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竜の娘  作者: るり子
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輪車博士(中)

 少しだけ輪車椿という女の話をしよう。


 彼女は昔から見た目も中身も可愛げの無い女だった。ただ好奇心と頭脳は人一倍、いや10倍も20倍も優れていた。

 3年前の30歳のとき……と言っても年齢ほど老けては見えない。とにかくそのときに彼女は大いなる偉業を達成した。



 魂の存在の立証。

 

 生きとし生けるもの全てには魂がある、ということを輪車は数式に表すことに成功した。

 目には見えない命、即ち魂と仮定したモノが確実にこの世の生き物の中に存在し、働きを持っている事を証明した。


 そして魂とは基本的に閉じ込められた存在ではなく、互いに共鳴し合い、相互関係を持つものであることを輪車は発表した。


 科学者であり数学者であり生物学者であり工学者であり物理学者でもあるあまりにも優秀な頭脳を持った彼女は、その他諸々偉業を成し遂げたことを世界に認められ人類の財産になるはずだった。


 

 ノーベル化学賞受賞候補者。

 初めにメディアに大きく取り上げられたのはこの地位だった。これだけなら一般人の中田なら「へぇ、凄い人も居たもんだなぁ」と忘れ去るものだ。どんなに偉くて教科書に乗っても普通の人にとっては遥か遠く思えるただの凄い人なのだから。


 しかし2度目にメディアに取り上げられたとき、輪車椿の名は民衆の脳裏に強く焼き付くことになる。

 


 麻薬密造。

 何の麻薬かは明らかにされなかった。ただ新種の、幻覚作用の非常に強い麻薬だと発表された。

 偉人になるはずだった輪車の地位は落ち、誰しも彼女を許さなかった。ノーベル賞を受賞するであろう人がまさか麻薬に関わっているとは。このニュースは日本全土を震撼させた。

 

 そして輪車椿は、日本の恥になった。



 その麻薬こそ「お花畑」と言われるそれだった。

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