12話・一週間ぶりの再会と秘密の告白
「プーさんひさしぶり。これお土産」
「あ、ありがとう」
一週間ぶりに会ったミノリちゃんは少し日焼けをしていた。
手渡された紙袋の中身は缶入りクッキーと小さなキーホルダー。どちらも可愛らしくデフォルメされたサメがモチーフとなっていた。
「なんでサメ?」
「去年沖にサメが出て海水浴場が使えなくなっちゃったから、逆にサメで町興ししようってなったらしいよ」
「ふぅん、そりゃ商魂たくましいな」
サメのキーホルダーは色違いのものを二つお揃いで買ったとか。ありがたく家の鍵に付けることにした。ミノリちゃんはスクールバッグに付けている。
いつものようにローテーブルを挟んで話すが、どうも落ち着かない。気持ちを自覚してから初めて会ったんだ。ミノリちゃんの一挙一動についつい目が向いてしまう。
「それでね……って聞いてる?」
「あ、うん、聞いてる聞いてる」
マズい、全然聞いてなかった。せっかく来てくれたのに、こんなんじゃ駄目だよな。
「見て。ずっとパラソルの下にいたのにこんなに焼けちゃった」
「わあ、かなり焼けてるね〜」
そう言いながら、彼女は半袖を少し捲って日焼けの跡を見せてきた。元々健康的な肌の色をしていたが、今は小麦色一歩手前くらいに焼けている。
「日焼け止め塗ってもこうなんだよ」
「ヒリヒリしない?」
「全っ然! 気付いたら焼けてる」
それだけ肌が強いということだ。
「いいなあプーさんは肌が白くて。私も色白が良かったな」
ミノリちゃんはローテーブル越しに俺の手を取って自分の腕と並べた。俺の生っ白い細い腕と健康的な彼女の腕。こうして比べてみると違いがよく分かる。
「……あんま良いことないよ」
「え?」
自分が情けなくて、つい弱音が漏れた。
「俺、日焼けできないんだ。日焼けする前に真っ赤になって火傷しちまう。だから昼間は外に出ない」
「火傷……」
俺の白い腕を見ながら絶句する彼女。
そりゃそうだ。こんな話をされるなんて思ってもいなかったんだろう。目を見開いて、ぽかんとしている。
「髪の毛も、染めたり脱色したわけじゃない。生まれつきこの色。俺は軽度の『色素欠乏症』なんだよね」
「……そうだったんだ」
ミノリちゃんは呆然としたまま、小さな声で呟いた。久しぶりに会えたのに、なんで俺はこんな話をしちゃったんだろう。
太陽の下に出られる彼女が羨ましかったのか。
肌の色のことを言われて腹が立ったのか。
何も出来ない自分が惨めになったのか。
彼女に隠し事をすべきじゃないと思ったのか。
どれもきっと当たっている。本当の自分を曝け出して、さっさと終わらせたくなったのかもしれない。
これ以上彼女を好きになる前に。