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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第511話 エルフと魔狩教団

side イスナ


 学園に緊急警報が流れ、生徒たちに避難命令が出されました。


 本来であれば、私とクイスもそれに従うべき立場でしょう。

 しかし――私たちは足を止めませんでした。


 学園の生徒である以前に、私たちはエルフの国を代表してここに来ています。

 その立場で、目の前で起きている事態を傍観するなど、到底できることではありません。


 まして――マゼル様が、学園のために身を挺して動いているというのなら尚更です。


「グルゥゥゥウウウ……!」


 低く唸る声が廊下に響きました。


 視線の先では、双尾を持つ地竜がもがいています。

 地面から顕現した地の精霊王タイタンの巨腕に掴まれ、身動きが取れない状態です。


 その唸り声には、怒りだけでなく困惑が混じっていました。

 圧倒的な力の差を、魔獣なりに理解しているのでしょう。


「残念ですが――貴方では、大地の王には勝てません」


 私は静かに告げました。


「さあ、タイタン。その地竜を――」

「お待ちください、姫様」


 命じようとした、その時でした。

 私の横でクイスが一歩前に出て、穏やかに制止します。


「クイス? なぜ止めるのですか」

「タイタンでは……加減が利かない可能性があります」


 そう言って、彼女は視線を地竜へ向けました。


「この場所は学園内です。建物への被害や、周囲への影響も考えるべきでしょう。ここは、私が対処します」


 確かに――地の精霊王の力は、あまりにも強大です。

 魔獣を制圧する以上に、周囲を破壊しかねない。


「……わかりました。ここは任せます」


 私がそう答えると、クイスは小さく一礼しました。


 私はタイタンへ感謝の意を伝え、精霊界へと還ってもらいます。

 巨体が大地へ溶けるように消えた瞬間、拘束を失った地竜が激しく身を震わせました。


「グォオォォォオォオオオ!」


 怒号とともに、二本の尻尾が荒々しく地面を打ちます。

 怒りと焦りが入り混じった、獣の本能そのものの咆哮。


「どうやら……私は、随分と侮られているようですね」


 クイスが、静かに呟きました。


 次の瞬間。


 二本の尻尾が同時に、彼女へと襲いかかります。

 一本は力任せの一撃、もう一本は絡め取るためのフェイント。


 しかし、クイスはそれを正確に見切っていました。


 流れるような足運び。

 紙一重で尻尾をかわしながら、一気に間合いを詰めていきます。


 その剣に、淡く青白い光が走りました。


 風と火――二つの精霊の力が共鳴し、雷となって顕現します。


「精霊剣・(いかずち)洗礼(せんれい)!」


 床を蹴り、跳躍。

 振り下ろされた刃に、落雷が重なりました。


 轟音と閃光。


 雷撃をまともに受けた地竜の全身が痙攣し、先ほどまで暴れていた双尾がぴたりと止まります。


 そして――


 巨体は、そのまま崩れ落ちました。


 意識は、完全に失われています。

 命までは奪っていませんが、少なくとも半日は目覚めないでしょう。


「……見事です、クイス」

「恐れ入ります」


 本来、雷の精霊という存在はありません。

 それを風と火の精霊の力を組み合わせて再現する――簡単なことではない。


 クイスの剣技は、才能だけではなく、長年の研鑽の賜物なのです。


「命までは奪わぬ。しばらく眠っているといい」


 そう言って剣を収めた、その時でした。


――パン、パン。


 乾いた拍手の音が、破壊された壁の向こうから響いてきました。


 私とクイスは同時に振り返ります。


「流石はエルフを代表するお二人。いやはや……実に見事な腕前です」


 瓦礫の向こうから現れたのは、黒いローブを纏った人物でした。


 顔は仮面で覆われています。

 額の位置には、まるで“瞳”を模したかのような装飾。

 こちらを見ているのか、それとも見透かしているのか――判別しづらい、不気味な意匠です。


 佇まいは落ち着いていますが、空気が違う。

 明らかに、ただ者ではありません。


「――何者だ」


 クイスが低く問いかけます。


「これは失礼。名乗りが遅れましたね」


 男は胸に手を当て、芝居がかった一礼をしました。


「私は魔狩教団第四位司祭――ビホルダと申します。以後、お見知り置きを」


 その名を聞いた瞬間、胸の奥がわずかにざわめきました。


 魔狩教団。

 人の魔法を否定し、独自の力を振るう異端の集団。


 私とクイスは、自然と身構えます。


「おやおや、そう警戒なさらず」


 ビホルダは両手を広げ、穏やかな声音で続けました。


「ご安心ください。少なくとも――今この場で、あなた方と敵対するつもりはありません」


 敵対しない、ですって?


 では、何のためにここへ現れたのか。

 その仮面の奥で、何を考えているのか――


 胸の内に、嫌な予感が広がっていきました。

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