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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第513話 ガッツの手段

side イスナ


 ビホルダの【凝視】を受け、私とクイスの身体は完全に縫い止められていました。

 声を出すことも、指一本動かすことすら出来ません。


 そんな状況で――駆けつけてくれたのがガッツくんでした。


 対抗戦でマゼル様と戦ったことがあるという、Dクラスの男子生徒。

 彼がここに来てくれたこと自体は心強い。ですが――


(まずい……)


 ビホルダには【凝視】があります。

 視線を合わせた相手の動きを封じる、極めて厄介なギフト。


 エルフである私たちには手を出さないと言っていましたが、人間は別。

 もしガッツくんが凝視を受ければ、為す術もなく拘束され――その先、どんな扱いを受けるか分かりません。


 何とか伝えなければ。

 視線を合わせるな、と。


「やれやれ。魔法学園の学生如きが、このビホルダの相手になると本気で――」


 嘲るような声。

 その途中で、ビホルダが言葉を止めました。


「……貴様、どういうつもりだ?」


 理由は明白でした。

 ガッツくんが――自ら目を閉じたからです。


 そして、その瞬間。


 ビホルダの肩の上に、羽の生えた小さな女の子の姿が見えました。


(よかった……)


 拘束されたまま、私は必死に魔力を絞り出し、ようやく一体だけ風の精霊(シルフ)を召喚することが出来たのです。


 シルフはぺろりと舌を出し、ビホルダに向かってあっかんべぇをすると、そのままふわりと宙に舞い上がりました。


「これは……精霊? そうか、お前が」


 ビホルダの声に苛立ちが混じります。


「全く。この状況で、余計な真似を」


 ですが、それでいい。

 これでガッツくんには伝わったはずです。


 視線を合わせてはいけない相手だ、と。


(でも……)


 自ら目を閉じる戦いなど、あまりにも無謀。

 見えない恐怖に晒されながら戦うなど――


(……いえ)


 今は、信じるしかありませんね。


 ガッツくんの勇気を。

 そして、その真っ直ぐな心を。





side ガッツ


 本当なら、僕もDクラスのみんなと一緒に避難するべきだったッス。

 それは頭では分かってたッス。


 でも――どうしても、胸の奥がざわついたッス。


 嫌な予感。

 理由は分からないけど、行かなきゃいけない気がしたッス。


 先生の目を盗んで、僕は走ったッス。


 そして――見つけた。


 妙な仮面を付けた男が、女生徒二人を前にして立っている。

 しかも、その二人は……動けていない。


(……やばい)


 考えるより先に身体が動いたッス。


「熱血旋風脚!」


 両足に炎を纏わせ、全力の回転蹴り。

 先手必勝ッス!


 ――でも。


 あっさり躱された。


 炎が空を切る感触だけが残り、背筋に冷たいものが走る。


(速い……)


「――何者だ?」


 低く、落ち着いた声。


「僕はガッツ! 女性に手を出す不届き者は許さないッスよ!」


 胸を張って答えたッス。

 怖くないわけじゃない。正直、めちゃくちゃ怖いッス。


 それでも――立ち向かわなきゃいけない時があるッス。


 漢として。


「やれやれ。魔法学園の学生如きが、このビホルダの相手になると本気で――」


 その時、肩の上に違和感を感じたッス。


 小さな、軽い重み。


 ――女の子?


 両手で、僕の目を覆われた。


(……?)


 一瞬戸惑ったッスが、すぐに気づいた。


 この感触。

 この空気。


(精霊……ッスか)


 エルフは精霊魔法を使う。

 だったら、この子は――


「貴様、どういうつもりだ?」


 ビホルダの声が鋭くなる。


 僕は、静かに目を閉じたッス。


「小さな女の子が教えてくれたッス。目を塞げって。僕はそれを信じて戦うッス!」


 一瞬の沈黙。


 見えない世界。

 暗闇が、いきなり広がったッス。


 音が、距離感が、全部曖昧になる。


(……怖ぇ)


 正直、足が震えそうだったッス。


「これは精霊か。そうか、お前が」


 ビホルダの声。

 少しだけ苛立ってるように聞こえた。


「だが、浅はかだな」


 その瞬間――


――ズンッ。


 脇腹に、焼けるような痛みが走ったッス。


「ぐッ……!」


 息が詰まる。

 切られた――そう理解するより先に、膝が揺れた。


「全く、馬鹿ですかお前は? 自ら目を封じて、まともに戦えるとでも?」


 嘲る声。


 汗が一気に噴き出す。

 何も見えない。どこから来るかも分からない。


 恐怖が、背中を這い上がってくるッス。


「我々魔狩教団を舐めるのも程々にしておくのだな。貴様らのような、神を欺く魔法に頼ってきた連中とは違う。我々は戦うための修練を積んできた」


 得意げな口調。


……でも。


「僕だって一緒ッス!」


 歯を食いしばって、声を張り上げたッス。


「毎日鍛錬を積み上げて、僕は学園に入学したッス! 先輩の背中に追いつく為に! それは今も変わらないッス!」


 見えなくても。

 怖くても。


 それでも、前に出るッス。


 ムスケル先輩が、そうだったように――。

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