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継承権と祝福

死刑宣告をされる日=再び宮殿に行く日がやってきました。つまり、おわかりですね?そうです。また、朝からメイドさんたちによる地獄(お支度)が始まりました。


起きて、ご飯を食べたところまでは良かった。問題はその後からだ。


まず、風呂場に連れていかれて体を隅から隅まできれーに磨かれ、オイルとマッサージ。

そしてドレス選び。急に決まったので、流石にオーダーメイドでは作れなかったらしく、我が家の女性陣はガッカリしてた。そして、あれでもないこれでもないと着せ替え人形になること30分。


ようやく決まったのが、ロングスリーブの空色のドレス。プリンセスラインのドレスは、スカート部分とトップスに金糸で織り込まれたチュールレースが施されている。胸元と腕がレースだから安心。まだ、色気もクソもないからね。肌出しても誰も喜ばないし。


ドレスを来た後はヘアメイクと小物選び。髪はサイドアップにして、寒色と白でまとめた花や真珠で飾る。〝しっかり〟とメイクを施された後はネックレスとイヤリング選び…と思ったらそれは既に決まっていた。ナディアが持ってきたのはパラグラントの象徴である水宝玉(アクアマリン)のシンプルなもの。


何故かと聞くと、4大公爵家は大切な儀式や式典の時はそれぞれの象徴である宝石を身につけるらしい。女性なら小物、男性ならブローチに。


この水宝玉(アクアマリン)は、お父様が取り寄せた最も質の良い水宝玉(アクアマリン)を使って作られたものらしい。確かに透き通っててすごく綺麗だ。


それを身につけ、準備は完了!メイドさん達も満足そうで何よりです。はぁ、ようやく終わった……とりあえず寝たい。今願望を言うなら寝たい。30分でいいから寝かして。子供には睡眠が1番大切なのよ!


まぁ、その願いが許されるはずもなく。ドナドナしながら玄関へと向かうと、すでに正装のお父様とお母様が待っていた。



「ルーナっ、なんて可愛いんだ!!まるで精霊、いや、女神のような美しさと愛らしさじゃないか!!さすが私の愛娘だ!!」


「えぇ、本当に可愛らしいわ」



私を見るやいなや、デレ顔で私を抱きしめる今日も安定の親バカ全開な2人。



『おかーしゃまもきれーなの!』



これはホント。藤色のシンプルだけど品のあるドレスを纏い、髪はアップにさせたお母様はさすが元王女なだけあってこれぞ貴婦人の鏡という雰囲気を醸し出している。その隣のお父様もビシッと正装が決まっていて、いつも以上にかっこいい。図に乗るといけないから言わないけどね。



「それじゃあ、行こうか。可愛いお姫様」




宮殿に着くと、謁見の間という場所に通された。天空の間と同じくらいか、それより少し広いくらい。中に入ると、思っていたより人が多くて、思わずお母様のドレスを掴んでしまった。



「怖がらなくても大丈夫よ」


「そうだぞ、ルーナ。もし、嫌なことがあっても帰ればいいだけだからな」



いや、それはまずいだろ。なんてことないように言ってるけど、皇帝陛下からのお呼び出しだからね?私にはそんなことできる勇気ないから。チキンだもん。



ということで、さすがに帰るわけにもいかないし、パラグラント家に泥を塗るわけにも行かないので、お母様から手を離して、目の前の階段まで歩く。


階段の1番上には皇帝陛下と皇妃陛下が、その一段下にはテオお兄様と同い年くらいのイケメンと赤褐色の髪をして眠たそうにしている少年、あと、ワイルド系のイケおじが座っていた。下には偉そうな人達がいっぱいいる。


あと、陛下の足元に虎みたいなもふもふがいるんだけど!!イケメンの隣には氷を纏ったでっかい鳥もいるし!!ぜひお近付きになりたい!!


