太陽みたいなミノリちゃん。彼女が困っているのなら絶対に助けたい。

恋愛モノの邦画ってなんで男が走るんでしょうね


…と思いながら書きました

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