突然の大仕事
「チーム[薩摩揚げ]のメンバーライセンス三枚分だ」
「……本物か、コレを」
街の裏通り、そこで先ほど殺した三人分の冒険者協会のメンバーライセンスを渡して報酬を受け取る。
「……行ったか。はあーあ、何だかんだ言ってやっぱメンバーライセンスが一番売れるな」
裏通りを進んで事務所まで向かっていると、薄暗い路地裏にいつ貼ったのか覚えていないほど昔に貼った張り紙を見かける。
[基本的に何でもやります 無職]
「っけ、無職だとよ、フツーは嘘でも冒険者とか書くだろ」
脇を通り抜けるおっさんのそんな声を聞きながら進んでいき、コレまた路地裏に構えている事務所に着く。
「さて、ただいまっと」
一応住んでいる暗いゴミだめのような事務所に着くと、ポストを確認する。
「はあ、俺がいない間にはここに依頼を投函してもらうつもりだったんだが、どーにもなぁ」
ポストの中には数枚の紙が入っていたが、どれも冷やかしだった。
「……やっぱ職業書き直そっかな?」
などと呟きながら最後の一枚に目を通すと、上品な便箋に[無限屋さん ある人を守ってください 場所は一番古い広告の前で二十時に]と書いてあった。
「……いや二十時って、俺がコレをいつ読むかわからないだ……ろ?」
読み終わった途端、突然前触れ無く紙が燃える。
「え! ちょ!」
も、燃えやがった! 読み終わったら燃える魔法でも駆けられてんのか? この魔力反応で読んだ日を特定的な感じか。……だが、一番古い広告って……あ、アレか。
つい今さっき流し見で見た広告を思い出す。
「……行くか」
しかし、ここまで手が込んでるのは何でだ? あの燃えた紙、あえて高い紙を使ってたんだろうな。まるで、金があることを見せびらかすかのように。
……面倒な依頼だったら断ろっかな。
何て事を考えながら二十時まで待ち、広告の前で依頼者が来るのを待つ。
「意外律儀なのね」
するといつの間にか隣にいた女性に話しかけられる。
「まあな、この仕事は信頼命だ。で、用件は?」
隣にいる女性の方向は見ずに、話を進める。
「ある人を守って欲しいの」
「それは見た」
「私たちの王国の第四王女、スエル。彼女を守って……っておい!」
王女と言われたその瞬間、何も考えずにその場を無言で立ち去ろうとしたが、隣の女にギリギリで捕まる。
「なんだよ、俺はもう今日は寝るんだよ」
「まだ二十時よ! 何逃げてるのよ!」
「第四王女ってアレだろ? 十七歳くらいだろ? 年が近い女って苦手ーーっぶほ!」
鳩尾に直撃した一撃をこらえながら殴った本人を見上げる。
「なんで私とは話せるのか、し、ら?」
「そりゃ年増……じゃないです別に苦手じゃないです」
無言の圧力をこらえて、呼吸を整える。
「まあ正直な話、私があなたに依頼したのはそれなりの理由があるからなの。断られたらこっちも困るのよね」
本音を諭すように、優しく言う。
「困る、か。……そりゃ困らせるの間違いじゃないのか?」
周囲に転がる敵の気配を察知しながら、言葉を返す。
「ふん、喰えないガキね。ええ、あなたが依頼を断ったら、この話を聞いたあなたは想像通りの結果になるわよ」
「あーったあーった。受けるよ、受けりゃ良いんだろ」
「それで良いです。では明日の昼にここで」
……いや。昼って何時だよ。
問いつめようにもすでにそこには誰もいなかった。