どうやったらお近付きになれるかと考えつつ、気力と根性で階段下まで行き、家臣の礼をとる。



「よく来てくれた、パラグラント公。楽にしてくれ」


「ありがとうございます」



許しが出た。これは3歳児にはキツすぎる。


普通なら、そのまま背筋を伸ばした状態で挨拶するけど、最敬礼のカーテシーは両手でスカートの1部を持って、上体を曲げ、深くお辞儀する形を取るから、もう足がプルプルで限界に近い。家に帰ったら、もっと練習しよう。それがいい。



「さっそくだが、今日呼んだのは他でもない。そなたの娘であり私の従姪であるルーナシアの帝位継承権についてだ」



さっそくだな。当たり前か。このために来たんだもんね。あー、うちに帰りたい。帝位継承権とかいらないので、今すぐにうちに帰っていいですか?別に必要ないし。



「知っての通り、我が国での帝位継承条件は紫水晶(アメジスト)の瞳と防御の魔法を保持していること。ルーナシアは私の従姪であり、紫水晶(アメジスト)の瞳を持っている。そして、先日の事故で防御の魔法が使えることが明らかになった。よって、ルーナシアには帝位継承権第4位の地位を与えることとする」


『ありがとうございましゅ』



全力で愛想を振りまきながら、もう一度礼をとる。顔を上げると、何故か手招きをされる。



これって行っていいの?行かない方が失礼?



両脇の2人を見ると、「とりあえず行ってこい」みたいな顔をされた。困惑してるみたいだから2人も聞いてなかったのね。


階段を転ばないようにゆっくり上り、ようやく1番上にたどり着いた。と同時に、陛下の膝の上に横抱きにされた。



「赤子の時に何度かあったことがあるが、ルーナからしたら初めてか?この国の皇帝のクレマン・ロワ・エスパラディエだ。具合の方は大丈夫か?」


『あい!たしゅけてくれて、ありがとうございました』


「いや、守ったのはルーナ自身だ。私は防御の魔法を解く手伝いをしただけだしな。それに、事故のことはこちらのミスだ。ルーナに怪我がなくて良かった」



そう言いながら頭を撫でてくれる陛下の手は優しくて、お父様みたいだった。陛下に向かって微笑むと、ギューッと抱きしめられる。


くるしー。けど、甘やかしてくれる人大好きだからいいや!…………もうダメニート化してんな。やばい。何とかしなきゃ。



「陛下、1人だけずるいですわ。私にも抱きしめさせてくださいな」



拗ねたように両手を差し出してくる皇妃様。さすがに無視することもできないので、そのまま皇妃様の膝の上へ。



間近で見ると、ほんとに綺麗な人なのだ。遠目から見ても輝いて見えるけど、間近で見ると冗談抜きで女神様みたいに見える。


艶のあるローズピンクの髪と柔らかい紅玉(ルビー)の瞳。雪のように真っ白な柔肌に薔薇のような紅唇。そして、世の中の女性たちが羨むようなこの体型。出るとこ出て、出なくていいところはキュッと締まってる。これで、ほんとに子供2人産んだの!?羨ましい!



『はじめまして、るーなしあ・レあ・ぱらぐらんとです』


「ふふ、初めまして。聞いていた通り、本当に可愛らしいわ。わたくしはアネット・レンヌ・エスパラディエ。ルーナと呼んでもいいかしら?」


『あい!』


「わたくしのことはアネットと呼んでね」



無理です。皇妃様を名前で呼ぶなんて、そんなことできません。無理です。アウトでーす。



「大丈夫よ。ルーナは陛下の従姪なのだから、わたくしにとっても可愛い従姪だもの」



そういう問題じゃないんです!貴族が皇妃様を名前で呼んだらアウトでしょ!!だから、そんなキラキラした目で見ないで!無理なものは無理なの!あぁ、そんな残念そうな顔しないで!もういい!わかった!女は度胸だ!



『あ、あねっとおばしゃま……』



小さな声で言うと、ギューッと抱きしめられた。陛下とは別の意味で苦しい……そして、何度も言うが羨ましい。



「なら、私はクレマン伯父様だな」


『くりぇまんおじしゃま……?』


「あぁ、そうだ」



よく出来ましたと頭を撫でられる。神様の能力めっちゃ働いてんな。両上皇陛下と両陛下を名前で呼べる幼児とか私くらいだぞ。



「ガゥ」


『へ?』



「自分を忘れるな」と言わんばかりに頭をすりすりと擦り付けてくるもふもふくん。


何これ何これ何これ何これ!!めちゃくちゃ可愛いんだけど!え、何これ!?



