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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第一章 幼年編

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第86話 魔力0の大賢者、姫様丼に感激する

前回のあらすじ

ガーランド将軍が何者かに殺害された。


 結局ガーランド将軍は逃亡用に使用したと思われる馬車から死体で見つかった。僕は気配から逃亡先を突き止めようとして、その段階からなんとなく生きてないことは判ってしまったけど……案の定だった。

 

 額を鋭利な刃物で貫かれたらしいというのが調査した騎士や魔導師による結論だったようだよ。


 ただ、誰が将軍を殺したかまでは不明のままだ。何せ将軍の乗っていた馬車には死体以外何一つ残されていなかったからね。


 僕も周囲に怪しい者はいないか調べてみたけど、そういった存在は確認できなかった。将軍を殺してすぐに逃亡したということだろうね。もしかしたら転移魔法でも使用したのかもしれないと思ったけど魔法の残滓は残ってなかったようだ。


 ただ、殺した人物こそ誰もいなかったけど将軍の死体に重要な手がかりは残されていた。それは1枚の手紙で、今回の計画の手引書でもあったのだけど、その筆跡から――書いたのがドナル殿下だと判明したんだ。


 それからはもう大騒ぎで米のことも一旦、間をおいて話し合った方がいいという結論になった。

 何せどちらも国の重要人物だ。それが共謀してこのような事件を起こしたのだからそれも致し方なしかなとは思う。


 それから一ヶ月程過ぎた後、事件の全貌が見えてきた。どうやらガーランド元将軍はドナル殿下と結託し、米の輸出ルートを確保した上で、それを利用して旨味にありつける仕掛けだったようだ。


 それは本来互いの国で認められてないものを運びいれたり、相場を調整して互いの懐が潤うようにとかそういったやり方だ。だけど話はそれだけでは終わらず、色々調べて出てきたやり取りによってお互いがそれぞれの国で謀反を企ててたことも判明した。


 結果的にそれは未然に防がれたわけだけど、何か話としては随分と大きな事になってしまった。


 これにはワグナーも多少なりとも関与していたから、そのまま王都に連行され、王国裁判にかけられる予定だが、今の地位は勿論領地も失うのは間違いなさそうだ。何らかの刑罰にも処されると思う。


 とにかく、色々なことがあったけど、米の件については結論としては改めて交渉の場を設けた上で、無事調印が完了した。このまま米の件を反故にして両国の関係がギクシャクすることだけは避けたかったという考えがあるらしい。


 それに姫様はうちの米を気に入ってくれていたし、なんだか僕の件も含めて父の公爵に直談判してくれたようで、それも後押しとなり、うちが関わるなら安心だという話になったようだ。


「というわけで……父様が今度マゼルに会ってみたいと興味津々でな」

「え! 僕に!」

「わっはっは! いやはや流石マゼルであるな。公国の君主の心も鷲掴みにしてしまうとは」


 何故か父様が大喜びだ。ふぅ、そんなわけであの件も少し落ち着いてきたとあってミラノ姫がうちまで遊びに来てくれた。


「お兄様であれば当然ですね。いずれは大陸中の王という王が兄様という崇高な存在に心奪われることとなると思います」

「いやラーサ、それは流石に大げさだから」


 ラーサはそんなことありません! と随分と僕を持ち上げてくれる。そしてそんな僕たち家族の会話を楽しそうに見ていた姫様だったけど、ふと表情に影が落ちる。


「……私たちも、昔は家族全員仲が良かった。でも、もう笑い合える日はこないだろうか……」

「ミラノ姫……」

「兄様は、マゼルに随分と失礼な物言いをしてしまったし、確かに国の武力強化を望んていた。だけど、だからといってあんな真似をするような人ではなかった。卑怯な真似を最も嫌う人だったことを私は知っている……」


 姫様の話では、あのドナル殿下は当初処刑される恐れだってあったらしい……でも殿下を慕う部下達が嘆願したことで減刑となり幽閉という形に落ち着いたようだけど――


 ただ、気になる点がないとはいいきれず、例えばガーランドがなぜわざわざ証拠につながる手紙なんかを所持していたのかとか……それにドナル殿下も当初は事件への関与を否定していたらしいし。

 

 だけど証拠品が出揃ってくると諦めたように抵抗も止めて、何も口にしなくなったという。


 だけどやっぱり姫様としては割り切れない部分もあるのだろう。

 

