表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

登城

はーい!みなさん、ルーナです。今日私がどこに行くか分かります?そうです!!宮殿ですよ、宮殿!!


なんでって?


なんか、おばあ様のお兄様とそのお嫁さんが私に会いたいって呼んでるらしいから行くよーってことになったんだって!あはっ!



……じゃないよ!!



驚きでテンションおかしくなってるけど、おばあ様のお兄様ってことは、つまり上皇陛下で私の大伯父にあたる人でしょ!?んで、そのお嫁さんってことは皇太后さまでしょ!?おばあ様に会いたいなら話はわかるけど、なんで私!?お兄さま達だっているじゃん!!なんで〝私〟を名指しで指名してくるわけ!?嫌だよ!行きたくないよ!めんどくさいじゃん!!付き添いでおばあ様とお母さまの同伴が許されているとはいえ、行きたくない!



という内心を必死で押えて、現在着飾らされています。まだ3歳の幼児とはいえ、宮殿へ出向くのだからそれなりの格好をしなくてはいけないらしく、朝からメイドさん達が大慌てで支度をしています。


え、私?私は何もしませんよ。ただ人形のようにじーーっとしているだけです。あ、化粧は嫌!こんなすっべすべでもっちもちの柔肌に化粧なんてしたら肌がダメになる!せっかくの美貌を手に入れたんだもん。手塩にかけて磨いていくわよ!!……侍女たちが!!


で、途方もない時間が過ぎたように感じられた頃。ようやく満足したのか、侍女達によるじごk……じゃなくて、着替えが終わった。



「よくお似合いですよ、ルーナ様」


「ほんとうにお綺麗ですわ!まさに女神レアニシスとはこのことをいうのね」


「どちらかと言うと精霊ではないかしら?まだルーナ様は小さくていらっしゃるし」


「それにしてもまだ幼いのに、この美しさ。将来が楽しみですわね!」


『あぅ……』



ツカレマシタ……もう王宮行くのやめませんか?眠いっす。幼児にはこれはきついです。それと、そこ!女神様や精霊は言い過ぎだから!!レアニシスって、あのドジな神様の奥さんでしょ?きっと大変だろうな、色々と。



「ルーナ様、ご覧になられてみては?」



ナディアは他のメイドに命令して、姿見を持ってきてくれる。


あー、うん。これは自分で言うのもなんだけど、めちゃくちゃ似合ってる。



薄紫のプリンセスラインのドレスなんだけど、胸元、腰、裾に白・黄色・ピンクの花が沢山ついていて、いくつかスカート部分にあそばせている。


プラチナブロンドの髪は、元々ふわふわしているので、そのままハーフアップにしてドレスと同じ色の花が散りばめられている。


胸元と耳は、これまた花を模したネックレスとイヤリングで飾られている。


全体的にパステルカラーでまとめられた意匠は、ルーナシアがもつ儚い印象とマッチしていて、女神はともかく花の精霊のようなという印象を持つだろう。しかし、私には他に思うことがある。


これ、ラ〇〇〇ェルじゃね?


ドレスといい、地毛といい、そっくりよ。三つ編みにしてもっとお花飾れば完璧だよ!!〇ィズ〇ープリンセスの中ではシ〇〇レラが1番好きなんだけど、ラ〇〇〇ツェルも可愛くて好きなんだよねー。



「ルーナ、きれい」

「ルーナ、かわいい!」

「おはなー」

「フローラ様みたい」



今日も大量なる精霊の山。さすがに押しつぶされてはないけど、至る所にくっついてる。



『ふろーらさまって?』


「お花の高位精霊様だよー」

「とってもきれいなのー」

「きれー」

「ルーナみたいだよー」


『そうなの』



初めて聞く名前だ。でも、高位精霊様と同じにしたら失礼じゃね?人と精霊じゃ、圧倒的な差があるからね。いくら、ルーナシアが美人でも精霊や神様には叶わないよ。



まぁ、その話は置いといて。用意ができたので、早速馬車に乗って王宮にレッツラゴー。としようとしたら、おばあ様とお母様が私を見てキャーキャー騒ぎ始め、それを聞いたお父様とベルお姉様たちが集まってきて、またキャーキャー騒ぎ始めた。結局、出発することが出来たのはそれから10分が経ってからだった。はぁー、疲れた。