そっと頭を撫でてあげると、ゴロゴロと喉を鳴らすもふもふ。可愛すぎる。猫みたい。実際は虎だけど。猫科って面では間違ってないよね。あぁ~、可愛い!!



「ピーッ!」


『わっ!』



鳴き声とともに目の前が水色1色になった。



次はなんだ!?



上から下へよく見ると、その正体はもふもふくんの頭の上に立つ氷を纏った大きな鳥。さっきイケメンの隣にいた子だ。ピーッって鳴くのか。可愛いな。



「ガゥ、ガゥ!」


「ピーッ、ピーッ!」



すると、いきなり喧嘩をし始めた2匹。周りと私はおろおろしてるのに、クレマン伯父様とイケメン、あとイケおじは爆笑してる。なぜに?



そんなカオスになりかけてる場。だんだん寒くなってきたと思ったら、風は吹いているわ、冷気は漂ってるわで、大惨事になりそうな予感。これはまずい!



『ふたりともすとっぷなの!』



すると、ピタッと止まった風と冷気。



うぅー、寒かった。だんだん暖かくなってきたとはいえ、さすがに近くでやられたら風邪ひくわ。我はか弱い幼児ぞ。



全身鳥肌が立っている身体を暖めようと、失礼は承知でアネット伯母様にピタッとくっつく。すると、嬉しそうに抱きしめられる。あったかー。ぬくいわー。



アネット伯母様の腕の中が心地よくて、ぬくぬくする。だから、他のみんなが驚いてこっちをガン見しているのに気が付かなかった。



「ピー.......」


「ガゥ……」



さっきの勢いはどうしたってくらいショボーンとした2匹。そもそも何があった。



「フェランはせっかくルーナに可愛がってもらってたのに、それをアデールに邪魔されて怒ったようだ」



フェラン?アデール?この子達の名前だろうか?そもそもこの可愛い生き物たちはなんだ!



『くりぇまんおじしゃま、このこたちはなんですか?』


「そうか。ルーナはまだ知らないのか。この子達は神獣(しんじゅう)だ。精霊術を使う獣のことを指す。神の使いとも言われているな」


『しんじゅう.......』


「あぁ。神獣(しんじゅう)は本来であれば契約した主のみに懐くんだが.......」



苦笑しながら言葉を切るクレマン伯父様。



うん、言いたい事はわかるよ。本来はありえないはずのことが目の前で起きたわけだし。ガッツリ懐かれたからね。



「まぁ、ルーナなら納得だな」



どうやら私が愛し子なのを知っていたらしい。しょうがないって顔をされた。解せないけど、もふもふに触れるのならしょうがない。



「この子が私の契約神獣のフェラン。風や雷を操る天虎(てんこ)だ。こっちがアデール。息子レオルドの契約神獣。氷凰(ひょうおう)といって、水を操り、あらゆる物質を凍らせることができる。炎を纏った炎鳳(えんほう)の対になる存在だ。他にもオースティンの銀狼(ぎんろう)や竜などもいるぞ」



他にも色々といるらしい。そして、どうやらあのイケおじはオースティンと言うらしい。簡単に気を許してしまいそうな晴れやかな笑顔で手を振られ「オースティン叔父さんでいいよー」と言われた。くっ、イケメンは得だな!



「父上、母上、叔父上もそのくらいに。アデールも戻ってこい。ルーナシアに与えるものがあるのでしょう?」



一段下から呆れたような声がした。声の主はレオルド皇太子。うん、2人の遺伝子をしっかりと受け継いでるのが見て取れる容姿ですな。でも、どちらかと言うとクレマン伯父様似かな。弟の方はアネット伯母様を男にした感じ。つまりはどちらも美形。


