竜人族の王子の番として何やら私の婚約者に色目を使ったことが原因で喧嘩をしていた最中の妹と一緒に召喚されましたが、どうもお前は巻き込まれの間違いだったといわれたんですけど…。どうすればいいんですかこれ
「おお、殿下の番が、ここに召喚された!」
「めでたい、めでたい!」
何がめでたいのか? 私が目を開けると、そこには大勢の大型のトカゲたちが服を着てなにやら喜んでいました。
……唯一人型をしているのが彼らの真ん中にる青年、トカゲたちよりひときわ立派な服を着ています。
ペタンと床に座り込む私の横には妹がいました。
なんで魔法学園で二人で取っ組み合いの喧嘩をしていた最中にこんなところに来たのか? 私の妹は婚約者に男好きて浮気ばっかりしてるのがばれて婚約破棄されてから自棄になり、私や他の方の婚約者に色目を使うので、それが原因で大喧嘩してたんですが。
「お、お姉さま、召喚術を使いましたわね! 何を召喚しようとされましたの!」
「いや使ってません」
「召喚されたのはあなたたちですよお嬢さんたち」
あ、トカゲの中のおじいさんが口を開いた。
というか、トカゲというかこれ小型の竜です。でも召喚というものは人を召喚なんてできないはずですし、召喚師である私を呼び出すなんて魔法聞いたこともないです。
「あなたちはどなたです? ここはどこです?」
言葉は通じるようだ。人型の青年に向かって問いかけてみた。金髪碧眼、顔はまあ優男だがかなり良い部類のようだ。
でもまあ私の婚約者のほうがもっと良い顔ですけど。
でも妹が目をキラキラさせて見ている。あなたは男好きですしね。
私の婚約者に色目を使ったことが原因で、喧嘩をしていたんですけど……。
「私の番はどちらだじい?」
「……そうですね。その銀の髪の女性ですね。そちらの黒髪ははずれです」
というかはずれっていうなと思う。銀髪碧眼の妹と黒髪碧眼の私、確かに私のほうが地味な顔立ちではありますけど、そこがいいって婚約者も言ってくれてるんですけど!
「きゃああああ、私が当たり? ですの」
「はずれとは失礼ですわね」
喜ぶ妹、しかしはずれでも何でもいいから早く返してほしい、召喚者はどうもじいと呼ばれたトカゲ爺みたいです。私は白髭のトカゲを見ました。
「……はずれなら、私は国に返してもらえませんか? 召喚者があなたなら召還も可能ですわよね?」
「……あなたたちはどこから召喚されたのですか、わしにはわかりませぬ」
「はあ?」
「この召喚石と魔書で若の番を呼び出したのですじゃ、これはわが竜神族の代々の儀式で」
「いや召喚者が召還無理ってどんなへぼ召喚師ですのよ! 早くかえしてくださいまし!」
いやもう私とて召喚師の端くれですが、人は無理ですし、召還は自分自身はしたことなんてありませんわ。
でも喜ぶ妹を若と呼ばれた青年は立ち上がらせ、わが番よようこそとか歓迎してるし、私はみんなに無視されているし。
おおい、どうすればいいんですのよ!
私はトカゲ爺に何とかしてと怒鳴っては見たが、どうにもならないと首を振られるばかり……。そして。
「……バカばっかりだわここ」
ベラドンナ王国とここは言うらしい、そして私のいた国とはどうも同じ世界にはあるようですがね、私のいたところは魔法の国イゴール、その名前を言っても知らないと首を振られてしまいました。
どうも暗黒大陸と言われた魔物たちの楽園と言われている歴史で何度か聞いたことがある北の大陸のはしっこにある国みたいです。
若と呼ばれたのは竜神族の長の息子、つまり王子、じいと呼ばれた爺は宮廷の宰相みたいらしい。
そして番、つまり妻となるべき女性を召喚して、呼び出されたのが妹と私で、私は間違いの巻き込まれだったと。
どうも性質が似てるとかなんとか、まあ姉妹ですし。
「……ああもうどうすれば帰れるのですか!」
暗黒大陸は謎だらけ、しかもわが国から冒険した人がいたらしいですが誰も戻ってきておらず、船で十年以上かかるとかなんとか聞いたこともありました。
どかーんという大きな音が聞こえたのは王城の端っこのぼろ部屋で私がため息をついた時でした。
「リアーナ、どこだ!」
「あ、カインですわ」
「リアーナ! よかった無事だったか!」
「よくここにたどり着けましたわねカイン」
「いや、君たちがいなくなったという中庭から痕跡を追って、なんとか陣を描いてここまで転移したんだ! よかった、ひどいことはされてないかい、僕の女神!」
あー、トカゲたちが火魔法でやられてますわ。ぶすぶすという焼け焦げたにおいと音がします。
ばんと扉が勢いよくあいて、見慣れた顔が入ってきました。
ぎゅうっと私を勢いよく抱いておいおいおいと泣き出しましたわ。
「まあ、いつか迎えに来てくれるとは思ってましたが一週間とは早いですわね」
「いや一週間も君と会えない日々は寂しかったよ。トカゲたちが君を連れ去ったなんてどうしてくれようこいつら、皆殺しでいいかい?」
「いえもう別にそれはいいですわ」
にっこりと優しく笑う金髪碧眼の美青年、私の婚約者、わが国の王太子であり私の婚約者のカイン。
いや火の魔法の使い手で破壊の王子ともいわれてますが……それは。
「あ、よかったら、トカゲって焼いて食べるとおいしいらしいし、何匹か焼いてつ……」
「人間の言葉を話すトカゲなんておいしくありませんわよカイン」
火の破壊魔に私は何とか言葉を返しました。この人、いつも笑顔なんですけど、どうも私のこととなるとタガが外れるようでいつもこうなんですよね。
私といつも喧嘩をする妹にも仕返ししてやると息巻いていましたけど、なんとか止めてたのは私ですわ。
「あ、妹のユーリは回収しなくていいから、私たちだけで帰りましょう」
「そうだね、あのうるさいのがいなくなると思ったらほっとするよ」
この天才魔法使い、ねじが少し外れてまして、自分の大切なもの以外はどうでもいいという人で、そして顔より、何か自分の好みで相手を好きになるという。
なぜ私を婚約者に選んで好きになったのかよくわかりませんが、思ったことをずばっというところが好きだと言われたことはありますわ。
にっこりとまた笑うカイン、たまに笑い顔以外は見たことありますが、二人きりの時だけですわ。
周りにトカゲたちがいるので人前だとばかりにいつものようににこにこ仮面のままですわね。
「じゃあ帰るよ、リアーナ」
「はい」
呪文をカインが唱えると、こちらに召喚されたときのような白い光が私たちを包み込みました。
魔法の天才といわれた彼と比べたら私もまだまだですわ。
「これ、一週間で構築しましたの?」
「一週間もかかってしまったよごめんね」
「いえ……」
簡単な魔法じゃないのですわ。解析して、それを再現、転移まで構築するなんて、やはり天才ですわ。
カインに抱きしめられて、この天才ぶりがなんでもう少し国のために生かされないのかとため息をついてしまいましたわ。
そしてトカゲの国に置き去りにした妹と会わなくて済むと思うと少しほっとしましたわ。
あの男好き、今はあの若とやらに夢中ですが、多分後数週間もすれば飽きて、トカゲしかいなーいと絶望することでしょう。
どうも人型なのは王族であの若とやらしかいないようですし。
しかしもう二度とバカたちの召還に巻き込まれないことを祈りますわ。こんなことまたあったら面倒くさいですもの。
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