第四王女
「さて、到着です」
余りにも一瞬で到着し、絶句する。
「王女様、お望みの品です」
周りを見渡すと、そこには入り口と思わしき扉があり、その前でいつの間にかメイドがローブを外し、扉の前で声を上げていた。
「そう、入って良いわよ」
扉の奥から響く声を聞き届け、メイドが扉を開ける。
「速く入るわよ」
メイドに言われ、嫌々中に入る。部屋の中は何でも屋の内装とは大きく違い、美しかった。
「お! ちゃんと依頼通りの……依頼通りの……」
部屋の奥のベッドにいた第四王女ことスエルは、後から入ってきた彼を何度も見て、
「……男だよね?」
「いえ、男も女も突き詰めれば人間ですよ」
「誰が突き詰めろって言ったのよ……」
一応聞こえないフリをしながら盗み聞きをして、思考を巡らせる。
……ああ、あの王女多分同じ年頃の友達が欲しいとか言ってたんだろうな。
「はーあ、ずっと前のことを覚えてくれてたのはうれしいけど、リュエリ、あなたってそんなことする人じゃ……いえ、何でもないわ。ごめんなさいね、貴方名前は?」
ベッドの奥にいた王女は、入り口で佇んでいる彼に声をかける。
「名前、ですか……タツヤです」
突然名前を聞かれ、反射的に答える。
「そう、タツヤって言うのね」
その時、ふと何故か王女は悲しそうな表情を見せる。
「スエル様?」
「……あはは、何でもないのよ、何でも」
スエルは取り繕うにそう言うと、部屋に入っていた二人に出ていくように促す。
「……で、追い出されたのはいいのかよ」
部屋から追い出される、隣にいるメイドに話しかける。
「そんなこと言われてもね。……それより貴方、さっきのタツヤって名前、あれ本名なの?」
逆に返されたタツヤは、少し面倒くさそうな顔をする。
「さあ、どうだろうな。だがタツヤって名前は俺が最近殺した野郎と同じ名前だ」
「やはりそんな話でしたか」
「まあな、本名なんて明かすもんじゃねえよ。にしても、年が近い女とは久々に話したが、何かむず痒くってたまらないわ」
そう言うと、メイドは少し哀れみの目線を向けてくる。
「そうですか……まあ良いです。では、とりあえずの貴方の配置は部屋の扉の守りで良いでしょう」
「は? ちょ、それは近いーー」
「これを機に年が近い人と話す特訓でもしてくださいな」
そう言い終えると、そのままメイドはその場を去る。
「……はあ、そうきたかよ……」
居心地の悪そうな顔をしながらとりあえずその場に座り込んで、扉により掛かった。