呼ばれたアデールは撫でろと体を寄せてきたので、しっかり撫でてあげると満足げに元の場所へと戻っていった。



「レオルドの言う通り、ルーナに2つ与えるものがあるんだ」


『あたえるもの?』


「まず、1つはお印だな」



あれか!おばあ様が言ってたやつか!確か、身の回りのものにつけたり、手紙を出す時に用いるやつだよね?その人を表すシンボルマークみたいなの。



「ルーナには【ミュゲ】をお印として与えることとする」


『みゅげ?』


「あぁ。春や人生の再来を象徴するお守りという意味らしい。〝幸福の再来〟や〝純粋〟という花言葉があるな」


「ミュゲは幸福の象徴。幸福の女神でもあるレアニシスの花。だから、ルーナにはピッタリだと思ったの」



ミュゲって鈴蘭だよね。そんな可愛らしい花をお印に貰っていいのか?今の私は外見は確かに可愛いだろうけど、中身はただのアラサーだよ?女神様のようなアネット伯母様の方が合うと思います。



「それと、もう1つは名前を」


「これはわたくしと陛下からの贈り物なの」



つまり、私的な贈り物ってことか?いいのか、これ。


周りもザワザワしてるし、普通はありえないってことでしょ?名前は一生残るもんね。ほら、お父様とお母様も知らなかったみたいで、慌てて止めようとしてるし。で、陛下に先手を打たれると。私、面倒なこと嫌いだから、空気化してていい?確信持って言うけど、このあと絶対にめんどくさいことになると思うんだよね。



「【エリアーヌ】

太陽の娘という意味だ。天真爛漫で、周りを明るく照らすルーナにはピッタリの名前だろう」


「陛下と2人でギリギリまでずっと考えていたの。昨日の夜まで考えて考えて、今朝ようやくこの名前に決めたのよ。陛下ったら、下手な名前はルーナに合わないって、政務そっちのけで図書室に篭っていたの」


「アネット.......」


「ふふふ、本当のことですもの」



痛いところを突かれたような伯父様に、してやったりの伯母様。うちの両親もかなり仲がいいけど、2人もラブラブなのがよくわかる。



「ま、まぁ、とにかく。【ルーナシア・レアナ・エリアーヌ・パラグラント】気に入ってくれたか?」


『あい!ありがとうございましゅ!』


「気に入ってくれたなら何よりだ」


「えぇ。わたくしたちも娘の名前を考えているようでとても楽しかったわ」



2人とも嬉しそうだし、こちらとしても何よりです!


ただ、元日本人の感覚からすると、めちゃくちゃ長い名前だなぁって思う。西洋系ファンタジーとはいえ、周りにもここまで長い人はいないし。でも、2人がくれた名前だから大切にしよう。バチが当たるしね!口だけじゃなくて、この世界ではマジでバチが当たるらしいから。



『たいせつにしましゅ!』



満面の笑みを2人に向けると、またいい子いい子された。



「陛下、恐れながら、意見を述べてもよろしいでしょうか」


「ルシュール伯か。聞こう」



品の良いダンディおじ様が一歩前に出て、片膝をついた。



「ありがとうございます。ルーナシア様は正式に帝位継承者として認められました故、お印を与えるのは当然。ですが、名を与えるのはいかがなものかと。帝位継承者とはいえ、ルーナシア様は貴族。両陛下から名を賜ったとなれば、下手に勘ぐる者も出てきましょう」


「例えば?」


「陛下はルーナシア様を帝位につけるつもりではないか。もしくは、皇太子妃にするつもりではないか、と」



どの世界においても〝名前〟と言うものは重要なものだ。日本でも、『名前はこの世で1番短い呪』であると昔から言われていた。名前は目に見えないものですら〝名〟という呪で縛ることができるのだと、誰もが知っている有名な某陰陽師も言っていたほどだ。


この世界においてそれは変わらない。1つ1つの名前には神々や精霊の力が宿るとされ、違えることは許されない。違えればどうなるかは聞いたことがないのでわからないが、絶対にするなと周りから口酸っぱく言われたので、なんかやばいことになるのであろう。まぁ、それゆえにどんな極悪人でもしっかり本名を名乗るらしい。名前の威力すごいな。


話がズレた。


ダンディおじさまが言わんことも理解出来る。名前は一生の贈り物であり、〝枷〟でもある。名は体を表すように、その人を人生を左右する。言霊と同じようなものだろう。だから、〝名付ける〟ということは重要な儀式と何ら変わりない。


