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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第一章 幼年編

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第53話 魔力0の大賢者、良からぬ企てをことごとく潰す

前回のあらすじ

蟻の巣で女王蟻と戦う少女と蜂がいた。

side蟲使い

 バグズ・セクトそれが俺の名前だ。俺は蟲を操る一族である混蟲族の村で生まれ育った。そして俺たち混蟲族は常に混沌と共にいた。


 村の収入源は蟲を扱った仕事だが、その内容は依頼によって様々。依頼者の敵対する領地を荒らすことや、相手の弱みを握るための情報収集、時には特定の蟲を使っての洗脳や、暗殺など多岐にわたった。


 俺は混蟲族の中で特に期待されていた。幼少時には100を超える蟲を操れるようになっており、7歳にして仕事に加わり、成人した蟲使いを凌駕する成績を収めた。

 

 そんな俺に大きな仕事が舞い込んだ。ローラン領をめちゃくちゃにして欲しいという依頼だった。領地そのものを相手どる仕事は初めてだったが、どうやらこの依頼元々は別の蟲使いが関わっていたらしく、数年前から手を付けていたらしい。


 しかし、ある時けしかけた蟲が軒並み駆除されてしまった。しかも相手はどうやら知識が豊富らしく、蟲を寄せ付けない仕掛けを施し、おかげで仕事は失敗に終わってしまったという。


 全く恥ずべきことだ。蟲がやられたこともそうだが、その程度の妨害に屈するとはな。尤もこれは依頼人の方から一度手を引くよう告げられたというのもあるようだ。


 だが、それから暫くして我ら一族を操る蟲を撃退し、防蟲処理を行った相手が大賢者の再来と呼ばれている少年だと判った。しかも忌々しいことに名前もかつての大賢者にあやかってマゼルなのだという。


 大賢者マゼルといえば我ら混蟲一族にとって憎んでも憎みきれない程の因縁を持つ相手。何せ我らの祖先はこの大賢者マゼルの手によって一度壊滅されかけたのだ。


 その大賢者の再来などと呼ばれ浮かれているガキにいいようにされていたとは、一族に取っては由々しき問題であり、あまりに忌々しい所業でもあった。

 

 だが、我ら混蟲族に遂にリベンジの機会が与えられた。一旦依頼を取りやめていた依頼者より再び依頼が出されたというのだ。

 

 裏ギルド経由であるから依頼者の詳細は判らないが、そんなことはどうでもいいことなのだろう。一族の威信にかけて、そしてかつての雪辱を果たす為にもこの依頼に失敗は許されない……それが村の総意であり、だからこそこの俺に白羽の矢が立った。

 

 メキメキと蟲使いとしての頭角を現している俺だ、それも当然と言えるだろう。

 そして俺はローラン領を没落させる為、動き出した。最初に依頼で動いていた馬鹿は、蟲避け一つ対処出来なかったようだが俺は違う。


 俺の蟲魔法は操れるフェロモンの質が違うからな。これでちょっと興奮状態にしてやれば蟲避けなど何の意味もなさない。


 さぁ先ず大量の蟲を使って領内の畑をめちゃくちゃにしてやる。依頼人は畑の壊滅を何より望んでいるからな。この領地は特に米という物を名産にしているらしいが、それは特に念入りに潰してやる。


 ふふ、兵隊は用意した。戦いは何より物量。大量の蟲をけしかけ、全方位から多角的に暴れさせる。これが俺の包囲殲滅蟲だ。これでこの領地も終わる。大賢者などおそるるに足らん! とそう思っていたのだが――


 どうなっている! あれだけ大量の蟲を擁したというのに、凄まじい勢いで目減りしていっているぞ! 俺は離れていても操っている蟲の状況はつかめる。一度に1000を超える蟲を操り、それを全て把握するなど俺ぐらいしか出来ない芸当だが――だからこそ判る。


 6つに分けた自慢の蟲部隊がどんどん駆除されていっている。元々小癪な人間が冒険者などを雇って無駄な抵抗を見せていることは判っていたし、その程度どうとでも出来るような布陣だったはずなのだが、南部に向かわせたハンガーローカストが一瞬にして駆逐されたかと思えば、今度は東部が、そして北東部、北部、北西部と次々数を減らされていったのだ。


 ただ、唯一西部だけはそこまでの勢いではなかった。だが、その西部も少しずつ蟲が減らされており、このままでは危ないと考えた。


 だが、場所が良かった。何せそこからそれほど離れていない森には、凶悪な蟲である蟻が仕込んである。


 本当は、蟻まで準備する必要はなかったかも知れないと考えていたが、念には念を入れておいて正解だったな。


 既に自慢の蟲であるソルジャーアントは動き始めていた。その中から100匹程を西部に向かわせた。これで挟撃してしまえば髪の毛一本残さず死に尽くすことだろう。


 その後は、想定外ではあるが、ソルジャーアントの軍を結成させ、領内を徹底的に荒らし狩り、目につく者全てをソルジャーアントの餌にしてしまえばいい。


 ……な、何だこれは? どうなってる? 挟み撃ちさせようとしたソルジャーアントの生体反応が忽然と消え去ったぞ。


 まただ、南でもハンガーローカストに似たような現象は起きたが、ソルジャーアントまでもが。


 しかも森にいたソルジャーアントの生体反応にも異常が見られていた。アリの巣周辺と内部の蟻の生体反応も弱々しくなっている上、森を跋扈させていたソルジャーアントなど秒で減っていく始末だ。


