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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第一章 幼年編

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第77話 魔力0の大賢者、協力を惜しまない

前回のあらすじ

ゴブリンの大軍がせめてきていると報告が入った。

※いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます。凄く励みになり助かってます!

 場が騒然となった。ナムライ家の私兵が伝えに来た内容がそれぐらいとんでもないことだったわけだね。


 それにしてもゴブリンが5万か~ゴブリンとは言えそれだけ出てくるとやっぱりちょっと面倒かもね。


「馬鹿な、何故それほどのゴブリンが? それだけいたなら前兆ぐらいあったのではないか? 全く気が付かなかったのか?」

「確かにそれは私も気になるところだ。どうなのかな?」

 

 アザーズ様とライス様が報告に来た兵士に問う。兵士はすごく動揺しているけど、聞かれたことにはしっかり答えた。


「それが、冒険者ギルドによるとスタンピードが起きた可能性が高いと……」

「スタンピード……つまり魔窟が発生していたというわけですね」

 

 父様が真剣な顔で口にした。確かにスタンピードは魔窟のみで発生する災害だ。魔窟はダンジョンともよく間違えられるけどダンジョンと異なり放置していてもメリットはない。


 お宝も沸かないし、ただ無尽蔵に魔物が増えていくだけだ。だから通常は発見次第すぐに破壊される。魔窟は心臓部とも言える魔核を破壊すれば消滅するから、これを壊してしまうのが一番早いのだけど。


「しかし、いくらスタンピードと言えど5万とは……」

「あまりに多い……だが、こうなっては当然黙ってはいられない。それでゴブリンの群れとの距離は?」

「はい、先頭の群れまで凡そ10kmといったところです」

「10km……ぼやぼやしていられないな」

「そのとおりです。貴方はすぐに伝達を、この城に来ているお客様に危害が及ばないのは勿論、街の住人に避難勧告を。冒険者ギルドにも協力を仰いでください!」

「は、はい!」


 ライス様に命じられ、報告に来た兵が走り去っていった。慌ただしくなってきたぞ。


「ふぅ、折角ここまでご足労頂いたというのに申し訳ありません」

「いえ、それより私に協力出来ることがあれば言って欲しい。これでも戦いの心得はある」

「僕も協力出来ると思いますよ。ただ、兄さんは止めておいた方がいいかな」

「……どういう意味だ?」

「そのままの意味のつもりだけど?」

「兄様! 今はそんなことを言っている場合ではないぞ!」


 姫様が声を張り上げた。確かに今は時間を無駄にしている場合じゃないね。


「僕も手伝います。協力出来ることがあれば言ってください」

「息子ほどではありませんが、微力ながら私も力添えが出来ればと思います」

「それはありがたい。大賢者様と王国騎士団でさえも舌を巻くほどの腕を誇るナモナイ様の協力が得られると慣れば現場の士気も上がります」

「うむ、100人力、いや100万力の協力を得たようなものだ」


 ライス様とアザーズ様がそう言って喜んでくれて感謝の言葉も頂いた。でも父様はともかく僕に関しては少し大げさにも思えるかな。


「私も是非、兄様と一緒にお手伝いします!」

「……パパ、私も街のために戦いたい」


 ラーサとアイラもゴブリンとの戦いに参加したいようだ。でも、それを聞いた父様は顔を曇らせた。ライス様やアザーズ様もそれは同じだ。


「ラーサ、残念だけど今回は駄目だ」

「アイラも許可出来ない」

「え! どうしてですか? 私だって役に立てます!」

「…私も、戦える!」

「駄目だラーサ。今回は危険過ぎる」

「そう、ゴブリンとは言え数が多すぎる」


 父様とライス様の意見はよく判る。ゴブリンには悍ましい性質があるから僕としても戦いに参加させたくない。


 ただ、2人は納得出来ていない様子。う~ん、ただ黙って見ていてもらうというのは逆に危険かもしれない。もしかしたらそれでも無理して来ちゃうかも知れないし。


「僕としてはラーサとアイラにも手助けしてもらえたらと思います」

「お兄様!」

「……マゼル話が判る」

「む、いやしかし、流石に」

「アザーズ閣下、今は少しでも手がほしいところと思います。ましてや住人の避難には時間も掛かりますし、なので」

「あ、なるほど!」

 

 ライス様が手を打って納得した。僕の意図を理解してくれたみたいだ。


「うん、確かに住人の避難の手助けには人が必要だし、魔法の使い手がいれば心強いことだろうね」

「確かにそれならばラーサに適任だな」

「え? で、でも私は!」

「ラーサ。これも立派な仕事だと僕は思う。街の手助けを、お願い出来ないかな? そして妹のラーサをアイラにもサポートして欲しいんだ」

「お兄様に、そう言われたらもう断れないじゃないですかぁ」

「……うん、マゼルはずるい。でも、判った」


 よかった2人とも納得してくれたよ。


「しかし、このタイミングでスタンピードというのも妙な気がするがな。どう思うかなガーランドよ?」

「ふん!」

 

 ガーランドとワグナーは手足を拘束された状態で座らされていた。ワグナーは呆けてしまって心ここにあらずと言ったところだね。


 だけど、ガーランドはまだまだ強気だ。強がりとも言えるかもだけど。


「そんなもの私が知るものか。お前らの怠惰が招いた結果だろう。だがな、それだけの大軍相手に貴様らだけで何とかなるのかな?」

「……どういう意味だ?」

「わからんのか? なんなら協力してやってもいいと言っているのだ。これでも竜殺しの名を恣にした私だ。ゴブリンが5万いようが10万いようが軽く蹴散らしてくれよう!」

「……ぬぅ」

 