国のトップが、1貴族の娘に名前を授けるということは、はたから見たらそういう事なのだ。



日本人の時はそんなに意識したこと無かったけど、この世界ではある意味、国政より重要なことだしね。あの神様、そんなに名前にこだわりがあるのか?違えたらどうなるのかが知りたいお年頃。



「ルシュール伯よ。そなたが言いたいこともわかる」



その声にハッとした。思考にひたっていたらしい。



「この世界では〝名付け〟は儀式。私も皇妃もその重要性を理解した上でルーナに名を授けたのだ」


「では」


「ルーナは我が国の筆頭貴族の娘。皇族に嫁ぐことはおかしなことでは無い。だが、すでに皇太子はいる。我が息子 レオルドがな」



名前を出してまで強く言い放った伯父様。皇太子を変えることはありえないと宣言したのと同じだ。つまりは、私が皇太子妃になる可能性はあれど、皇太女の座につくことは無いということ。



「名を授けたのは、貴族で唯一、帝位継承権保持者となったルーナへの贈り物。帝位継承権保持者として立派に育ってほしいとの願いを込めて授けたまで。そなたたちが勘ぐるようなことはない」



伯父様がこうまで言っているのだから、バカみたいな行動を起こすやつはいないはず!よほどのバカ以外は。



「しかし、両陛下がまるで実の娘のように名付けられたのですからなぁ」



つまり、こういうバカのこととかね。終わりそうだったんだから、余計なこと言うなよ!おデブ!ハゲ!マジでてっぺんハゲてるからな!つるぴっかだぞ!古典的な悪役ってこいつのことかって外見してるし!もう悪い事考えてますよーって顔してる!嫌!無理!何食べたらそんなタヌキ腹になるのよ!絶対私服肥やしてんだろ!偏見だけどさ!



「マントノン伯。陛下がこう言われてるのだから、我々に異論はあるまい。それとも、そなたは異論があるとでも言うのか?」



ダンディおじさまも少し苛立たしげに言う。



「勘違いしないでいただきたいな、ルシュール伯。陛下がそのように仰せであれば、私に異論などあるわけがない。しかし、ルーナは月、レアはレアニシス、つまり豊穣の女神。そして、両陛下より賜ったエリアーヌは太陽の娘。まさに神々に祝福されて産まれてきたような見目麗しいご令嬢であらせられますからなぁ」



舐めるような目付きで見てくるつるっぱげ。



ひぃっ!!めちゃめちゃはっきり言うけど気持ち悪い!!私、今3歳よ!?なんなの、あいつ。幼児趣味(ロリコン)なのか!?まだ喋りだして間もないような幼児にあんな目をしてくるってやばくない!?まだメリハリもでてないような色気もクソもない幼児なのよ!?怖いんだけど!!!!助けて!!



前世は平々凡々だったので、あんな目付きで見られるのは初めてで、背筋がゾワゾワっ!てなる。とにかくあの目線から逃れようとアネット伯母様に抱きついて見ないようにする。


私が怖がっているのに気がついたのか、アネット伯母様はぎゅっと抱きしめて、小声で「大丈夫よ」と言ってよしよししてくれた。



「マントノン伯よ。ルーナが神々に祝福されているのは分からぬ。しかし、精霊に祝福されているのは間違いない。見てみよ」



クレマンが指す方を見ると、窓の外には大量なる精霊が中を覗いてた。怖いな、おい。


窓が開けられると、その大量なる精霊の山が押し寄せてくる。


次の瞬間、辺り一面に花びらが舞い上がり、金色の粒子がキラキラと舞い落ちた。



「これは……っ!」


「まさか祝福!?」



全員が目を見開いて、上を見つめる。



「ルーナ、おめでとー!」

「ルーナ、あげるー」

「おめでとー」

「はい、どうぞー」

「ルーナ、あそぼー」

「クッキー食べたいなー」

「はい、あげるー」


『あ、ありあと』



そんな周りの様子も気にせず、前回同様、たくさんの花を持ってきて、私の頭に飾る精霊たち。 ちゃっかり要望も伝えてきてるし。


ごめん、今は遊ぶこともクッキーあげることもできないわ。家に帰ってたらね。



「あのねー、ルーナ」

「警告しにきたのー」

「警告ー」


『けいこく?』



なんの警告?私に向けて?調子乗んなってか?