 今日は姫様が折角お米を食べに来てくれたわけだし……よし――


「ミラノ姫、料理の準備ができましたよ」

「ほぉ、これはまた変わった料理だな……器も変わっている……」


 席に案内すると、姫様は料理を見て少しだけ笑ってみせた。でも、やっぱりまだ笑顔が少し固い……。


「これは米の本場の島国で使われている、丼という器です」

「丼……中が見えないが」

「はい、料理は蓋に閉じられているので、開けてみてください」


 そう説明すると姫様が興味深そうに丼の蓋を開いた。同席している父様、母様、そしてラーサも同じようにふたを開けると、一斉に白い湯気が立ち上り、密閉されていた芳醇な香りが舞うように僕たちの鼻孔をくすぐった。


 食欲をそそるいい匂いと自分で作っておきながら思ってしまう。


「いい香りだ……とても優しく、それでいて食欲をそそる――してこれは、ふむ、米と肉の上に卵が乗っているのか?」

「はい。肉はそれぞれにあった形に変化させバリエーション豊かに、卵は半熟で柔らかめですが、蓋を閉めればもう少し硬くも出来るのでお好みでどうぞ」

「ふむ、天使のほっぺのような程よい柔らかさだ。私はこのままで良いな。肉はこれはステーキにしてあるのだな、こっちは一度ひき肉にしているのか?」

「はい、そちらはつくねという料理ですね」

「つくねか……こっちは角切りでステーキともまた違うか……」

「一度串に通して焼いたものをバラしました。串のままだと焼き鳥といいます」

「なるほど、色々おもしろいものだな。どれ――」


 姫様は何度か遊びに来ていてもう箸の扱いもなれたものだ。器用に使い丼の中身を口に含んでいく。


「ほう、これは、むぅ、旨いな。しかもそれぞれ同じ肉のようなのに微妙に味わいがことなる。ソースも違うのがあるな。うむこれは旨い」

「姫様、よろしければそれぞれの肉を順番に食べてみてください」

「順番に?」

 

 不思議そうな顔を見せたけど、僕が教えたとおりに食べてくれた。そして最後の一種類を口に含んだわけだけど。


「――これは、信じられん……バラバラに食べても十分旨かったが、つくね、ステーキ、焼き鳥と順番に食べていくとそれぞれの味が混ざり合い豊かなハーモニーを奏でだした。匂いも合わさって、最高の味わいだ! しかし、一体これは?」

「先ず使ってる肉は、ファミリークックという鳥の魔物です」

「ファミリークック?」

「はい。この魔物は家族単位で活動する魔物ですが、他の魔物と大きく異なるのは親鳥と兄弟、姉妹の鳥、それぞれで肉質などがことなり、味が違うこと。そしてそれぞれの肉質にあった調理法で味を引き出した上で、順番に食べていくことで味が格段に良くなるという特徴があります」

「家族で……」

「はい。ちなみに父鳥は米のだしに使い、母鳥はつくねに、兄鳥はステーキとし、弟鳥は焼き鳥、そして妹鳥は卵のままつかっています」

「……それで、この料理の名前は?」

「はい、家族丼です」

「家族丼……家族の味ということか」


 一旦箸の手を止める姫様。でも、すぐに表情を変え。


「全く、なんてものを食わせてくれたのだお前は。だが、旨い、旨いぞ、最高の――旨さだ」


 姫様は涙ながらに食べ、完食しおかわりまで求めてくれた。そして二杯目を食べるときは、すっかり元の姫様に戻ってくれていた。






「マゼル、おかげで私は吹っ切れた。兄様のことは残念だが、でも兄様は生きている。それならばまだやり直しはきくはずだ。だから私だけは兄様がまた元の兄様に戻れると信じて見守りたいと思う。だが、迷惑を掛けてしまったマゼルは、それを許してはくれないか?」

「とんでもない! それでこそ、姫様だと思います」

「……マゼルなら、そう言ってくれると思っていた。だが、これは困った。全く、年の差があるからと遠慮していたのだがな」

「え?」

「ちょ、ちょっとお待ち下さいミラノ姫! 今のは一体!」

「ふふ、さて、私もそろそろ戻るとしよう。くよくよしていてはふさわしい女にはなれんからな」


 そしてどこか吹っ切れた様子で姫様は馬車に乗って帰っていった。でも、やっぱり姫様は志が高いよね。姫様として民に相応しい姫にならなければということだろうしね。

 

 でも、何故かラーサは頬を膨らませて、兄様なんて知りません! とかむくれちゃったんだよね。


 え~何か嫌われることしちゃったかなぁ?

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