パラグラント家から宮殿まではそう遠くはなく、20分くらいで着いた。


フランスのシャンボール城に似たお城はとにかく大きくてほんとに綺麗。思わず、「きれい…」と口にしてしまうほど。



「ふふふ、そうでしょう?このお城は大陸にある建物の中で最も美しいといわれているのよ。外観だけでなく、中もとても綺麗なの。後で案内してあげるわね。温室も綺麗よ」



その言葉におばあ様がこの国の元皇女なのを思い出した。


おばあ様、おじい様に嫁ぐまでここで暮らしていたんだ。こんなに広くて、迷子にならなかったのかな?掃除するにも一苦労しそう。一体全体を磨くのにどのくらいの時間を費やすことやら。


どうしようも無いことを考えている間に、馬車は門を通り過ぎていく。


検査的なのはいいのか?と聞くと、馬車にパラグラント家の紋章が着いているので、もはや検査とか必要なし。顔パスならぬ紋パスらしい。さすが筆頭貴族。


着いてまず中に入ると、ズラっと並んだメイドさんと執事さんのお出迎えー。



「お帰りなさいませ、ラティシア様」


「えぇ。久しぶりね、セバス。元気そうでなによりよ」


「お気遣いいただき感謝いたします。ラティシア様もお元気そうで」



親しげにおばあ様と喋っている老紳士。名は体を表すってこの事か!と思うほど、Theセバスチャンって感じなの!理想の執事像よ!これ!語彙力無さすぎてあれだけど、分かる!?伝わってる!?


1人で興奮していると、セバスチャンがふとこちらを見て、目を開いた。そして次の瞬間、優しく、というかおじい様みたいな笑みを浮かべた。



「ルチアーナ夫人、ご機嫌麗しく。こちらのお嬢様が例の……」


「えぇ、娘のルーナシアよ。ルーナ、挨拶なさい」



そう背を押される。


いや、押さないで!緊張しまくってるから!挨拶だって、ほぼ付け焼き刃だから上手にできるかわからんし!!



ということも出来ず、前に出る。もちろんしっかり背筋を伸ばして。これでも筆頭貴族の令嬢ですから。家に恥じかかせるようなマネはしませんよ。そこはちゃんとわかってますよ。嫌なだけで。



今日のために必死になって練習を重ねたカーテシーを披露する。



「はじめまちて。ぱらぐらんとこうしゃくくれーる・ぱらぐらんとのじじょ、るーなしあ・れあ・ぱりゃぐらんとともうしましゅ」



噛んだけど、カーテシーはなかなか様になって……るはず!大丈夫!多分!



「ほっほっほっ、これはご丁寧にありがとございます。執事長のセバスチャン・ルメールと申します。ルーナシア様のお噂は宮殿にも届いております。お会いできるのを一同心待ちにしておりました」



片手で私の手を取り、片手を胸にあてて深々と礼をするセバスチャン。さすがです。様になってます。だけど、おじい様やお父様と同じようなデレデレとしたその顔が惜しい!


それより、噂ってなんだ!噂って!変な噂じゃないだろうな!誰か教えて!!



「お聞きしていた通り、本当にお美しい姫君であらせられますな。紫水晶の瞳にプラチナブロンドの髪。ラティシア様にそっくりでございます。こんなにたくさんの精霊にも愛されて……将来が楽しみですな!」


「そうでしょう!産まれたばかりのこの子の目と髪を見た瞬間、本当に嬉しかったわ!性格も素直で愛らしくて……」


「ほんに羨ましい限りです。ルーナシア様、どうかわたくしのことはじいじとお呼びくださいませ」


「あら、セバス。王宮の執事長たるあなたがじいじとは」


「いえ、ラティシア様!このような愛らしいお子にじいじといわれた暁には、嬉しくて涙が出そうですぞ!仕事なんてドンと来いです!さぁ、ルーナシア様!」


『え、えっと、.......じいじ?』



戸惑いながらちょこんと首を傾げて言う。


あ、目がキラキラしてる。おじい様やお父様に似てる。あと、おばあ様とお姉様。というよりみんな。なんか親しみわくな、この人。


だけど、周りみて?みんな苦笑してるから。目を点にしてる人までいるし。それに、みんな仕事沢山あるでしょ。早く返してあげなきゃ。上皇さまと皇太后さまも待ってるんでしょ?待たせたらまずいよ。皇帝並に待たせたらいけない人たちだからね。



