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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第532話 魔力0の大賢者、ファインと向き合う

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「マゼル。余計な真似をするな」


 リング中央で僕とファインが向かい合った瞬間、イロリ先生が鋭く声を上げた。


「これは俺とファインの問題だ。部外者は引っ込んでろ」

「それは――出来ません」


 僕は一歩も退かずに答える。


「何だと?」

「先生は僕たちZクラスの担任でもあるんですよ。その責任は、最後まで全うしてもらわないと」

「責任、だと?」

「はい。アズールの記憶で分かりました。先生は自分の命を投げ売ってでも彼を止めようとしていた。違いますか?」


 問いかけると、先生は目を伏せた。


 拳がわずかに震えている。


「……そもそも俺は、お前らの担任なんかにふさわしくないんだよ。ファインを救えなかった。そのことから目を背け、生徒と向き合うことから逃げてきた。そんな駄目教師だ」


 その声は自嘲に満ちていた。


「そんなことない」


 僕は即座に否定する。


「先生はいつだって僕たちを気にかけてくれていた。確かに一見するとやる気がなさそうで、最初は不安でしたけど……いざという時には必ず動いてくれた。時には厳しい言葉で、僕たちを奮い立たせてくれた」

「マゼル……」

「マゼルの言う通りだぜ。確かにいつも適当だしよ」

「うむ。授業の八割は自習だったな」

「たまに教室にいても寝てるしね」

「いつも面倒くさそうにしてるし」

「テメェら……」


 アズール、ガロン、リミット、ドクトルの言葉に、先生の蟀谷がぴくりと動く。


 でも。


「でも、先生はシグルを迎えに行ってくれた」

「なんだかんだで小テストのヒントもくれてたしな」

「クラス対抗戦でも助けられたな」

「ここぞって時には頼りになるのよね」

「先生がいなかったら、反省文じゃ済まなかったかもだし」

「僕も……退学にならずに済んだのは先生のおかげだと思ってます」

「……チッ」


 舌打ち混じりに髪を掻き毟る先生。


 その様子を見て、ゲシュタル教授が柔らかく微笑んでいる。


 だが。


「ハハッ、アハハハハッ! そいつがいい教師だって? 笑わせてくれる!」


 ファインの嘲笑が響く。


 乾いた、刺すような笑い。


 僕は改めて、彼と真正面から向き合った。


「ファイン。アズールの記憶から、君の過去も知った」


 笑いが止まる。


 黒い瞳が僕を射抜く。


「君の妹のことも。僕にも妹がいる。だから君の気持ちはわかる――」

「テメェッ!」


 殺気が爆ぜる。


「なんて――簡単に言えるほど、君の過去は生易しいものじゃないね」


 わずかに、ファインの目が揺れた。


「確かに、僕にも妹がいる。もし妹に危害が及んだらと思うと、胸が締め付けられる。でもそれは、あくまで“僕の”感情だ。君の悲しみも、恨みも、痛みも、君だけのものだ。他人が軽々しく分かったなんて言えるものじゃない」

「――ハハッ。流石賢者様だな。だったら分かるだろう? 俺が復讐する理由が! そこまで分かってるなら、黙って見てやがれ!」

「それは駄目だ」


 即答だった。


「何だと?」

「確かに、君の気持ちの全部は理解できない。でも――」


 僕は一歩、踏み出す。


「僕は、君を止めたい」


 空気が一瞬止まった。


「先生を信じているから、というのもある。だけど、それだけじゃない。君がまだ完全に壊れていないと、僕は思ったからだ」


 ファインの眉が僅かに動く。


「君はイロリ先生に手を出さなかった」

「……」

「復讐心だけなら、とっくに殺していたはずだ。でも君は最後だと言った。順番をつけた。それは憎しみの延長じゃない。迷いだ」

「黙れ」

「君の中にまだ残っているものがある。その光を、僕は見逃さない」


 僕ははっきりと言った。


「だから僕は止める。先生の為でもある。でもそれ以上に、君自身がこれ以上壊れない為に、僕はここで止める」


 ファインの唇が震え、血が滲むほど噛み締められる。


「結局お前もそっち側か……!」


 怒声が炸裂する。


「俺は復讐の為に魔狩教団に魂を売った! (ギフト)を手に入れた! 魔導刑務所を脱獄した! 囚人も刑務員も皆殺しにしてな!」


 リングが軋む。


「俺を馬鹿にしていた魔導騎士も! 糞野郎(ギャノン)と結託した教会の連中も! 証拠をでっち上げた蛆虫も! 俺の妹に化けたギャノンの仲間もだ!」


 視線がDクラスの方角へ向く。


 そうか……一人足りなかったのは。


「俺はとっくに踏み外してるんだよ! 地獄に落ちようが構わない! 復讐さえ果たせればいい!」

「それでも」


 僕は言う。


「先生は信じてる」

「あめぇんだよ!」

「でも、僕も信じてる」


 静かに、だが強く。


「君がまだ完全に壊れていないことを」


 沈黙。


 次の瞬間。


 轟音。


 ファインの拳がリングを叩き割った。

 亀裂が走り、足元が陥没する。


「ゼロの大賢者か……。お前の声を聞いてるだけで苛立つ。やっぱり敵だ。だからお前から殺す」

「そうだね」


 僕は構えを取る。


「でも、僕は簡単には倒れない。そして――」


 視線を逸らさずに告げる。


「君をここで止めてみせる」

本日発売の月刊コミックREX4月号にて本作のコミカライズ版最新の第67話が掲載されてます!

どうぞ宜しくお願い致します!

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