 ここにきてガーランドが協力しようと持ちかけてきた。本来ならとても信じられない話だ、でもゴブリンの大軍が迫ってるとあって戦力になりそうな人材は少しでも欲しいところなのかも知れない。


「閣下、差し出がましいようですが、その話、受ける必要がないと思われます」


 しかし将軍の話を父様は否定してみせた。それに将軍が憤る。


「黙れ田舎貴族風情が! 貴様なんざが手を貸したところでたかが知れる。だが、この私が手を貸せば、状況は一変することだろう」

「確かに私だけでは5万のゴブリンの軍勢を相手などとても出来ないだろう。だが、こちらには我が息子、大賢者マゼルがいるのだ!」

「うむ! そうであったな!」

「これほどの説得力はないですね」

「勿論お兄様であれば、5万のゴブリン程度どうってことありませんね」

「……よく考えたら心配がなかった」

「……え?」


 いやいや! 流石にそれは期待が大きすぎだよ! 確かに前世なら100万のオークの大軍も相手したりしたけど、今の僕はまだ子どもだしね!






◇◆◇


 我が名はゴブラル。魔核に選ばれ名を与えられしもの。ゴブリンというのは人間によく舐められる種族として有名だが、時には人間どもに反撃することもある。


 それはゴブリンの王たるゴブリンキングが生まれた時など顕著であろう。だが、この私は違う。なぜなら我は核に選ばれその身に宿したことで帝王たるゴブリンシーザーに進化した。


 今の我はゴブリンキングまでをも配下とし手足のように扱う究極の存在だ。


 まぁ、正直言えば何故我がここまで進化できたかはわからなかったりするが。確かに魔窟を生み出す魔核はある程度成長したところで身を守るため生み出した魔物に宿り進化するが、どの程度まで進化するかは魔窟が育った規模にもよる。


 だが、どうもこの魔窟は生まれてからまだ間もない気がするのだ。我など元々はゴブリンの中でもパシリの方だったし。


 しかし、何故かこの魔窟が急に成長ししかも魔核を宿すという重大な任が我に与えられたのだ。ぬはは、パシリにしてくれた連中は一番最下級にさせてやったわ。


 さて、どういうわけか急速に成長を遂げる魔窟も気がついてみれば兵力5万にまで拡大していた。驚いた、凄く驚いた。だが、ここまできたらやはり人間どもを襲うほかないだろ。


 丁度いい具合に10数km先に多くの人間が暮らす街があるしな。ふふふ、人間はいい。いつもなら狩られる方が多いが狩る立場になった時これほど楽しめる獲物はいない。


 特に人間の牝は我らの繁殖にも役立つ。男はまぁ食料になる。

 

 しかもあの規模の街を落とせば、この5万の兵力を更に増殖出来る程度の牝が手に入る。我らゴブリンが一大国家を築き上げる日も、そう遠くないことだろう。


「ゴブラル様、ご報告致します! 間もなくゴブリン兵団第一、第二、第三部隊が人間兵と衝突! 遭遇戦が展開されると思われます!」

「ほう、それで兵力差はどのぐらいだ?」

「は! それが、その、こちらはジェネラル、ロード率いる5千……に対し人間側は……5人です」

「……は? なんだそれは? 冗談を言っているのか?」

「いえ、冗談というわけでは……」

「陛下、何も不思議なことではございません」

「ほう、判るのか? ゴーブラ」


 ゴーブラは私が名付けた参謀だ。ゴブリンでありながら多彩な魔法を行使できる優秀な雄だ。ゴブリンにも時折こういうものが生まれるから侮れない。


「はい、きっとその5人というのは我らの兵力を確認しに来た先遣隊、まぁ斥候ですな」

「ほう、なるほど」

「ですが、これで人間側の底が知れたというもの。陛下、この戦、もはや勝ったも同然!」

「何? そうなのか?」

「はい。何せ本来であれば斥候は相手に見つからないよう隠れ潜み、偵察し陣地へ戻り報告するもの。それが、こんなにあっさり見つかるようでは、つまり人間側の実力などその程度ということでございます」


 なるほど。つまり相手からすれば遭遇と言っても本意ではなく、ただ我らの兵に見つかったということか。


「ところでその5人というのはどんな奴らなのだ?」

「それが、1人はいかにも騎士と言った様相で3人は冒険者のようなのですが、しかし1人だけ、何故かまだ幼い子どもが混じっていたと」


 それを聞き、我とゴーブラは顔を見合わせ、大いに笑った。


「聞きました陛下! 全くまさか子どもまで戦場に送り出さざるを得ないとは!」

「うむ、これは我でもわかったぞ。愚かなり人間よ! いくら数の上で劣るからと、そのようなガキまでとはな! よし! ならば伝えよ、人間などおそるるに足りぬ! 全力で叩き潰してしまえとな!」

「ハッ!」


 クククッ、しかしここまでとはな。どうやら我々ゴブリン軍は想像以上に強くなりすぎたようだ。全くこれでは最初に向かった5千だけで十分ことたりそうではないか。万が一があっても残り4万5千の兵が控えていたわけだがいらぬ心配であるな。


 カカッ、これであればこの地が落ちるのも時間の問題よ。戦利品の牝に、今から興奮が冷めやまぬわ!

ゴブリン軍団「飼ったも同然!」

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