表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第一章 幼年編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/500

第61話 魔力0の大賢者、秘密の抜け道を案内する

前回のあらすじ

混蟲族を倒した後、領地へ戻った。


 あれから、父様は書状を書き認め冒険者ギルドを通して王国へ走らせた。こういう時はやはり冒険者ギルドは便利だね。


 この間、ただじっと待っているわけにはいかない。集落は壊滅した後、その状況を基本維持してある。


 父様は領主として混蟲族と集落について知っておく必要があるし、諸々の後始末には人数が必要になる。


 問題は行き方だ。僕たちは蜂に乗って移動したけど、蜂に頼るにも乗れるのは4人だ。勿論ハニーに協力してもらって蜂を更に呼んでもらうという手もないこともないけど、今後のことを考えたら出来れば自力で行けるのが望ましい。

 

 それにハニーやアイラたちは一旦それぞれの村や領地へ戻ってしまった。観光で来たわけではないし、それぞれが報告に戻らないといけない。


 とはいえ、実は混蟲族の集落へ行く方法にはあたりはついていたんだけどね。それっぽいところを実は探して見つけておいた。


 なので今日はこれから父様やギルドが手配した冒険者と再びあの集落へ向かう事となった。


「まさか、こんな抜け道となる洞窟があったとはな」


 進みながら父様が感心したように言う。混蟲族が出入りしている以上、どこか抜け道があるに違いないと思っていたけど、案の定スメナイ山地に入る手前の岩山にそれは隠されていた。


 隠していたのは集落の場所を糸で上手いこと隠していた蜘蛛の魔物によるものだろうね。


 入り口は岩山から抉られていたけどすぐに地下に潜る形になっているのが判った。


 内部はかなり入り組んでいたけど、人工的というよりは元々蟲が掘った穴を利用していたというところかな。


 構造的には蟻系。おそらくソルジャーアントだろうね。ただ、歩いていてもその手の魔物には一切あわないから。ここにいた蟻を纏めて西の森に移動させていたのかも知れない。


 元が蟻の巣だけに中々入り組んでいるけど、空からとは言え集落には既に一度行っているから気配は覚えている。


 全長は結構長いけど、僕が作ったトンネルほどじゃないから、空気の心配はない。あのトンネルもそうだけど、出口が森と繋がっているのがポイント。森は風の精霊が豊富で風の精霊は好奇心が強いから洞窟など見つけると積極的に入り込む。出口があればそこまで抜けてくれて行き来も多くなる。風の精霊は空気を運んでくれるから森と繋がっていれば空気で満たされる。


 だから風の精霊の通り道さえ出来れば長い洞窟の中でも安心して移動が可能なんだよね。ダンジョンなんかも好奇心旺盛な風の精霊が多く入り込んで潜っているから空気の心配がなかったりするんだ。


「これを簡単に見つけてしまうお兄様の慧眼に私は驚きを隠しきれません。ますます尊敬してしまいます」

「うむ、大賢者マゼルの偉業が更に増えたな。9歳にして既に吟遊詩人が束になって掛からないと英雄譚が完成しないほどの伝説を作り続けておるわ」


 言い過ぎです父様。寧ろ頼まれても吟遊詩人は普通に迷惑だと思うよ……。


「そういえば既に著名な吟遊詩人から大量の申し出があったとか、いやいや流石ですね」

 

 ドドリゲスさんが笑いながら僕も知らなかったことを述べる。何それしらないどういうこと!


 何か色々今後が不安になるよ。


「それにしても、折角あたいらも来てるのに、何も出てこないんじゃ張り合いがないねぇ」

「全くだぜ。兄貴にいいところを見せられると思ったのによ」

 

 ちなみに、依頼を引き受けてくれた冒険者は破角の牝牛とヒゲ男ズだったりもする。いや、他にもいるんだけど、何か目立つよね。


 いつもお世話になっているこの2パーティーは今回の蟲の襲来を退けたということで冒険者としての評価も上がったようだね。


「しかし全く迷うこと無く進むのだから、やはり大賢者の力は凄まじいな。普通なら一つのパーティーで斥候や戦士、魔法系や支援系などで分担するものだが、これらを一人でまかなえるとは」

「ヴァン、いまさらそれで驚くとはまだまだ大賢者様に対する理解が足りないですね」

 

