第500話 魔力0の大賢者、対抗戦で決着をつける
遂に500話!皆様の応援のおかげでここまで続けることが出来ました。ありがとうございます!
「ハハッ! やったぜ! よくやったぞゼイン!」
「そうか。今度は妹に化けたんだね」
勝ちを確信して吠えるギャノンに、僕は静かに返した。
爆発の余波で煙が一気に霧散し、太陽光がリングへ差し込む。
晴れた視界の中に立っていたのは――変身を解いたゼインと、顔を引きつらせているギャノンだった。
「ば、馬鹿な……五本分まとめて撃ち込んだんだぞ!? 平然としてられるわけが――」
「五本? そうか。お前の魔法は“指”に魔力を込めて撃つ仕組みなんだね」
装填と言っていたのは、指ごとに魔力を込めること。
だから無詠唱で光弾を五連射できたわけだ。
指の本数が、そのままギャノンの火力の上限。
「な、何だこれは……ムッ、ヴァルドが持ってるそれはナイフじゃないか! 試合への武器の持ち込みは禁止だぞ!」
ウィンガル先生の声がリングに響く。
煙が晴れたことで、Dクラス側の不正が一気に露呈した。
観客席からもざわめきが起こる。
「え……ナイフ?」
「Zクラスが持ってたならともかく、なんで上級生がそんなもの?」
「これって言い逃れは出来ないよね……」
僕はギャノンの正面まで歩き、拳を握った。
「悪いけど――ラーサを勝手に利用されたのは許せない」
「ぐぼッ!!」
一撃。
僕の拳が腹部にめり込み、ギャノンの体がくの字に折れ、鼻息を荒げながら後退した。
「そこまでだ! 試合中断! これより審議に入る!」
ウィンガル先生の制止が入る。
ここまでの流れなら当然だろうね。
「理事長、よろしいか?」
「……やむを得まい」
リカルドもリングへ降り、審議が始まった。
「つまり、私がDクラスの魔法で洗脳されていたというわけか……くっ!」
事情を聞いたウィンガル先生が、悔しそうに拳を握る。
「まさか私がこのような失態を……今すぐ反省文を一万枚書きたい気分だ!」
「悔しさの単位が反省文なのホント謎なんだけど」
メドーサが呆れ声を上げる。
「……私も穴を掘って埋まりたい気分ですとお答えします……」
メイリアはショックで肩を落としていた。
「そういえば連中、こんな指輪つけてたぜ」
「うむ。全員が同じ物をしていたな」
「煙の中でも位置がわかった理由のひとつ……かもしれませんね」
アズールの提示した指輪に皆が注目する。
「――これは共魔の指輪ですとお伝えします」
「共魔の……!? 持ち主同士で感覚を共有する魔導具か!」
リカルドが声を上げ、ウィンガル先生の顔つきが険しくなる。
「これは確定だな。なにより審判への洗脳行為など言語道断」
ウィンガル先生が右手を高く掲げ、大きく宣言した。
「一年Zクラス対三年Dクラスの魔法戦は――Dクラスの反則行為により、Zクラスの勝利とする!」
会場がどよめきに包まれた。
僕たちを応援してくれていた皆は歓声を上げ、他の生徒は事態の異常さに困惑している。
「ギャノン、Dクラスには後日事情を聞く。覚悟しておけ」
「知ったことか! マゼル! これで勝った気になってんじゃねぇだろうな!」
ギャノンがふらつきながら立ち上がり、怒号を上げる。
「勝ちだよ。お前たちは反則をした。それだけのこと」
「黙れ!! 俺はテメェらをぶっ倒せりゃそれでいいんだよッ!」
次の瞬間、ギャノンが地面へ両手を叩きつけた。嫌な予感がする。
僕は仲間から距離を取りながら跳んだ。
「だからテメェは甘ぇんだよ! ――グランドバーストキャノン!!」
轟音とともに僕を中心に爆発が生じる。
「どうだ! これで――」
「これで気が済んだ?」
「……ッッ!?」
煙が晴れ、無傷で立つ僕を見たギャノンは、顎を震わせて後ずさる。
「ギャノン! 試合後に何をしている! 反省文十万枚でも足りんぞ!」
「いや、さすがに反省文の問題じゃないでしょ先生!」
メドーサが速攻でツッコミを入れた。
「往生際が悪いぞ、ギャノン。お前は負けた――」
リカルドが諭すように言った、その時。
――地面が震えた。
「……!?」
会場全体がざわつき始める。
地響きのような振動。
圧し掛かる魔力の気配。
「おい……今の声、一体何だ……?」
「グルゥ……ッ」
「ピィィ……」
シグルとメーテルが震え声を漏らし、アニマが青ざめた。
そして――
「緊急事態発生ッ! 学園外に多数の魔獣が接近中です! 風紀委員長の魔法で食い止めてますが、急いで対処を!」
生徒の叫びが飛び込み、会場が緊迫した空気に包まれた。
戦いは、まだ終わっていなかった。
明日発売の月刊コミックREX1月号にて本作のコミカライズ版第64話が掲載されます。
そして最新コミック単行本第11巻がいよいよ来月12月25日に発売です!
どうぞ宜しくお願い致します!