と思って聞いたら違うらしい。



「ここにいる全員に警告ー」



その声に、呆然と上に気を取られていた全員がハッとして精霊を見つめた。



「「その1!」」

「「「「「「いち~」」」」」」

「「ルーナを傷つけたらダメーなの!」」

「「「「「「ダメー」」」」」」


「「その2!」」

「「「「「「にぃ~」」」」」」

「「傷つけたら死あるのみ~」」

「「「「「「死あるのみ~」」」」」」



おいおい。えらく重いな。でも、言い方と姿が可愛すぎて危機感をまったく感じないんだよな。



「「その3!」」

「「「「「「さ~ん」」」」」」

「「ルーナを無視したらダメーなの!」」

「「「「「「ダメー」」」」」」



「ルーナを無視とはどういうことだ?」



イケおじ改めオースティン叔父さんが口を挟む。



「ルーナの意思を無視したらダメーってことー」

「無視したら」

「「「「「死あるのみ~」」」」」


「そ、そうか」


「「その4!」」

「「「「「「よーん」」」」」」

「「ルーナを虐めたら消えてもらいまーす!」」

「「「「「「消えてもらいまーす」」」」」」


「ま、待ってくれ!」



黙っていたクレマン伯父様が、たまらず青ざめた顔で待ったをかける。



「消えてもらうということはどういうことだろうか」



「そのまんまだよー」

「消えるの」

「そー」

「魂ごとこの世界とおさらばするのー」

「魂は消えて、巡ってこれないの」

「バイバイするんだよ」

「二度と戻ってこれないの」

「オーリーン様が怒っちゃうから」



可愛い顔してどエライこと言ってんな。精霊が言ってるのって、つまりあれでしょ?日本で言うところの輪廻転生ってやつ。死んだら、魂がまた別の生命として生まれるっていう。その世界にもあるんだ。そういう概念。


で、精霊がいうオーリーン様は確か、再生を司る女神様で、その神様を怒らせると魂が消滅すると言われている。つまり、輪廻転生ができないのだ。


みんなを見てみると、青い顔をしている人がほとんどで、通り越して真っ白になってる奴もいる。あ、1人倒れた。



「「その5!」」

「「「「「「ごー」」」」」」



まだあるのかと全員が顔を引きつらせる。そして、次の一言で全員が固まった。



「「ルーナを泣かせたら、神様たちが怒って、天罰下しちゃう!」」


「「「「「「下しちゃ~う」」」」」」



『え?』



罪、重くないですか?いくらなんでも。神様たちってどの神様たち?あの神?この世界って神様いっぱいいるからわからないんだけど、まさか全員とか言わないよね?それ以前にあの神以外に会ったこととかないし。



「か、神様たちって、どの.......」



お父様が恐る恐る聞く。みんなも引き腰になりながら頷いている。



「全員だよー」

「「「「「「全員ー」」」」」」



今日の夕飯はカレーですよー、的なノリでとんでもない事言ってくれた精霊たち。


あ、また2.3人ぶっ倒れた。泡吹いてるし。大丈夫かな。


聞いた本人であるお父様も倒れそうだ。むしろ、倒れるものなら倒れたいと思ってるに違いない。お母様は意識があちらの方へと行っているので、すでに回収済み。



『てんばつって.......』


「火攻めだよー」

「あと水攻めー」

「違うよ。天変地異だよ!」

「同じじゃない?」

「そこまで詳しく言われなかったからわからないのー」

「聞いてくる?」


『い、いわれたってだれに……』



聞いてはいけない気がする。でも、聞かなきゃいけない気もする。むしろ、聞かなきゃ後悔するに違いない。



「ディオース様だよー」

「あと、レアニシス様ー」

「ルーナ様やレイアーナ様も言ってたよ」

「シャルカローネ様も面白そうだからって」

「みーんな」

「人の子にそう伝えるようにって、わざわざ降りてきてくれたの」




「「「神々の愛し子には手を出すなって」」」


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