 2人のギルドマスターから妙に持ち上げられているけど、これもちょっと魔法が得意な魔術師や魔導師なら楽勝だと思うのだけどね。


 それに一見複雑そうだけど、これが蟻の巣だと考えれば実はそれほど難しい話じゃないんだ。蟻は最奥に女王の部屋を作るけどこれはより深いところに作る。


 だけど僕たちの目的地は逆側の地上だからね。つまり下っていく方ではないルートを選んでいけば多少は手間かもしれないけど魔法がなかったとしても出口までたどり着くのは難しくないんだ。 

 さて、ここまで見事に何もない状態でやってこれた僕たちだけど、ふと空気が変化するのを感じた。


 どうやら一切出くわすこと無く順調にとはいかないみたいだね。


「皆さん気をつけてください。魔物が近づいてきてます」

「何? そうなのか?」

「すげーな、俺でも気づけなかったよ」


 アッシュさんが驚いていた。アッシュさんは盗賊魔法が使えて、周囲の気配もさぐれるけど、狭い横穴だし、範囲を絞っていたのかもね。

 その方が罠とかにもすばやく対応できるだろうし、僕も対応できなくはないけど解除は苦手だからね。


 さて、それはそれとして、元が蟻の巣だけに周囲には穴が多く、そこからワシャワシャと多脚を蠢かしながら黒い蜘蛛の魔物が次々と姿を見せた。


「むっ、ブラックウィドウか」

「この蜘蛛は毒があるぞ。全員爪と牙には気をつけろ!」

「うへぇ、また蜘蛛かよ」

「ちょうどいいじゃないか。この間散々蜘蛛を狩ったのだから、もう慣れたものだ」

「ふむ、この間よりは切りごたえがありそうだ。ふふ、我の髭も鳴いておる」

「髭飛ばし効くチョビ?」


 ヒゲ男ズは確かにこの間の畑での戦いで蜘蛛の魔物相手に健闘してくれたね。それにしてもドジョウさん髭を剣みたいにして活き活きしてるね。それにしても髭って鳴くのかな?


 ベアードさんも前回の戦いが自信に繋がったのか髭操作魔法でガンガン倒してるよ。

 

 反対にチョビさんとムスタッシュは少し及び腰かな。それでもなんだかんだで健闘しているけど。


「あたいらも男に負けている場合じゃないよ!」

「勿論、大賢者様に少しはいいところを見てもらいたいもん」

「ま、これで少しは役に立つところが見せられるかな」

「依頼料のわりに楽な仕事になるかなと思ったけどやっぱ甘かったか~」


 破角の牝牛の皆もブラックウィドウ相手に気合入ってるね。アッシュさんも口ではあぁいいながらしっかり自分の仕事を熟しているよ。


 2人のギルドマスターは勿論、父様も一人で何匹も狩っているし、ラーサの魔法も的確だ。

 これなら、ここは問題なさそうだけど……。


「皆、僕はこの先の様子を見てくるよ」

「あ、お兄様それなら私も」

「いや、ラーサの魔法は数が多い相手に有効だから、こっちは僕に任せてここはお願いしていい?」

「お兄様が私を頼りに、はい! 判りました!」

「うむ、きっと大賢者マゼルはまた何か伝説を残す気なのだな! よし、ここは私達に任せておけ!」


 みんな頼もしいな。だからこの先はせめて僕が頑張らないとね。


 この場を皆に任せて僕は更に先へ進んだ。実はここから少し進めばもう、地上間近なんだけど、そこに強めの気配を感じたわけで。


「蜘蛛たちが騒がしいから何事かと思ったけど、へぇこれは随分と新鮮な餌だねぇ。あいつらもたまには気が利くじゃないか」


 奥の、地上への出口を塞ぐように、その魔物はいた。下半身が蜘蛛で、上半身が髪の長い女性――肌の色は暗紫色で人の言葉も介する――確かアラクネという名前の魔物だね。


 実は名前はしっていても対峙するのは初めてだったりするけど、本当に上半身は女性なんだなぁ。見た目が大人でなんとも妖艶めいた姿だね。


「ふふ、それにしても随分と可愛らしい餌が来たねぇ。ふふ、なんだったら食べる前に食べちゃおうかしら?」


 え~と、ちょっと何言ってるかわからないんだけど……でも、最初に言っていたあいつらというのはやっぱり混蟲族のことなのかな? 少し話を聞いてみようかな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