『じいじ』


「はい。なんでしょうか」


『じょうこうさまとこうたいごうさまにおあいしなくていいの?』



それにみんなハッとしたように動き始めた。



「そうでしたな。御三方、こちらに。上皇様と皇太后さまは温室でお待ちでございます」


「温室も久しぶりだわ。この季節はバラが見頃なのよ。それからピオニーも。きっとルーナちゃんも気に入るわ」


「バラはお義母さまのお印でもありますわね」


「えぇ」


『おしるしってなぁに?』


「皇族や帝位継承権保持者にはその人を表すシンボルマークがあるの。それがお印。お花だったり樹木だったりするのよ」



なるほど。日本の皇族の方々にもあったやつとあのお印と同じやつか。



「もしかしたら、ルーナちゃんにも作られるかもしれないわね」


「この子のためを思えば、そうでない方がいいのでしょうけど」


「そうよね。でも、こればかりはしょうがないわ」



ん?ん?ちょっと待って。その話の流れで行くと、私もお印をもらうような立場になりかけてるってこと?え、なんで?私、皇族じゃないよ?筆頭とはいえ貴族だよ?帝位継承権も持ってないよ?どゆこと?



『おかーしゃま。るーなもおしるしもらうの?』


「もしかしたら、そうなるかもしれないわ」


『どーして?るーな、こうぞくじゃないよ?』



マジ純粋な疑問。今まで気にしたことなかったけど帝位継承権ってどういう基準で順位付けられるの?日本は男子皇族だけだったけど、この世界の基準とか知らないし。女性もありなの?え、やだよ。そんなの欲しくないんだけど。平和万歳!ビバ平和!



「この国の帝位継承条件はね、皇族の血筋であることはもちろん、皇族特有の紫水晶の瞳を持つことと防御の魔法が使えることが条件とされているの。ルーナちゃんは元皇女のわたくしの血を引いているし、紫水晶の瞳を持っているわ。だけど、魔法に関してはまだわからないから帝位継承者候補というところかしら。もちろん、現れた時点で継承権を得ることになるけれど」


「現在の帝位継承権保持者は3名おられます。皇太子のレオルド殿下。第2皇子のライリー殿下。そして、皇弟のオースティン殿下。ルーナシア様に防御の魔法が現れましたら、帝位継承権第4位となられますな」


「もし、そうなったら、ルーナは貴族で唯一の帝位継承権持ちということになるのよ」


『ゆいいつ……』



顔の筋肉がピクピクって動くのがわかる。



絶対やだ。そんな面倒な地位は欲しくない!筆頭貴族と言うだけでなかなかの地位にいるのに、ここに帝位継承者という肩書きまで加わったらそれこそ大変なことになるじゃん!チキンな私にはそんな大それた肩書きはいりません!平和が1番!防御の魔法とかいらないから!神様、頼むからやめてくれ!



必死に願ってると、どこからか銀色の蝶が飛んできて肩に止まった。



(「ごめんね!もう手遅れ!あはっ!」)



アウトォォォォーーーーーーっっ!!!!



帝位継承権第4位の地位が確定しちゃいました!……おいっ、ふざけんなよ!神!どういうことだ!!色々付与してくれるとは聞いてたけど、ここまで面倒な肩書きを付与してるとは聞いてないぞ!!「あはっ!」じゃないよ!!「あはっ!」じゃ!!取り消せないの!?神でしょ!!



(「無理!頑張って!じゃ!」)



帰るなぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!



「じゃ!」じゃないわ!何とかしてよ!!神様なのに無理ってどーゆことよ!説明しろよ!!カムバック!!



「ルーナシア様、どうなさいました?息など切らされて。もしや、お疲れになられましたか?」



私の様子が変なのに気づいたセバスチャンが膝まづいて聞いてくる。



『ちゅかれた……けど、だいじょーぶ』



原因は別にあるから。



「温室まではあともう少しだから、頑張りましょうね」


『あい』



おばあ様に手を引かれて、ドナドナしながら目の前に見えてきた温室を目指した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