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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第519話 黒の襲来

side アズール


『ぐぉおぉぉぉぉおおお!』


 ギャノンの相手だけでも手一杯だってのに、わけのわからねぇ人形どもまで湧いてきて――

 そして、ついに最悪の札が切られた。


「ひっ……魔獣!」


 魔獣の姿を視界に捉えた瞬間、メドーサが悲鳴を上げた。


 次の瞬間だった。


――石の擦れる音。


「え……?」


 メドーサだけじゃない。

 ガロン、ドクトル、アニマ、メイリア――全員、動きを止め、灰色に染まっていく。


「おい、冗談だろ……」

「まさか、メイリアまで石化しちゃうなんて……」


 リミットが驚く。


 そうだ。

 メドーサは魔物や魔獣を極端に怖がる。その恐怖が限界を超えると、無意識に石化の魔法を放ち、周囲を巻き込む――。


「チッ……面倒事ばかりだな」


 イロリが舌打ちするが、

 これは“面倒事”なんて言葉で片付く状況じゃねぇ。


 魔獣、人形、石化した仲間。

 その上――目の前には魔法で攻撃を続けるギャノン。


「テメェ、さっきから何考えてやがる! 魔獣が来てるんだぞ!」

「知るかよ」


 ギャノンは吐き捨てる。


「俺を止めたきゃマゼルを呼べ。俺はあいつと戦いたくてウズウズしてんだよ!」


『……そんなに戦いに飢えてるなら』


 低く、腹の底に響く声。


『俺が相手してやろう』


 見上げた瞬間、会場全体が影に覆われた。


「ちょ……なによ、あれ……」

「黒い……竜……」


 リミットの声が掠れ、イロリの顔色が一気に変わる。


 黒竜。


 その存在感だけで、周囲の魔獣たちの動きが完全に止まった。


 次の瞬間――

 黒竜の頭上から、一人の人影が飛び降りてきた。


 黒ローブ。

 フードを目深に被り、顔は見えない。


 着地と同時に、そいつが右手を振る。


 ――黒い火球。


 それが降り注いだ瞬間、動いていた人形が次々と呑み込まれ、燃え尽きた。


 いや、“燃え尽きた”なんてもんじゃねぇ。


 灰すら残らず、完全に消滅。


「……何だよ、あの魔法」


 背筋が冷える。


「人形遊びはここまでだ」


 低い声。


「ここからは――俺の時間だからな」

「お前……まさか……!」


 イロリが、はっきりと動揺を見せた。


「そうか、俺の命をとりに――」

「調子に乗るな」


 黒ローブの男が言い捨てる。


「お前は後だ。そう言ったはずだろ」


……待て。今、イロリが“命”がどうとか言わなかったか?


 男はイロリの横を通り過ぎ――ギャノンの前に立った。


「久しぶりだな、ギャノン」

「あん? 誰だテメェ」


 ギャノンは眉を顰める。

 本気で心当たりがないらしい。


「この声を聞いてもわからないか。俺はその声を聞くだけで反吐が出るってのに」


 男が、ゆっくりとフードを外した。


 その瞬間――ギャノンの表情が凍りつく。


「……お前、まさか……ファインか!? 何でここにいる! 刑務所にいるはずだろ!」


 刑務所?


 訳が分からねぇ。


「あぁ、いたさ」


 ファインと呼ばれた男は、歪んだ笑みを浮かべる。


「お前を恨みながらな。怨嗟の炎を燃やし続け、復讐だけを生きがいに生きてきた」


 一歩、踏み出す。


「だから今――俺は最高に幸せだ。お前を、この手で殺せるんだからな!」

「馬鹿が! テメェみたいな雑魚が俺に勝てるかよ!」


 ギャノンが指を突きつけた瞬間――爆発。


 灰色の煙が、ファインを包み込んだ。


「俺が今ぶっ殺したいのはマゼルただ一人だ。雑魚が邪魔してんじゃ――」


 言葉の途中。


 煙を切り裂くように、一つの影が飛び出した。


 ――拳。


 ギャノンの顔面に、叩き込まれる。


「ぐぁっ!」


 さっきまで余裕ぶっていたギャノンが、地面を転がった。


「誰が……雑魚だって?」


 ファインが、今度は嘲るように笑った。

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