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竜の娘  作者: るり子
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ドキドキ相性占い(後)

少女の目の前がぐわんと歪む。だが心の何処かで、あぁ、やっぱり。とおもってしまう自分もいた。このまま少女は煙のように消えゆくものを―――占い師は遮った。


「ただし。このままゆけばの話でございます。貴方の行動次第によっては恋は報われるでしょう」

「……なにをすればいいの?」


 少女は至って真剣だった。



「なすべきことはただ一つにございます。それは……」

「それは……?」


 占い師は少しだけもったいぶって見せた。


「押しが足りないのです」

「押しが!?」

「そうです。もっとアタックしてご覧なさい? 道は開けるでしょう!」


 占い師は豪勢に両手を広げた。

 しかし少女は乗り気ではない。


「いままでたくさん押してきたわ……でも、たつろうはそうされるのが嫌いみたいだった。」

「……そうですか。しかし占いにはそう出ています。きっと照れ隠しか何かに違いありませんよ」

「なるほど、照れているのね!」


 少女は納得した!


「それで? 押したら私とたつろうの相性は最高になるってわけね」

「最高までは保証しかねますがきっと上手くゆくでしょう。もっとあなた自身のことを彼に表してゆくのです」

「わかったわ!」


 占い師の伝えたいことは、彼女自身の情報の開示にあった。一方的なアピールに人は疑いをかける。誰かに見てもらうにはまず自分のことを知ってもらわなければならないのに―――ところで少女はそれを理解できただろうか?

 少女はたつろうとキャッキャウフフできる夢をみて幸せに浸っていた。



「可愛らしい竜の少女よ。あなたにお守りを授けましょう」

「おまもり?」


 占い師の黒いレースのグローブをつけた手からブレスレットがこぼれ落ちる。

 翡翠のような美しい薄緑色をした宝石と透明の小さな水晶玉が連なっている、美しくも少女にふさわしい可愛らしいものであった。


「これを肌身はなさず着けていなさい。きっと貴方のためになるでしょう」

「かわいい! これなら着けてもいいわ!」


 少女は気分を良くして右手首にそれをつけ、満足そうにかざして見た。

 


 占い師の渡したブレスレットに組まれた薄緑の宝石―――それは竜の力を制御するものとは少女は知る余地もなかった。


 だが。それは少女のためであった。


 鱗を持ち、人間離れした少女にも可愛らしい笑顔がある。それを見て占い師はその“たつろう“と素直に幸せになってほしいと願ったのだった。

 占い師は真実を見る。水晶玉を使えば全てを見透かせる。少女が竜の力を所持していることも、なぜそのような力を手に入れることができたのかも、彼女が一体何者であるのかも、なぜ“たつろう“を好きになったのかも、少女が押し込んだ遥か昔の記憶も。



「お嬢ちゃん!」


 乱暴な男の声とともに古い扉が開かれた。

 

「あっ! たつろう!」

「ったく……遠くに行かれたら俺が困るんだよ」


 龍郎は片手で男を抱えながら頭をかいた。いかにも迷惑そうな顔で。



 ―――ガバッ


「っ……、おい!」


 少女が抱きつく。龍郎はバランスを崩し床に倒れ込んだ。


「ってえな! いきなりなん」

「うれしい! うれしいわ! ありがとう、ありがとう探してくれて!」


 満面の笑みで少女は頬ずりをする。鱗が頬に刺さってかすり傷が出来た。


「……うるせえよ」


 龍郎は不快そうに少女を見上げるが、突き放しはしなかった。



「そこのお方」


 聞き慣れない声で龍郎は反応する。奥にいる人間。


「何だお前は。いかにも占い師って感じで胡散臭い」

「彼女は、二つの罪を背負っている」

「は?」


 少女を見る。少女は動きをピタリとやめ、光の無い瞳で―――


「っ! おい、待て! こいつを刺激するな!」

「それしか、お伝えしません」


 少女はすっと立ち上がり……扉の外に出た。


「さようなら、占い師さん。貴方の助言、覚えておくわ」

「貴方の未来に光がありますように。……貴方のことも占いましょうか?」


 占い師が起き上がった龍郎に話しかける。

 龍郎は冷たい瞳で睨んだ。


「いらねえな。俺は占いは信じないんでね」



 龍郎は中田を抱え、少女と共に花畑を後にする。さようなら。忌々しい白い花畑。

 

「そういやお嬢ちゃん。俺はここに来る前待っててくれって言ってたはずなんだが?」

「言われた通りに待ったわよ? ちょっとだけっていったじゃない」

「……あぁ。そうだったかもな」


 何という屁理屈!

 しかし龍郎は言い返すことはできなかった。なぜなら現れた少女の姿によってこの花畑の呪縛より解放されたのだから。


 振り返り、白い絨毯を拝む。

 やはりあの呑み込まれるような感覚は気のせいだったのだろうか。


 目の前にあるのはなんてことない、ただの白い花畑だ。




 ある花畑の真ん中に、よく当たる占いの館がある。人目につかないその場所では有名になることは無かった。

 だがごく稀に人が訪れることがある。今日の来客の前に訪れたのはいつだろう。

 国の主が予言を聞きに来た時以来だ。


 それでも占い師は誰かと出会えることが嬉しかった。またさっきの男と、竜の力を持つ少女と出会えるだろうか。抱えられていた男は一体何だったのか―――そう考えて、やめた。

 あくまでも占い師の自分は彼らに深く介入することは無い。占い師の出番はきっとこれで終了なのだ。必要なことは伝えた。あとは彼ら次第。



 予言した竜の娘。彼らならきっと真実に辿り着けるかもしれない。



 占い師が思いに浸っていた時―――急に乱暴に扉が蹴飛ばされた。錆びた蝶番が外れ、扉はあらぬ方向へ倒れる。埃が舞い、靴底の型を残した。


「今日は本当に来客の多い……」



「はじめまして! (わたくし)、ヨウと申します!」


 訪れた警官風の若い男は、元気よくそう言った。

ヨウは6部のカンコウアンナイで出てくるよ!

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