裏切り
「おいお前、それ自分で食べろよ」
首に短剣を突きつけたまま、ハンバーグを突き刺しているフォークを奪い取ると、メイドに向ける。
「私に、食べろと?」
「おいおい、年で難聴か?」
「お戯れを!」
メイドはフォークを向けた手を弾いて、彼を蹴り飛ばす。
「っく、いきなりかよ!」
なんとか受け身を取り、止まる。
「スエル様! タツヤが叛逆を!」
「[遍くは星の導き 重なれ魔力よ アクア・バレット]!」
スエルはメイドに手を向けて、水の魔弾をぶっ飛ばす。
「っ⁈ 懐柔済みか! 貴様ら! いつ気づいたァ!」
スエルの放った魔弾はメイドに命中すると、メイドの外見は溶けていき中から別人が現れる。
「残念だったな、三下!」
短剣を構えてスエルの前に立ち、叫ぶ。
「いつからですか?」
メイドから現れた明確な敵は、黒い服に黒いローブを纏っていた。
「三つだ、お前が偽物だと思った理由は。まずはお前が来た時影魔法を使った。あれは太陽がないと使えないが、最初にあった時にお前が使ったものはただの転移魔法。転移の方が影よりも楽なのに、わざわざ影魔法を使ったお前に疑問を感じた」
「それで、私が入れ替わってると?」
「二つ目。俺が最初に年増って言ったらめっちゃ怒られた。だがお前は全く気にしていなかった、人ってのは一日で変わるもんじゃないだろ?」
「そんなの……」
「ああ、違和感程度だ。だから証拠に欠けていたが……」
彼はそう言いながらスエルを指差す。
「三つ目。お前明らかに胡散臭いんだよ」
「え?」
三つ目の乱雑な理由を聞いて、スエルが耳を疑い見上げる。
「ま、とにかく、お前が黒幕って事で良いな?」
「ええ、私が貴方を殺して王女も殺せば全て終わりで良いわよ」
「そうかい」
その場を駆け、短剣を握った右手を流れる様に繰り出す。
「[天啓の命により 汝らを捉えん アース・クリエイト]」
繰り出された短剣を回避しながら、敵は部屋の中に土の壁を形成する。
「退路を断ったつもりか?」
「ええ、貴方たちのね」
「誰が逃げるか、なめんなよ」
握りしめる剣に力を込めて、敵を見定めた。
なんか間延びしたので前編と後編に分けました