 こんな、こんな馬鹿なことがあってたまるか。俺の使役している蟲の軍団は無敵だ! そうだ。何、まだクイーンがいる。ソルジャーアントの女王ならば、負けることなどありえない。その、はずだ。


 だが、念の為、切り札は用意しておくか……。






◇◆◇

sideマゼル


 女王蟻、クイーンソルジャーアントと戦っていたのは一人の少女と蜂達だった。勿論蜂といってもただの蜂じゃなくてすごく大きい。


 あれはバトルホーネットだね。とても戦闘力の高い魔物で、蟻にとっては天敵とも言える蜂系の魔物だ。


 バトルホーネットは素早い動きで相手を撹乱しつつ、尾から伸ばした針や、鉄の塊ですら軽く噛み砕く顎で攻撃する。針を飛ばすことも出来るし、顎を激しく鳴らすことで発生する振動波も利用するという中々の芸達者だ。


 見たところ、黒髪の女の子は蜂と協力して女王蟻に挑んでいるようだよ。


 短槍を片手に、蜂と一体化したように動き回り、まさに蜂を思わせる槍さばきでクイーンソルジャーアントに打突を加えていく。

 

 軽やかなステップに合わせて揺れ動く髪はポニーテールにしていて、ヒラヒラと舞う服は民族衣装っぽくもありそれでいて踊り子っぽくもある軽やかなものだ。


 へそ出しなので、ついそっちにも目が行っちゃうけど――かなりの使い手なのは見て取れるね。女王蟻を相手にしていても全く物怖じしていないし、4匹のバトルホーネットと連携をとって、ダメージを積み重ねている。


 ただ、流石にクイーンソルジャーアントも黙ってやられたりはしない。お腹が長大になっていてかなり膨れている女王蟻は動きこそ遅いけど、元の特徴である鉄分の多さを活用し、自身を鋼鉄のように硬くさせることが可能な上、尾の部分から棘のように生やしたり、飛び道具として発射する。


 それに鉄化した尾を振り回すといういささか荒っぽい攻撃と組み合わせるから攻撃範囲も広い。


 強制孵化も行使しているようだ。文字通り卵から強制的に孵化させ、その上で栄養を大量に与え急成長させて即席の兵士として送り出す。

 

 これは、蟲系の魔物には稀にある行動の一つだ。ラーサが泣きそうになっていたあの魔物もやっていたね。クイーンソルジャーアントも同じようなもので、このやり方で兵士化した蟻の寿命は非常に短い。1時間もてばいいほうだけど、巣を襲撃されている以上、女王だって命がけだ。生き残るためならやれることはなんだってやるだろう。


「むぅ、数が多い~!」

「「「「ビー! ビー!」」」」


 もしかしたら少女たちでいけるのかな? と思って様子を見ていたけど、やっぱり女王蟻相手にするには火力が足りてないようだ。


 ソルジャーアントも大量に発生しているし、加勢した方が良さそうだね。


「僕も手伝うよ!」

「え? え~と、子ども?」

「「「「ビ~? ビビィ?」」」」


 僕が飛び出すと、少女が小首をかしげて、蜂たちも同じ様に頭を斜めに倒して疑問符が浮かんでそうな様子。中々感情豊かだね。元々蟻系の魔物も蜂系の魔物も賢い部類だし。


 この子の正体については、正直わからないけど、女王蟻と戦ってくれているわけだから少なくとも敵ではない。なら、助太刀するしかない。何より僕の暮らす領地の問題だ。


 そんなわけで、真っ先に対処すべきは勿論クイーンソルジャーアントだ。これをなんとかしないとソルジャーアントはどんどん生まれてきてしまう。

 

 馬車が10台並んだぐらいまで長大になった女王蟻は、恐らくかなり頑丈になっていることだろう。元から生命力が高いし、鉄分も豊富だ。素手の僕の攻撃じゃ正直どこまでダメージが通るかわからない。


 とにかく、先ずはアレを試してみるとしよう。以前、通破拳という技を使用したけど、今回は氣を通すのではなく、体内で波紋のように広げて内側から爆発させるように倒してしまうあれだ。


 ただ、これだけの大きさだ。それでもそこまで効果はでないのかもしれないけど、やるだけやってやるさ。


「いくよ、ハァアアァアァアア!」


 体内の氣を拳一点に押し込むイメージで、そして加速して肉薄し、高まった氣を帯びた拳で、その大きなお腹に、叩き込む!


「震破拳!」


――ドゴオォオオオオオオン! グシャ! パラパラパラパラパラ……。


「……あれ?」

「じょ、じょじょじょじょ、女王が吹っ飛んだぁああぁあ!」

「「「「ビーーーーーーーーーーッ!?」」」」


 うん、何かすごく驚かれてしまったよ。女の子にも、蜂たちにも。


 あと、女王が吹っ飛んだついでに余波で周りのソルジャーアントも纏めて吹っ飛んだね。うん、あれ~?

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