初飛行 【月夜譚No.49】
上空から見下ろした島々は、まるで地上の星のようだ。大小様々な緑が大海の上に散らばり、輝きはしないものの、それ等を線で結べば、星座ならぬ島座が作れそうだ。
その景色に魅入られて思わず飛行機から身を乗り出すと、操縦席に座った兄に怒鳴られてしまった。少年は慌てて首を引っ込め、しかし視線は海の上に注がれたままだった。
二人乗りの小さな飛行機。それに乗るのは今日が初めてで、飛び立つ瞬間こそ怖かったが、上空を滑空している内に恐怖は好奇心と喜びに変わった。
自分の住む島を上から見ると、いつもと違う風景に見える。人や建物が米粒のように小さくなって、人々に寄り添って生きる緑の力強さを感じる。見慣れた場所のはずなのに、ゴーグル越しに見えるのは新鮮なものばかりだ。
少年のまだ幼さが残る瞳に星が宿ったように、きらきらとずっと輝き続けた。